先輩冒険者のありがた〜い講座
はい!テンプレ丼一丁!おまけも付けちゃうよ!
クラバスからそこまで離れていない森の中…。
そこで行われていたのは………。
「あー違う違う。
それは毒に効く薬草で、傷口に塗るやつじゃない。
今お前が取った場所の右にあるのがそうだ」
「は、はい!」
「そこら辺を間違えると上のランクで苦労するぞー」
「分かりました!ジャグラさん!」
「ガハハ、良いってことよ!
お!ゲンヤの方は間違えずに持ってきてるな!」
「あ、はい」
いやー、人は見た目によらないって本当にあるんだなぁ…。
まあ、正直言ってめっちゃ疑ってたから恥ずかしいわ…。
時は遡り2時間ほど前
「で?どうする?別に忙しいなら断ってもかまわねけぞ?」
断る…うーん…ここで断って後ろの同期が襲われるのを見逃すのはできないしなぁ…まあ、俺は多分襲われても問題ないだろうし…
「あ、いえ、是非お願いします!」
「おーそうかそうか、なら、まずはあそこの掲示板にある依頼の『薬草取り』ってやつと『子ブリン狩り』を受けてきてくれ」
そう言ってジャグラが指差す方を見ると、大きなコルクボードに紙が貼られてあった。
近づいて、言われた依頼の紙にギルドカードを近づけると、
ピロン
と音がすると同時に、ギルドカードに名前と特技以外にクエストの項目が増えた。
「できたようだな、もし今日受けた依頼の詳細を確認したい時はそのクエストってやつを押すと確認できるよになってるから、確認してみな」
そう言われてその通りやると、画面が表示された。
しっかりと『薬草取り』と『子ブリン狩り』が表示されており、さらにその依頼を押すと詳細が出てきた。
「あと、冒険者の心得にも書いてあるが、依頼は5つしか受けることはできない…が、これは冒険者の力量と信頼が有れば、少し多めに受けることができる……まあ、そんなに多く依頼を受ける奴はいないがな!」
ガハハ、と笑うジャグラ…もしかして、良い奴なのでは?
いや、もしかしたら後ろの…
「ああ、紹介がまだだったな、コイツはフラム。
昨日少し酒を呑ませ過ぎて二日酔いだが、腕のいい魔術士だ!」
「あ“…んん…フラムだ…よろしく…」
ガラガラな声で簡潔に自己紹介を済ませて、机に伏している。
「おいおい、もう昼なんだから酒も抜けてるだろ?」
「俺はなぁ…オメェのようにタフじゃねぇんだよ……」
「へへ、褒めんなって!」
「……褒めてねぇ…うぅ…」
「ガハハ、そういえばお前らの名前を聞いてなかったな!」
そう言うと先ほど登録する時に一番前に並んでいた少年が小さく手を上げた。
「ぼ、僕はオーリーです、弓が得意です、はい……」
「オーリーか!いい名前だな!弓を使う冒険者は目がいい奴が多いがオーリーはどのくらいの距離なら正確に狙える?」
「え、ええっと…正確に測ってないので分かりませんが、40mくらい先の野兎は狙えます…」
「おお!それなら中々いい腕をしているな!
んじゃあ、オーリーの隣のお前は?」
「うぇ!?」
急に指名されて驚いて変な声が聞こえた。
顔や声から少女であることは分かる。
「わ、私はコロンです、光と風の魔法が得意です!」
「おお!光と風か!冒険者にピッタリな属性を覚えてるんだな!」
「はい!両親が元冒険者だったので、この二つを覚えていると良いと聞いてましたので!」
「なるほどな!む?もしかしてお前の両親つうのは…カリナとバーレか?」
「え!し、知ってるんですか!?」
「そりゃあ、この辺の、いや、この国で活動する冒険者ならしらねぇ奴は見たことがねぇくらい有名だぜ!
なんたって、そこらの冒険者が手こずるジェイザの群れを二人で倒したんだからな!」
そう言うジャグラにキラキラとした目でコロンが聞いていた。
それにしても…ジェイザ?ってなんだ?
(ジェイザ、亜竜の中でも下位の翼を持たない四つ脚の竜です。
主に、森の中に巣を作り、5日もすれば10体の群れが100体にも増える繁殖力を持ち、体力だけなら亜竜の中でも上位に入る魔物です。
ただ、巣を作るのに半年を必要とするため大抵は繁殖する前に群れが全滅します)
はぇー亜竜か…でも翼を持たないってことはただのトカゲっぽいよなぁ…あ、でも体力が多いから耐久力があるから厄介なのか?
「まあ、俺は魔法はからっきしダメだから、何か魔法のことで聞きたかったらフラムに聞いてくれ!んじゃあ、次は大剣を持っているお前だな!」
指名されたのは大きな太刀を持ったいかにも武士のような服を着た少年だった。
「おっす!某は、ムサシと申します!ちなみにこれは大剣でなく大太刀と言うものです!」
そういうと大太刀を少しだけ抜いて見せた。
「オオタチ!聞いたことあるぞ!確かこことは違う国で作られてるカタナと言う剣の種類の一つだったな!」
「その通りです!」
「そうか!中々良い剣のようだな!手入れもしっかりとされているし!」
確かに素人の俺でも綺麗に手入れされているのが分かる刀だった。
「じゃあ、最後はお前だな!」
そう言って俺の方をみんなが向いた。
…いゃ〜こういうのって恥ずかしいなぁ。
「えーっと、おほぉん、俺の名前はゲンヤ。
特技と言えるか分からないが、生活魔法と格闘技を覚えてるんだ、よろしく!」
「なるほどな!生活魔法は冒険者では必須ではあるから大切だぞ!それに何も持ってないところを見ると拳が武器か!」
「その通りです!頑張ればなんでも砕けますよー」
「ガハハ、それは頼もしいな!んじゃ、そろそろ出るとするか!フラムいくぞ!」
「ああ…分かってるから大声出すな…」
「ガハハ、悪い悪い!」
そう言って大声で笑いながら謝るジャグラをフラムはさっきより険しい表情で睨んだ…がジャグラは気にせず外に向かう。
「あのー…フラムさん、回復かけましょうか?
少しは楽になるらしいですので…」
「ああ…すまんが頼む…」
そういうとコロンが呪文を唱えると、フラムの顔色が少しだけ良くなった。
「そうですか?」
「ああ、これならアイツのうるさい声にも耐えれそうだ。
ありがとよ、コロン」
「い、いえ!それなら良かったです!」
そう言ってスタタタ…とオーリーの後ろに隠れて行った。
それを見たムサシが、
「ん?オーリーとコロンは同郷ですか?」
と聞くと、2人同時に頷いた。
なるほど…幼馴染ってやつか…そういえば勇人のやつは大丈夫だろうか……いや、アイツのことだし大丈夫だろう、俺よりできるやつだしな。
そう考えながら、俺たちはジャグラとフラムの案内で比較的安全な城壁近くで依頼をこなしていた…。
お粗末!
次回:それぞれの実力




