作戦は命大事にがんばれ
少しだけ長めです。
ジャグラとフラムがそれぞれ足音のする方に構える。
それと同時に少し小さい子ブリンがそれぞれ3体ずつ合計6体現れた。
「おらよっと!!」
「荒風!」
ジャグラが自分と同じ大きさの剣を振り、一気に2体も入り伏せ、ついでとばかりに残った1体を叩っ斬った。
フラムの方は呪文を先に詠唱しておき、現れたと同時に魔法を発動させると、出てきた子ブリンが吹き荒れる風に飛ばされて、上空から地面に叩きつけられ、動かなくなる。
「ふぅ…」
「息をついている暇はないぞ、ここは街に向かって逃げるぞ!」
「おう!全員、絶対に離れるなよ!!フラム俺が殿をやる!」
「了解だ!逸れるなよ!」
「「「「はい!」」」」「おう!」
フラムが街の方へ先導する。
そういえば、神託さんそのゴブリンソルジャーってどっちの方向にいるんですか?
(ただいま向かっている方向です)
わぉ…ってやばくない!?
でも、さっきの2人の戦力でどうにか
(もし、ゲンヤ様が手を出さなければ、厳しい戦いになるでしょう。
2人はゲンヤ様を含めた4人を守りながらゴブリンソルジャー含めたゴブリンとの戦闘になります)
あ、そういえば囲まれてたっけ…それじゃあどうすれば、できるだけ俺の力を隠して安全に街に戻れますか?
(検索中……先ほど街に向かうときに通った道に向かうことを推奨します。
なお、方角は西…左方向です)
…いつもお気遣いありがとうございます…。
「フラムさん!」
「なんだ!ゲンヤ!」
「そっちになんか嫌な気配がします!街に向かう道に行きましょう!」
「!?」
「とにかく信じてください!」
「…ッ!分かった!」
そう言うと神託さんが言った方向に走り出す。
これでどうにかなるだろう…。
森の中を走って道中の敵はフラムが倒して、残った敵はジャグラーが切り伏せていき、やっとのこと路に出ることができた。
「よし!このまま「ギャギャギャギャギャ!!」ッチ!」
「おいおい!ゴブリンソルジャーじゃねぇか!?」
「やっぱり索敵に引っかかった反応はこいつか!」
恐ろしく濁った鳴き声で姿を現したゴブリンソルジャーに全員が振り返る。
「くそ…オーリー!コロン!ムサシ!ゲンヤ!さっさと逃げろ!」
「で、でも「ここは俺たちが片付けるからさっさと行け!!」!」
ジャグラが怒鳴り声でコロンの言葉を遮る。
「コロン殿!某らは残念ながら足手まといです。
ここはできるだけ早くこの場を逃げることに集中して下さい!」
「…分かりました!絶対に生きて帰って来てくださいよ!!」
「おう!」「当たり前だ!」
そう言うと街の方向に向かって走りだす。
…多分これで大丈夫だろうけど、なにか出来ることは…
(でしたら補助魔法を使用しますか?)
補助魔法?エンチャントってゲームとかで物に付与するモノとかじゃ…。
(物に対するそう言ったのは鍛治などの生産系に属します。
補助魔法は付与した者の動きを良くしたり、物に自身の覚えている属性を付与できたりします)
へー…あれ?それならさっき使った闇魔法の力抑制は?
(闇属性魔法は弱体化系や妨害系を覚えられます。
補助魔法はその逆に強化系や付与系を覚えられます)
はぇ…とりあえずよく分からないけど、それなら大丈夫そうですね!どう言うのがおすすめですか?
(おすすめでしたら、力強化、敏捷強化、魔力強化です。
なお、こめるMPによって強化量が変わります。
おすすめとしては、MPを2ほど消費すれば良いでしょう)
え、2?それだけでいいんですか?
(ゲンヤ様が素性を隠していくのでしたので、
ちなみにゲンヤ様の魔力も桁違いのため、それ以上多くするとバレてしまう可能性があります)
(補足として、術者の魔力によって効果時間が定められるため、ゲンヤ様が解除しない限り、消費MPがたとえ2であっても、3年と11ヶ月と2日ほど効果が続きます)
わー…まあ、素性はまだ隠しておきたいし、それでやるか。
(こちらで処理しましょうか?)
あ、お願いしても?
(かしこまりました)
そう神託さんが言うと、ほんの少しだけMPが減った。
後ろを少し振り返るが、そこまで目に見えて効果が分かるモノじゃなかったので、前に向き直り駆け出す。
整備された路を走り出して約3分、どうやら追ってきたゴブリン達も街が近づくにつれ追うのを諦めて帰り出す。
…あの2人は大丈夫だろうか…。
(戦況は有利に進んでおり、ジャグラ、フラム共に目立った怪我はありません。
さらに、もし戦闘が長引いても、今朝方に見た冒険者達が合流することでしょう)
おお!もしかしてそのためにこの道を?
(はい、さらにいえば、あのまま森の中で戦えば、ゴブリンソルジャーの上位種のゴブリンナイトが2体ほど合流する可能性がありました)
わぉ………それはやばいですね…。
?そういえば、小説とかでよくこういう時ってゴブリンを率いている奴が居てヤバくなるけど……流石に
(その通りです。
本来、ゴブリンが進化したところでここまで連携は取れません。
ここよりかなり離れた18年前に廃村となった場所にダンジョンができ、先ほどのゴブリン達の支配種が生まれました)
支配種?それってよく小説とかで見るゴブリンキングとかロードみたいな明らかに強い魔物ですか?
(その通りです。
今回はまだゴブリンキングですが、あと10日もすれば周りの魔力を吸収してゴブリンロードになる可能性があります)
ええ!?やばいじゃん!というかダンジョン!?
(ダンジョンとは主に人が立ち入らなくなった場所や強力な魔物の発する魔力によってできる特殊な空間です。
また、形も決まったものがないため様々な形があります)
ええ……もしかして廃村になった理由とか…
(いえ、廃村になった理由はただ単に村ごと引っ越しただけであり、そこにいた住民も問題ありません)
あ、それなら良かっ…良くないな…なるほどダンジョンか…
。
…誰も入ってないですよね?
(検索中………人が入った様子はありません。
また、ダンジョンの形は廃村の近くの洞窟が本体のようです)
なるほどなるほど……なら、少ししたら潰しに行くか。
お礼参りにな!
「はぁはぁ…ここまで…逃げたら……大丈夫かな……」
「そうね、なんかさっきまでの視線も感じないし。
それよりオーリー大丈夫?」
「はぁ…はぁ……大丈夫…じゃない……疲れた…」
「確かにここまで全力疾走しましたからな、ですが街まであと少しです、追っ手もどうやら諦めたようですし、ゆっくり行きましょう」
「あ、ありがとう…ございます…」
「それよりゲンヤ殿…」
「?なんだムサシ?」
「なぜ先ほどゴブリンどもに囲まれたときに街に真っ直ぐではなく、こちらに行くことを提案したのですか?」
「ん?さっき言った通り勘だよ…と言ってもあのゴブリン達が頭が回る奴らぽかったし、罠があるかもしれないと思ったからな」
「……なるほど、ゲンヤ殿の勘はすごいですな」
「ん、まぁな、それよりジャグラさん達は大丈夫だろうか…」
「先ほどの腕前を見るに問題ないでしょう。
それよりも今日はこのままギルドに戻って…そういえば全員分の子ブリンの魔石がありませんでしたな」
「あー…まあ、別に依頼は期限が明日の昼までっぽいし、俺はいいから3人で分けてくれ」
「そ…それだと…」
「ダメですよ、ゲンヤ殿は1人で子ブリンを倒したのですから、某が辞退しますので」
「いや…ぼ、僕が…」
うーむ…このままだと誰も引き下がらなさそうだし、揉めててゴブリンが帰ってきたら元も子もないし…。
「あーだったら、帰ったらなんか奢ってくれ、腹が減っててな、それならいいだろ?」
「え…で、でも…」
「なにもゲンヤ殿が…」
「そうよ!子ブリンをまた探せば!」
「コロン…それは一番ダメだ、さっきみたいなことが起これば、今度こそやばい、なに俺がこの中では一番歳上なんだ、遠慮せず貰って、奢ってくれや?」
そういうと、しばらく考えて双方とも頷いて街に戻ることにした。
まあ、正直なところさっきのゴブリンより強そうな狼くらい倒せるから問題ないだろ。
設定メモ
本編では説明できなかったことや読者の質問等をここに残しておきます
ダンジョンの形はオーソドックスな洞窟や遺跡から大きいもので森全体や街全体がというものまで様々あります
なお、ダンジョンには必ず支配種がおり、大抵のダンジョンはその支配種の下位種が生息していきます。
しかし、長いこと年月をかけたり支配種の魔力量によっては階層が増え、そこに生息する魔物も多様化します。
次回:異世界に来てはじめての…




