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第二十話 風紀委員vs幼なじみ

 中間テストが終わって最初の登校、俺はもりと名乗る女子生徒と一緒に教室に向かっていた。何でも美優に用があるらしく、俺も関与しているらしい。

 

「そろそろ教えてくれないか? 一体何の用があるんだ」

「じきに分かります。私は直接見ていませんが、あなたのクラスの担任はかなり困っているようですよ」


 担任が困ってる? 何のことかさっぱり分からな……いや待て。思い当たる節が一つだけある。

 教室に着きドアを開けると、俺に気付いた美優が、席を立って近づいてきた。だが森さんが俺の前で仁王立ちして美優に立ちはだかる。


「……誰?」


 ま、そうなるよな。二人は今回が初対面のはずだ。


「風紀委員の森詩織(しおり)です。竹内さん、今、関君に何をしようとしていましたか」

「なんで私の名前知ってるの?」

「まず質問に答えてください」

「何って……雄輝にハグしようとしただけだよ」

 

 森さんは「それです」と言って美優を指差した。やっぱり。


「あなたのその行動が学校で問題になっているんです。イチャイチャするなら他所よそでやってください」

「えー? 別に減るもんじゃないしいいじゃん。それに森さんだっけ? クラス違うでしょ」

「クラスは違っても、学校の風紀を乱すような行動は黙認できません」


 その言葉に美優は頬を膨らませて不満を露わにしたが、意外にも大人しく自分の席に戻っていった。担任は容赦なく睨むのに……。

 だが美優がずっと大人しくしているはずもなく、一時間目の授業が終わってすぐ、俺のもとにやってきた。


「雄輝ー!」

「はい来ました」


 教師とすれ違いさまに森さんが教室に入り、手を出して美優を制す。


「ちょっとまた~? 森さん、なんで私の邪魔するの?」

「私だって好きでやってるわけではないんですよ。あなたの行動が目に余るから仕方なくやっているんです。ほら、関君からも言ってあげてください」


 何をだ、と訊きたいところではあったが、俺は思ったことをそのまま言った。


「お前が俺に抱き着かなければいいだけだ。そうすれば森さんは来ない」


 俺の言葉に森さんはうんうんと頷く。美優は「はぁ」とため息をつくと再び席に戻っていき、机に顔を突っ伏した。

 その瞬間、男子の視線が俺に集中しだした。森さんはやや困惑気味に訊く。


「関君、あなた男子に何か恨みでも買われてるんですか?」

「イエスかノーで問われたらイエスだな。同学年の男子はみんな俺を嫌ってる」

「それはまたなぜ……」


 俺はほかの生徒に聞こえないよう、小声で俺が美優に求愛されていることを伝えた。まあほとんどの生徒は知ってるだろうがな。


「なるほど、要は嫉妬ですか。あなたも大変ですね」

「まあな。だから同性の友人は一人もいない」


 森さんは苦笑して「ドンマイです」と返すと教室を出ていった。

 そして昼休み、俺はいつも通り美優と昼食を食べていた。美優は教室の外をやたら気にしていて、食事が進んでいない。


「美優、いちいち気にしてたら時間なくなるぞ」

「分かってるよ。でもすごく気になるんだよね。森さん来るのすごく早いし」


 それは俺も思った。いつもどこにいるのだろうか。

 

「あー、朝イチャイチャできないのは辛いよぉ」


 俺としては大助かりだけどな。毎朝抱き着かれるのはもう懲り懲りだ。

 ふと、美優は箸でつまんだ玉子焼き食べようとして、動作を止めた。なぜ食べない。


「ねぇ、あーんして」


 突然言われて俺はご飯を噴き出しそうになった。最悪の事態は免れたがかなり動揺した。


「美優、お前急にどうした」

「いや、朝抱き着けなかったからその代わりにと思って……」

「何バカなこと考えてるんですか」


 声の方を向くと、森さんが教室の外の窓から呆れた顔でこちらを見ていた。俺と美優は廊下側の一列目にいるので、森さんの声がよく聞こえる。しかし、マジで来るの早いな。俺たちの見えないところで盗み聞きでもしてるのだろうか(それはそれで問題だが)。美優は冷や汗をかきながら森さんに言う。


「私、まだ何もしてないよ」

「まだ何も、ということは何かをしようとしていたのでしょう? まったく……油断も隙もありませんね。次、同じことしたら呼び出しますから覚悟してください」


 森さんはそう言って踵を返した。美優を見ると渋面を作ってぐちぐちと文句を言っている。


「なんで私ばっかり注意されなきゃならないのよ。……あ、でも朝『イチャイチャするなら他所でやってください』って言ってたから、学校以外ならいいんだよね」


 いや、そういう問題じゃないと思う。……これ、根本的な解決にはもう少し時間かかりそうだな。


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