第四話 「人間でありたい」
ちょっと短いです。
それから、食人・食虫描写があります。
目が覚めると、いつもは例えば前足など、体の何処かが見えているものなのだが、今日に限ってはそれが見えなかった。
それに加え、体が妙に軽く、スムーズに動いた。
まるで、自分の体ではないみたいだ。
……死んだのだろうか。まぁ、それもそうか。当然だよな。
あれだけの重傷を負ったのだから。
いま、ステータスはどうなっているのだろう。
ステータス。
種族名 リトルインビジブルドラゴン(進化1、派生1) レベル1/30
名前 無し
所持スキル(6/7)
・短距離転移1段 ・魔力回復速度上昇 ・鑑定(自身のみ)・殺人 ・カーチル言語 ・透明化
所持称号
・竜族 ・食人者 ・蛮勇
生きて、いるのか?よ…よかった。
頬を涙が伝っていく感覚がある。俺は泣いているのだろうか。
転生して、感情が薄くなったと思っていたんだが、張り詰めていただけだったのか?
まぁ、いい。今生きている喜びを噛み締めよう。
ひとしきり泣いたあと、自分が登っていたはずの木を押し倒していたことに気づいた。
どうやら、体がだいぶ大きくなっているようだ。
そして、新しい項目の説明を見ていく。
リトルインビジブルドラゴン
リトルカニバリズムドラゴンからの派生進化でしか生まれない種族系統。カニバリズム系統自体が非常に貴重なため、インビジブル系統は世界規模で見ても3桁に満たない。
また、この系統は漏れなくスキル(透明化)を持っている。このスキルは、通常は物凄い速さで魔力を消費するが、種族特性で、何も対価を払わずにスキルの使用ができる。
また、このドラゴンは魔法に強い耐性を持つが、魔法の才能が極めて低い。
この系統は、カニバリズム系統と同じ特性をも持つ。
まだ進化の可能性はあるが、ここからは成体となるので生殖が可能となる。
派生
派生とは、通常の進化とは異なり、より強い種族への進化の可能性が上がる。
また、通常進化では、最大スキル数は1つしか増えないが派生進化では2つ増える。
通常の進化と同様に進化前の特徴を引き継ぐ。
スキル(透明化)
多大な魔力を消費して自身の体を透明にすることができる。
ただし、透明と言っても気配が消えるわけではない。
また、その透明度は空気と変わらない。
称号(蛮勇)
蛮勇なものに与えられる称号。この称号を持つものはトラブルに巻き込まれやすくなり、バーサーク状態になりやすくなる。
やはり魔法がある世界なのか。しかし、魔法の才能が低いのか…少し残念だ。耐性と引き換えならば良しとしよう。
それに、スキル(透明化)も対価無しで使えるしな。十分だ。
それから、派生進化をしたのか。スキル枠が圧迫されていたし、これは嬉しい。
スキル(透明化)ってのは、今使ってるやつだな。
オフにもできるのか?
段々と体の透明度が下がっていき、黒と緑の入り混じった姿が現れた。
進化前は人間の膝くらいの高さしかなかったのに、今では3mくらいある。
翼も2枚から4枚に増え、負ったはずの傷もキレイに消えていた。おそらく、進化の影響だろう。
常にスキル(透明化)を使っていないとかなり目立つな。
スキルを使うイメージをし、透明に戻る。
称号(蛮勇)は、すごく捨てたい。トラブルに巻き込まれやすいだけでも厄介なのに、バーサーク状態になりやすくなると来た。
前世ではゲームなんかもよくやったので、バーサーク状態の危険性はよくわかる。
しかし、後の祭りだ。それに、俺が気を付けていればいいだけだ。
周りを見渡すと、まだ新しい死体が3つと、それに群がる虫がたくさんいた。
獣が来ていてもおかしくないほどの死臭がするのだが、俺の気配で来なかったのか、それとも他に強力な魔物がいるのか。
後者の可能性を考えて、肉の柔らかそうな女の方の死体を虫ごと口の中に入れ、すばやく咀嚼しながら立ち去る。
赤ちゃんと比べれば硬いが、程よく弾力があって美味かった。
焼いて食べられればもっと良かったのだが…
そこまで考えて、はっと、我に返る。
また、自分は人間を食べることしか考えていなかった。
人間を襲うとろくなことが無いと学習しなかったのか。2度も痛い目にあっただろうが。俺は本当にバカだ。
俺は更生する。人間と仲良くする。
多分、祭壇のときと似たようなことになるとは思うが、根気よく繰り返そう。
俺は、人間の味方だ。
……でも、心配だからもうちょっと強くなってからでいいよね?
手加減して殺さないように撃退するくらいの力はあってもいいよね?