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高梨 和美 ⓪

 私が今屋上の柵の外に立っている理由は、人生に絶望したとか、立ち直れない辛いことがあったとか、そういうことではない。

 

 死にたいっていう願望は結構ありふれていて、その全部にちゃんとした理由があるわけではないんだと思う。

 

 実際私がそうだ。最近あった辛いことといったら中間試験の数学で初めて平均点を切ったことぐらいだし、友達も普通にいると思うし、そんなに貧しい家庭で生活しているわけでもない。

 

 私はただ普通に生きているだけ。何も特別なことなんかない。ただ、生きているだけ。

 

 贅沢だろうか、何も理由がないなんて。気取って言えば、理由が無いのが理由、なんていう風にも言えるかもしれないけど。


 夕暮れの空に、乾いた風が音を立てて吹き抜ける。

 さあ、もういいかな。

 髪をひと撫でして、空中に片脚を踏み出した、そのときだった。


「やあ、高梨さん」


 純粋無垢な少年のような声だった。私は足を止め、ゆっくりと振り返った。そして目を見開いた。そこに立っていた影は、この世の何よりも美しい気がした。


「君の人生、どんな感じ?」


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