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【あと少しで完結します】狐の嫁入り  作者: タラバ虫
第二章 子育て
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第七話 「衝撃」

 少し長めです。

 食人描写があります。



 ネコとクマの装備を追加しました。


 目が覚めた。

 …いや、この表現では少し語弊があるかもしれない。

 眠りからは覚めているのだが、目は開けていない。

 目の前にナニカがいる気配がするからだ。

 もしかしたら、騎士に見つかったのかもしれない。

 そう思い、怖くて目を開けられないのだ。

 しかし、騎士にしてはソレは少し興奮して鼻息を荒げているように思える。

 俺が目を覚ますのを待っているのだろうか。


 恐る恐る、目を開ける。するとそこには、黒と赤の入り混じった4枚翼があるドラゴンがいた。

 目が血走っている。そして、後ろ足の間には棒が刺さっている。否、生えている。

 男である俺には、それがなにか、すぐにわかった。

 しかし、それで何をしようとしているのかはわからなかったが、体はわかっているようだ。

 自然と動いた。動いてしまった。


 


 その後のことは、ほとんど覚えていない。

 気がついたときには、そのドラゴンはいなくなり、代わりに大きな卵が1つ、俺の腹の下にあった。

 そう。なんと、俺は雌だったのだ。


 この卵を温めて孵化させなければならないという使命感がある。今初めて見たはずなのに、とても愛しく感じる。とても、大切。

 絶対に離れたくない。前世も含め、今まで生きてきて感じたことのない感情が芽生えた。

 これが母性だろうか。わからない。

 でも今は、これを温めよう。




 3日ほど、飲まず食わずで温め続けた。

 この3日で、俺の体に変化があった。それは、腹に毛が生えたのだ。おそらく、卵を温めるためだろう。とてもフワフワしている。


 4日目、そろそろ腹が減って、喉も乾いたと思ってきたとき、この前のドラゴンが新鮮な人間を2匹咥えて持ってきてくれた。

 とてもありがたかった。いなくなった訳じゃなかったのか。

 腹が減っていたので、すぐに食べてしまった。


 それからも、雄のドラゴンは4日ごとに2匹の人間を持ってきてくれた。

 そして、卵を温め続けて22日目。殻にヒビが入った。

 どこからそのことを知ったのかはわからないが、雄のドラゴンも来た。


 ピシッ…パキ…カリカリ…


 30分たってもなかなか出てこないので爪で開けてやろうとしたら、雄のドラゴンに止められた。

 自力で出させろってことなのか。

 もう30分たったころ、ついに出てきた。


 「クェェ…エェ…」


 産声を上げている。とても可愛い。

 黒一色で鱗もまだ生えておらず、爪もまだ柔らかい。翼はなかった。

 と、ここで雄のドラゴンが人間の一部をちぎって子供の口に押し込んだ。子供が飲み込み、そして体が光った。

 一回り大きくなり、鱗と翼が生えた。爪はあまり変わっていない。

 黒の体にグレーが浮かび上がった。


 このドラゴンを、俺は知っている。

 リトルカニバリズムドラゴンだ。

 つい一月前までは俺もこの姿だったからな。


 …と、ここで雄のドラゴンが自分の仕事は終わったから、あとは任せると言わんばかりに悠然と立ち去った。

 育児は雌の俺の仕事なのだろう。

 任せろ!今の俺には溢れんばかりの母性がある。しっかりと愛情を注いで育てよう。

 その決意とともに、声が響く。


 『称号(一児の親)を獲得しました。』

 『特定の称号を獲得したため、レベルが上昇しました。』


 ステータス。


種族名 リトルインビジブルドラゴン(進化1、派生1) レベル19/30


 名前 無し


 所持スキル(6/7)


 ・短距離転移1段 ・魔力回復速度上昇 ・鑑定(自身のみ)・殺人 ・カーチル言語 ・透明化


 所持称号


  ・竜族 ・食人者 ・蛮勇 ・悪魔 ・殺人鬼 ・裏切られし者 ・逃走者 ・一児の親


 ん?一児の親はたった今獲得したが、裏切られし者と逃走者は知らないな。いつの間に獲得したんだ?


 裏切られし者

 何度も信じた相手に裏切られた者に与えられる称号。

 相手が裏切ろうとしている場合、なんとなくそれがわかるようになる。


 逃走者

 無様に物事から逃げ出したものに与えられる称号。

 逃走がうまくなる。


 一児の親

 子供が一人いるものに与えられる称号。

 その子供を守るときのみ、全ステータスが3倍になる。また、その子供が自立するまでは敵意に敏感になる。


 名前が気に食わない称号があるが、効果がとても良いので嬉しい。

 特に、称号(裏切られし者)は効果が俺にピッタリだ。

 一児の親は、条件があるが、倍率が高い。

 どれもいいやつだ。


 …と、考えていると、しっぽを引っ張られた。

 俺の子供だ。構ってほしいらしい。

 まぁ、そうだよな。俺は転生をしたから構って欲しいなんてこともなかったし、そもそも親も居なかったが、この子は普通の子だ。ちゃんと構ってやらねば。

 そう思い、背中に乗せたり、前足で撫でたりする。

 嬉しそうに鳴き、もっと構ってとでも言うようにアピールしてくる。

 あんまり可愛いので、ギルと名前をつけた。ちゃんと性別は確認した。


 しかし、至高の時間は終わった。人間が来た。騎士ではないが、おそらく冒険者だ。

 俺はスキル(透明化)があるからいいが、ギルにはない。


 ………殺すしかない。


 ギルを岩の後ろに隠し、透明になって天井に張り付く。

 少し待ち、下を通ったところを一気に体全体で押しつぶした。

 が、冒険者は5人いたのだが、そのうち2人が避けた。2人は即座に剣を構えた。

 2人は獣人のようで、耳としっぽがあり、首に黒いチョーカーを着けていた。

 そして、種類はネコとクマだ。

 が、そんなことは関係ない。

 ネコの後ろに転移し、噛み付こうとしたところで気付かれてしまった。

 口を斬られ、口の片側が裂けた。

 そして同時にクマが向かってきて、刺突してくる。

 しかし、ギリギリでクマの後ろに転移し、殴りつける。クマは吹っ飛んだのだが、すぐに起き上がった。

 獣人だからか、頑丈だ。


 そしてすぐにネコが跳躍して向かってきた。

 速すぎて捉えきれずにその刺突を受けてしまった。

 当たりどころが悪かったのか、多めに血が吹き出す。

 2つの称号の効果で俺のステータスは6倍になっているはずなのだが、それで押されるとは、この二人相当強いな。


 まだ剣が刺さっているうちに腹筋に力を入れ、剣を固定する。

 ネコは剣が抜けないと見るやいなやすぐに諦め、徒手空拳で構える。

 そしてネコの横をすり抜けて剣を大上段に構えたクマが来た。

 俺は半身になって剣を避け、頭をかじり取る。


 よし、これであと一人だ。


 俺が少し体を丸めるように構えたとき、腹に刺さっていた剣がなにか変なところに刺さったのか激痛が走り、体が一瞬硬直した。

 ネコは、そのすきを見逃さなかった。

 一瞬で距離を詰め、俺の頭ををタコ殴りにした。見えていないはずなのに、なぜ位置がわかる。

 しっぽを動かし、ネコを追い払う。

 しかし、またすぐにネコは戻ってきた。

 そこで転移でネコの頭上に回り、大口を開けて口の中に入れ、思いっきり咀嚼した。

 口の中に入れた後に数発もらったが、すぐに断末魔が聞こえた。


 腹の剣を抜き、ギルのもとへ戻る。

 ギルは、今の戦闘を見ていたのか少し興奮していた。

 称号(食人者)のおかげで、ギルの安全を確認し終わる頃には傷はだいぶ治っていた。

 首のないクマの死体は、ギルに食わせた。

 潰れた三人の死体は、土まみれだったので食べる気にも食べさせる気にもならなかった。


 ギルの夕食が終わったところで、ギルを腹に抱えて寝た。

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