隠し事だらけの世の中に
ちょっと長いですがよろしくお願いします。
宿に戻ってすぐに向かいの大衆浴場に行った。
ちなみに中は50人くらい入れるほど広く、男女で分かれていた。
「ふぅ…いい湯だったなぁ」
「そうでしたね、この国でもお風呂があって良かったです」
「へー他の国には風呂ないとこあるんだな?」
「ええ、といってもここに来るまではあってもお湯に布で体を拭いたり、それこそ魔法で綺麗にするなどありましたよ」
「魔法かー…どうせなら風呂につかりたいよなぁ…」
「そうですね」
風呂から出て着替えを麻袋から出して着替える。
あ、少しだけカラーリングが違う…別にいいけど。
「それより少し腹が減ったなぁ」
「そうですね、と言っても某は懐が寒いゆえ…」
「だから、奢ろうかって言ってるだろ〜?」
「ダメですよ、というよりゲンヤ殿」
「ん?」
ムサシが歩みを止め、真剣な顔つきで諭すように
「某達はまだ出会って1日も経たぬ、それゆえにそう易々とお金のやり取りをするのはどうかと思うでござ…思います」
「ござ?」
「………」
え、もしかしてござる系武士だけど隠してるの!?
ま、まあどうでもいいか?
「ま、まあ、確かにそうだけども…」
「それに某はここに来るまでに長い旅をしており、食事をしなかったこともあります。
そのため空腹に対しては耐性が『ぐぅ〜…』……」
「まあ、俺が寝るときにお腹を鳴らされても困るから奢られとけ」
「…かたじけない…」
「ははは、とりあえず飯だ、飯!」
そう言って宿に戻る。
宿の食堂はかなり人が多かったが、なんとか席に座っておすすめを頼むと“オーク定食“が出てきた。
なお、白飯とパンのどちらかを選べて値段は変わらなかった。
これが異世界食か…よくオークって豚っぽいって書かれるけど、本当なのだろうか…えぇい、パク……パクパク…。
「普通に美味しい…」
「そうですね、タレが肉に合っていて白飯に合います。
それにそのタレにこの野菜を絡めるとさらに美味しい。
何度か宿飯を食べたことがありますが、ここは格別タレが良いですね。」
「おう、確かにそうだな」
なんと言ったらいいんだろうか、こう豚の生姜焼きを食べているけど、脂が少し多いからか噛み切りにくい…が食えないわけじゃないし、ムサシが言う通りタレが合ってる。
そんな雑談をしながら食事を終えて部屋に戻る。
部屋のベッドに座ってゆっくりしていると、
「ゲンヤ殿、少しよろしいですか」
「ん?なんだ?金ならいつでも良いぞ〜」
「それについてはお金が用意でき次第すぐに…そのことではありません」
「じゃあ、ござる口調のことか?」
「それについては内密に…そうではありません」
「了解、じゃあ、なんだよ?」
「…単刀直入に言わせてもらいますが…ゲンヤ殿は何か隠してはいませんか?」
「………まあ、生きているうちはどうでも良いことから重要なことまで誰だって隠し事はあるさ…」
「確かにそうですが…気付いてないのであれば言いますが、ゲンヤ殿に呪いがかかっています」
「呪い?」
え?なんかかかってんの?神託さーん。
(ただいま調査しましたが状態異常:呪いに該当するものは、力抑制のみです)
あーそう言うことか…ってなんで分かるんだ?
「何故分かるか不思議に思うかもしれませんが、某は某が見た相手の状態を観ることができるのです。
失礼ながら、ゲンヤ殿が戦闘中に呪いがかかったのに気付いていたのですが、この力は代々他の者に隠さなくてはならなく、あの場では伝えられなかったことをここで謝罪します。
申し訳ない」
そう言ってムサシは床に正座して謝る…いわゆる土下座である。
え、あ、え!?なんか、え!?そんな大切なことを俺なんかに言う!?というか申し訳ないのはこっちだよ!?
「あ、頭を上げてくれ、これにはちょっとしたワケがだな…」
「否、そのようなワケには……ワケ?」
「あー…なんて言ったら良いかな…まあ、ムサシが隠さないといけない事を教えてくれたし、俺も言うか…」
まあ、もちろん全部話したら不味いから本当に少しだけだが、
「俺、ちょっとした理由で力を封印してんだ」
「理由?」
「まあ詳しく話すと朝が来るくらい長いから省くが、まあたぶんそれがムサシが見た呪いだと思う。
悪いな、そこまで重要な事じゃないんだ」
「そうでしたか…」
「そうそう、あ、このことは誰にも話さないでくれよ?」
「分かりました、某の事も内密にしてください」
「了解」
というか多分だがムサシの能力って魔眼だよな…。
なんて言うかムサシといいこの街の隊長さんといい魔眼持ち多くない?
ん?そういえば何か忘れて…!
「あ!」
「!?どうかしましたか!?」
「あ、いや、ちょっと野暮用を思い出してな、少し外に出て来るわ!」
「あ、はい」
そう言って部屋を出て、グレムからもらった紙に書かれた場所に……どこだよ!?
(案内しましょうか?)
あ、お願いします。
(かしこまりました。
それではそこから左に130mほど行ってください)
神託さんに従って走り出す、夜だからかさっきより人は少なかったおかげで動きやすかった。
神託さんの案内で大通りから路地に入り、右へ左へとまるで迷路にでも入ったかのような動きで古い民家に着いた。
(この建物に入ってください)
?よく分からないけど開けようとノブに手をかけるが開かなかった…人が居るのか?
そう思いノックをすると中から足音がした。
少しだけドアが開くと中から男性の声で
「…どうやら来たようだな…紙はあるか…」
「えっと、これですよね?」
そう言ってドアの隙間に差し出すと中に吸い込まれるように取られ、ドアが開く。
「入りな…」
「あ、お邪魔します」
中に入ると薄暗い空間で灯りがないと見えないほどだった…が何故か数秒も経たないうちに目が慣れると言うより、いつも見るような明るさになった…どゆこと?
(それは種族:神族によるものであります。
どのような環境にも対応し普段通りの動きができるようになります)
へー便利な体なんだなぁ…おっとどうやら向かいに見えるドアに行くようだ。
「こっちだ…」
「はい…暗くないですか?」
「慣れている…」
「へー」
短く答えた男がドアを開けるとそこは外だった…どうやら中庭のようになっているようだ。
男が外に出てさらに向こう側のドアを指差し。
「あの扉を開けて入れ、我が主がお待ちだ」
「あ、はい」
言われるがままに行動して外に出るとドアが閉じる。
気にせずに指示されたドアにノックしてから開けると中は落ち着いた雰囲気のする店だった。
「いらっしゃっい」
「お、来たようだな」
中にはフードを外したイケメンといかにも仕事できそうなおじいさんが居た。
「すみません、お待たせしました」
「そうだな、だいぶ待っていた」
「あはは…ちょっとやりたい事もあったので…」
「まあ良いさ、それより早くここに座りなよ」
「あ、では、失礼します」
そう言ってイケメン…多分グレムだよな?
カウンター席に座ると同時に
「ご注文は?」
「えーっと、お酒以外であれば…」
「なんだ?17にもなってまだ酒を飲んでないのか?」
「別に良いだろ?俺は酒は飲まないんだ」
「それでしたら、ヴィクサーをどうぞ」
「?ヴィクサー?」
出されたのは赤色の液体で匂いはりんごに近い甘い香りがする。
「ヴィクサーはレッヅと言う中も外も赤色の果実から搾った果汁を少し水で割ったものです。
もちろん果汁だけでも飲めますが喉越しが悪いのでお勧めしません」
「へーそういう果実があるんですね」
(この国の特産品であり、世界中で最も有名な果実です。
味は甘味と酸味が強いですが少しでも未熟なものは苦味と辛味が強いです)
あ、補足ありがとうございます。
なるほど特産品か…。
一口飲んでみると地球のりんごジュースより甘味が強いように感じた。
「美味しいですね」
「それは良かった、それではごゆっくり」
「ありがとうございます」
そう言っておじいさんが店の裏に行った。
「そういえば、なんで俺をここに?」
「ん?ああ、まあ何というか…」
「?」
「あの時俺の名前を聞いただろ?」
「まあ、聞いたけど…それが?」
「あー…やっぱりか…すまないが大人しくしてくれよ」
そう言ってグレムが指を鳴らす。
一体何が
(後方注意!狙われています!迎撃しますか?)
え!?いきなり何事!?と、とりあえずお願いします!
(かしこまりました、迎撃します)
神託さんの声とともに背後から突然、気配が出てきた。
振り向くとそこには木に絡まった人が居た…!?
設定メモ
魔眼は先天性で持つことが多く、親が持っていたら子にも受け継がれるほどであり、今では約10000人に1人は持つ世の中である。
また、後天性で持つ事もできるが、その場合子に受け継がれることは稀である。
魔眼の能力は様々あるが大抵は、相手の力が分かる、魔法の属性が分かる、真偽が分かるなどあり、持ち主の魔力量によっては能力をいくつか持っていることがある。
なお、魔眼の能力を使う時は微量ではあるがMPを消費する。
次回:???




