第三十六話 「失明」
「おばあさん、ありがとう。」
そう言うと、早く次のところへ行きな、と返されてしまった。
その言葉にまだ戦いは終わっていないということを思い出し、一度(身体狂化)を解いて落ち着いてからあたりを見渡す。
すると、ボロボロに崩れた住宅街が目に入り、所々で火の手が上がっており、黒煙を吐いていた。
そして剣戟の音や号令、泣き声、叫び声、断末魔など喧騒に溢れかえっていた。
改めておばあさんの方を向くと、もうそこには居なかった。
どうやら戦闘が行われているところへと向かったようだ。
俺もボサっとしてられないな。
次の戦場では、銃が何丁も使われていた。
ダンと音がするたびに人が死ぬ。
早く殺さなければ。
その思いで骨頭を振るったが、またもや結界で防がれてしまった。
そして、相変わらず転移も使えないようだ。
魔力が少なくなってきたのか多少の倦怠感があるが、急いでいるので我慢して(雷咆)を放っていく。
そんな調子ですべての人間を殺し終わる頃には魔力も空っぽだったし、日も暮れてしまった。
途中、おばあさんと二回ほどあったが、あの四人以外に俺の驚異になるほど強い敵はいなかった。
今はみんなで隠れている人間を炙り出したり、街中に広がった火を消している最中だ。
だが俺は、そんなことをしている暇はなかった。
未だ、シエラが見つからないのだ。
シエラのいた宿の瓦礫を慎重に取り、すでに地面が見えていたのだが、一向にシエラは見つからない。
せめて、死体が見つかれば供養なりなんなりできるのに………。
だが、死体が無いということはまだ生きているかもしれないということだ。
最後の希望とばかりに教えられた避難所へと向かう。
そこはひどい有様だった。
人が1m四方に何人も詰められ、耳をすませば隣の人の鼓動が聞こえるのではないかと思うほどだ。
だが、不思議と怪我人は居なかった。
聞くと、怪我人は別のところに集められて治療を受けているそうだ。
そこに1歳くらいの赤ちゃんがいなかったかと聞くと、たくさんいたから探している子かはわからないと言われてしまった。
だが、ここで焦っても何にもならない。
落ち着け、俺。とりあえずはこの避難所から探していくんだ。
そう言い聞かせ、人化をしてシエラがいないか見ていく。
倒れそうなほどの倦怠感だったが、シエラを見つけるまでは倒れられない。
結局、シエラは見つからなかった。
ということはシエラは怪我をしているということなので早く向かってやらねばならないな。
そう思い、人化を解いてできるだけ高速で怪我人が集められているところへと飛び、再び人化をする。
そこはまるで、映画の野戦病院のような有様だった。
怪我人が所狭しと並べられ、足が取れていなく、比較的元気な患者は床に座らされているくらいだ。
子供は大人とはまた別のところに集められていたようで、奥の方にたくさんいた。
早足で向かい、重症患者がいるところから一人ひとり顔を確認して行く。
両腕が無い子や、首が折れた子、下半身が取れている子、すでに力尽きて冷たくなっている子など、大人よりも酷かった。
だが、ここにもいなかった。
残るは軽症者のところだけだ。
軽症者には、擦り傷やかすり傷などの本当に軽いものから、片耳が取れたり、魔族の子だと角や翼が折れたりと比較的重めの子が当てはまるようだ。
そして、順々に見ていくと、シエラが寝かされていた。
「シエラ!」
思わず声をかけてしまった。
その声に反応したのか、シエラがこっちを向いた。
駆け寄って抱き上げ、その頭を撫でる。
幸いにも、シエラはかすり傷程度で済んだようだ。
よかった……。
そう思ってシエラのその小さくて綺麗な銀色の目を見つめていると、ふと、おかしな点に気づく。
シエラの目が、どことなく虚ろなのだ。
もしかして、目が見えていないのか?
そう思い、シエラの目の前で手を降ってみる。
だが、なんの反応も示さなかった。
流石に触ると反応はするようだが、どこかおぼつかない。
医者に見て貰うと、やはり目が見えていないようだった。
原因は魔法や爆発、火が眩しすぎたかららしい。
目の奥が焼き切れていたそうだ。
魔法や魔道具でどうにかならないかと聞いたが、最高ランクの回復魔法くらいでしか治らないそうだ。
そしてその回復魔法の使い手使い手だが、獣人の王の娘、ララ・ヒイラギが使えるそうだ。
他には歴代最高の錬金術師と呼ばれるゲイル・スピテルカや、魔王ザイネ・カリバステなどが有名どころらしい。
あとは商人のダイロフ・ニルドが使えるのではないかと噂されているくらいだ。
本当に少ないな…。誰か一人でも会えるといいんだが…。
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