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義兄との思い出

作者: 竹宮小央里

 姉の夫である義兄は、今ではすっかり我が家の一員である。


関西出身である彼は、巨人ファンであったり、関東風の味付けの物もたべられるという、関西人にしてはマイノリティであるかもしれない。


彼は、ファッションセンスに優れており、そして、本当に価値のある衣類を買うのを好む傾向がある。


私に何度も、センスの良い雑貨や、服や靴をくれたりと、いつも、とても感謝している。


母はいつも、初対面の人に義兄を紹介する時、「私の息子です。」と言って、何の躊躇もなく語る。


彼女の中で、義兄はもうすでに我が家の一員として、認識されているのだろう。


 十年以上前、八丁堀の彼の東京の家へ姉と一緒に訪れた時、義兄の母親に「熱いで、気ぃつけてや。」と言って、お茶の入った湯飲みを渡した時、この人に娘を託そう。と決意したという。


彼だったら、大切に育ててきた大事な娘を託しても大丈夫だと思ったという。


確かに彼は、決して饒舌ではないが、心のある優しい男である。


姉や、娘、息子を大切にし、私たちの家族まで、気遣いしてくれる。


母が姉を初めて、八丁堀の彼の家を訪れた時、それまで何回か彼と顔を合わせた時、何も話さなかったが、突然、饒舌になったという。


彼は、人格が変わったかのように、姉に向かって話し始めた。「京都のラーメン、食べたことありますか?旨いですよ。東京に支店があります。日本橋です。今度行きませんか?」


母は、突然饒舌と化した彼の人格の変化に目を見張ったという。


「神戸の夜景もきれいですよ。見せたいなあ。」


姉はその話題には飛びついた。「私、神戸の夜景は昔から見たかったんです。」姉の目は一気に輝きを帯びたという。


なぜなら、彼女の高校の卒業記念の文集に、神戸の夜景についての文章が載っていたからだ。彼は大きく頷いて、嬉しそうだったという。


義兄はほとんど姉に一目惚れだったが、姉を一番気に入ってくれてたのは、義兄の父だった。姉は二十四才で教員免許を取得しており、美人で、かなりモテるタイプであった。


かくして、姉と義兄は結婚した。二人は、三・一・一の震災まで八丁堀に住み、私はよく来訪させてもらった。


 同時期、私は学生で文京区向丘にあるアパートに住んでいたからである。


義兄はよく月島にあるもんじゃの店へ連れて行ってくれた。


義兄は巧みなヘラ捌きで、私のためにもんじゃ焼きを作ってくれた。


もち、チーズ、めんたいがとても旨かったことを覚えている。


彼は現在、文具メーカー大手の会社に勤めている。寡黙だが、コツコツと働くタイプだ。


彼が帰宅すると、サキと三才の弟は「パパお帰りなさい。」と必ず声をかける。姉もニコニコしながら、彼を労いの言葉をかける。幸せを絵に描いたような家族である。


 しかし、以前、姉の酒癖が悪いと聞いていたが、一度だけ母に助けを求めて、電話してきたことがあるという。


「あれは虎ですよ。と言われたけど、虎どころじゃないですよ。びっくりしました。強い強いまさしく肉食竜です。」


その義兄の訴えを聞いた母は、「姉がとうとう本性を見せてしまったか。」と、肩をすくめて舌を出したという。

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