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第十話 幼なじみとデート2

 時間は正午を過ぎ、俺と美優は公園を離れどこで昼食を食べるか話し合っていた。


「せっかくのデートなんだし、レストランはどう? おしゃれだしデートするなら一番のホットスポットでしょ」

「高校生なら喫茶店かファミレスで十分だろ。レストランは敷居が高すぎる」


 美優は「え~?」と言って不満そうに頬を膨らませた。少しは我慢しろ。

 それに、今俺の財布には三千円しか入っていない。レストランなんか行ったらいくら金が飛んでいくか。……まあ探せば安いところはあるだろうけど。


「この前行った喫茶店はどうだ? ここから近いし」

「私もそこにしたかったんだけど、あの店は平日しかやってないの」


 さいでっか。……まあ俺の右手にファストフード店はあるが、美優の性格からして「デートでファストフード店はちょっと……」とか言って断られるだろう。

 一応提案してみたが、予想通り美優は首を横に振った。だがそうなると選択肢の幅はだいぶ狭くなる。事前に調べとけばこんなことにならなかったんだが完全にミスった。美優は鞄からスマホを取り出し何か調べだした。そして顔を俺に向けて言う。


「なんかこの近くに別の喫茶店あるみたい。すぐ先だから行ってみよ?」


 美優はスマホを手に持ったまま足早に歩き出した。俺は慌てて後ろから追う。

 着いた先にあったのは、前に行ったところと違って店構えが大きい店だった。店内には幾何学模様の絵がいくつか飾られている。

 俺たちは開いている椅子に向かい合って座る。店員が来て俺はホットドッグ、美優はパンケーキを注文した。


「雄輝ってホットドッグ好きなんだ」

「いいや? メニュー見て一番安かったからそれにしただけだ。俺は味よりも値段重視だからな」

「うわぁ……、雄輝どんだけケチなの? デートの時ぐらいパーッと使いなよ」

「無茶言うな。こっちはそこまで裕福じゃねぇんだ。デートだからってなけなしの金をさらっと使えるかよ」


 俺の言葉に美優は大きなため息をつき、冷ややかな目で俺を見て言う。


「そんなんじゃ彼女なんて一生できないよ? 私だからまだいいけど、ほかの女の子が聞いたら絶対悪印象受けるよ」


 美優が面と向かって言うとは思わなかった。だがこんなことでへこたれるわけにはいかん。


「俺は別に彼女を作ろうなんて思ってない。一人でいる方が楽なんだ」

「ふーん。あ、来た来た」


 注文した料理がテーブルの上に置かれ、美優は目を輝かせてパンケーキを一口頬張る。表情から『美味しい』というのが訊かずとも伝わってきた。

 

「これ生地がすごいふわふわで味も美味しい! やみつきになるね!」

「美優、気持ちは分かるがもう少し声のボリュームを落としてくれ、ほかにも客がいるんだから」

「あはは……ごめんごめん」


 俺は子どものような美優のハイテンションに若干引きつつ、ホットドッグを一口食べる。味は普通だな。

 量はそれほどなかったので冷める前にすべて平らげた。そして椅子にもたれかけて美優が食べ終わるのを待つ。美優はパンケーキを半分ほど食べたところで俺を見て小さく笑った。


「な、なんだよ」

「いや、なんか暇そうだなーって」

「そう思うんならさっさと食べてくれ」

「私はゆっくり味わいたいの。雄輝が食べるの早すぎるんだよ」


 しょうがねぇだろ。腹減ってたんだから。

 待ってても退屈なので俺はコーヒーを追加注文してこの先のプランを考えることにした。

 まだ金銭的に余裕はあるがなるべく金は使いたくない。となると映画館、遊園地、水族館は全部パスだ。人も多いしな。まあここで解散してもいいが美優が許さないだろう。


「雄輝、何考えてるの?」

「次の行き場所。美優はどっか行きたいとこあるか?」

「行きたいところか……私は雄輝と一緒にいられるならどこでもいいよ」


 どこでもいいは正直困る。適当に選んであとで文句言われたら面倒だからな。

 ふと、美優が俺の肩を人差し指でツンツンとつついてきた。

 

「なんだ?」


 美優は無言で俺の背後にいる誰かを指差す。

 指差す先にいたのは一人の女だった。髪は腰の近くまで伸びていてやや濃いめのファンデーションとアイシャドウが塗られている。瞳が青いが多分カラコンだな。

 バレないようにやったつもりだろうが、上背うわぜいと顔つきで誰かはすぐに分かった。いつからいたんだ。

 

「私たちをつけてきたのかな」

「だと思う。こっちじっと見てるし」

「声かけてみる?」

「それはやめとけ。どうせしらばっくれるに決まってる。それに、興味本位でついてきただけだろうから気にしてもしょうがない」


 美優は「そうだね」と言って食事を再開した。

 とは言っても、つけられながらデートってのはいいものじゃない。どこであいつを撒こうか。そんなことを考えながら俺はコーヒーを啜った。

 

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