嘘は堂々と行動は大胆に
ちょっと長いかも
「よしっと…番頭さーん、終わりましたー」
「おお、そげなこっち来てくんろー!」
「はーい」
女湯の方の掃除もあっという間に終わり、番頭さんが居る場所に向かう。
「やー、キミのおかげで助かったよ。
正直今日、明日と休みにするか考えてたけどこれなら問題ないさね」
「確かにこの広さを1人でやるとなると相当大変ですからね」
「んだ…まあ、と言っても近くの宿さからたまに従業員を使わせてもらってはいるけんども雑なことが多いしかと言って掃除屋の方を雇う金も……っと、すまないね余計な話を」
「いえいえ、それではこれで」
「んだ、ありがとな!っと、これ貰ってくれな」
そう言って番頭さんがカードを渡してきた。
カードには会員証と書かれており、数字は6桁まで書かれてあった。
「…これは?」
「うちの会員証だ、うちみたいな風呂屋は色んな街にあって今や数えるのが馬鹿らしくなるほど多くてね、それでいて大元の考案でこう言うカードを作っていんだ」
「なるほど…これって有料なんじゃ…」
「良いさね良いさね、貰ってくんな。
今日の働きじゃ、今日出した報酬金じゃ申し訳ないさね。
それにそのカードのランクじゃただの常連さね、カードの裏を見てくんろ?」
そう言われて裏を見ると幾つかの枠と若葉と書かれていた。
「来た時にこの印を押してもらって、埋まればランクが上がるさね。
ランクさ上がればちょっと良いことがあるからがんばんべ!」
「あ、はい…ありがとうございます」
「良いさね良いさね、んだば俺はもう少し準備があるさから、兄さんも仕事さ終わったら寄ってくんろ」
「はい、そうさせていただきます」
お辞儀をしてから風呂屋を後にする…結局貰っちゃったけど、このカードを考案したのって転生とか転移した人なんかな?
(しばらくお待ちください……そうですね、今から138年前に訪れた、フォーレント=シース、生前は白石 牧谷が作った風呂屋が事業拡大していく時に出た案ですね)
はぁ〜、なるほどな〜…と言うかその138年前の時代ってこの世界にお風呂の概念は
(湯浴み自体はありましたが湯船に浸かると言うのは一部の王族や貴族のすることで、当時は今より下水の技術もその整備も整ってなかったこともあって、フォートレントも苦悩しておりました)
へー、でも今じゃここまで大きい企業?になってるってすごいよなぁ…
(そうですね、なおフォートレントは39年前に亡くなっており、その後継者であるケースケ=シースが跡を継いでおります)
…なんかネーミングセンスは日本人っぽいなぁ…っとさっさと報告報告〜…。
冒険者ギルドは夕方前というのもあって結構な人で溢れていた…と言うよりその前にある広場でも人が多く、抜けるのが大変だった。
「ふへぇ…満員電車かよぁ…」
「ん?おや?ゲンヤさんではありませんか」
「あ、ドドラさん」
人混みを抜け出したと同時に、あの筋肉マッチョのドドラさんが目の前に居た…と言うかドドラさんの場所だけスペースが広くなっていた。
「その様子だと、無事に終わりましたか?」
「ええ色々とありましたけど、兼ねて無事に終わりました」
「それではカードの方を」
「はい」
カードをドドラさんが持っているカードに当てると、
チャリーン
というか音が流れた。
昨日の報酬と合わせると所持金が37800Rになった。
「それじゃあこれで」
「あ、少しよろしいでしょうか」
「はい?何か手違いが」
「いえ、そう言ったことではなくて…」
なんか真剣な話っぽいので腰を下ろしてドドラさんの方に向き直る。
「昨日の昼前辺りに冒険者が護衛していた商人の荷馬車が盗賊に襲われたと言うことがありまして、幸い命に関わる大事はなかったのですが…」
あ、これって
「商人の荷馬車を引く馬と冒険者が1人大怪我で大変だったんですよ」
「へ、へー、ソレハタイヘンナジケンダデスナー」
「はい、それでですね、回復もポーションも使えなかった時にたまたま通りがかった少年があっという間に怪我を治して去っていったんですよ」
「ワーオトギバナシミタイナハナシデスネー、ワハハハ、それでは失礼します」
「あ、ちょっと!」
こっから予想できるのは
1.助けた人たちに感謝され御礼をされて、なんやかんやで面倒ごとになる
2.なぜすぐに立ち去ったか聞かれて、なんやかんやで面倒ごとになる
3.とてつもない厄介な事件に関わってしまう
だ
俺としては面倒ごとを避けたいがためにすぐに立ち去っただけだし、今ここで俺がその少年だとバレると意味がなくなる。
…しかし、今逃げてもどうせバレる……どうすれば…………!思いついたぞ!
「なんですか?もうお腹がペコペコで」
「では、単刀直入に聞きますが貴方がその少n「違いますよ」…へ?」
「第一そんなすごい少年なら昨日のゴブリン達をどうにかできる力ぐらいありそうですし、それに…」
「…それに?」
「俺は少年と言うより青年ですから間違えも甚だしいですよ。
それではこれで」
ニッコリと言って立ち去る。
ドドラさんは何故か最後の言葉に呆気に取られてポカーンとしていた。
よしよし、これで今日も平w
「逃がさないよ?」
「…わーおギルド長ご機嫌麗しゅう?俺は麗しくないのでお暇「させないよ?」…」
「…」
「あ、ゲンヤさ「!よう!オーリー!それじゃあ!」へ?」
「逃がさないよ!」
丁度良いタイミングでオーリーが声をかけてくれたおかげでギルド長の意識が少し逸れたので、猛ダッシュで出入り口を出て、その場の思いつきで屋根までジャンプして宿まで逃げる。
…できるかわからなかったが、人間やればできるのだ!
…まあ、今は人間じゃなくて神だけど………。
設定メモ
アニメとかでものすごい速い動きははゲンヤにとっては少し小走りレベルに見える。
そのため前回のジョゼンの動きも全然目で追える。
次回:鬼ごっこ(極)




