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【あと少しで完結します】狐の嫁入り  作者: タラバ虫
第一章 根気よく
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第一話 「転生」


 あぁぁ……あぁぁ………



 少し甲高い、気をひかれるような声が聞こえる。



 ドチャッ!タプタプタプタプ…



 なにかが落ちてきたようだ。その音を聞いて、俺の意識は急速に覚醒した。

 液体が漏れ出る音がするということは、何か、容器でも落ちたのだろうか?

 いや、それだと最初の声の説明がつかない。それとも、二つの音は別物か?

 そんな事を考えながら、目を開ける。


 …おかしい。目を開けているという感覚はある。しかし、何も見えない。深夜だとしても、家の明かり一つくらいあってもおかしくない。星すら見えない。

 

 すると、唐突にすぐそこからとてつもなく美味しそうな匂いがしてくる。

 なんだ?これは。すごくうまそうだ…。なんだろうか?いや、俺はこれを知っている。血だ。

 口のなかが切れたときや、鼻血がでたときによく嗅ぐ匂いだ。

 しかし、うまそうだ。なぜだ?俺は食人趣味なんてない。だって俺はしっかりとした教育を受けた日本人だぞ?高校だって……。


 思い出せない。自分が日本人の大人だということとそこで培った知識した思い出せない。

 だが、そんなことはどうでも良くなってきた。今はただ、目の前のナニカが食べたい。


 俺はソレのところまで手探りで、かつ急いで行き、ソレをなめた。

 少ししょっぱい液体が舌につく。さっきよりも強い匂い。やはり、匂いの元凶はこれだったようだ。

 もう少し進むと、塊があった。それを食べた。中に芯のようなものがあったが、噛み砕いた。

 ひたすら食べた。いくら食べても美味しさも空腹度も変わらない。

 と、思っていたのだが、終わりは突然来た。謎の声と充足感といっしょに。


 『称号(食人者)を獲得しました。』

 『称号(食人者)獲得により、スキル(殺人)を獲得。』

 『特定の称号獲得により、レベルが上昇しました。』

 『レベルが最大まで達しました。進化を開始します。』

 『最初の食事物・所持している称号を踏まえ、最適なものに自動で進化します。なお、次回からは選択制となります。』


 謎の声には、馴染みがあった。しかし、実際に本物を聞いたことはなかった。

 その声は、地球での生活をしていたときによく見たラノベにでて来るようなものであった。


 異世界転生………か?人間ではないのはわかる。なぜならさっき、四足歩行を、自然に行っていたから。

 と、さっきまで見えなかった視界が回復した。どうやら、昼のようだ。特に何も感じなかったが、進化が終わったのだろうか。

 お決まりのアレでも念じてみるか?

 ステータス。


 種族名 リトルカニバリズムドラゴン(進化1、派生0) レベル1/15


 名前 無し


 所持スキル(4/5)

 ・短距離転移1段 ・魔力回復速度上昇 ・鑑定(自身のみ)・殺人

 

 所持称号

  ・竜族 ・食人者



 おそらくだが、ここはファンタジーな世界のようだ。なんでこうなったのから知らないが、こうなった以上、できることをやっていくとしよう。

 しかし、自分は食人をしたとわかっているのに、驚きや、嫌悪感なんかがあまりない。ドラゴンになったからだろうか?まぁ、それはおいておこうか。

 鑑定で詳細とかが見れるのだとするならば、見ておこうか。

 これも、ラノベ見ないな感じでやればいいのかな?ちょっと念じてみるか。


 リトルカニバリズムドラゴン

 ベビードラゴンの進化。魔物は、生まれてから最初に口にしたものと持っている称号により、進化先が決定する。

 この場合は、ベビードラゴンが人間を食べた場合、リトルカニバリズムドラゴンとなる。

 カニバリズム系統は、人間を食料としてしか見ていないことが多いが、一度戦闘により勝利すれば、配下とすることも可能。

 初期の段階において、人間を食べることは非常に困難なため、たいへん珍しい。


 スキル(短距離転移1段)

 0mから100mまでを一定の魔力量で転移することができる。しかし、そこから1mm多くなるごとに必要魔力量は2乗されていく。

 クールタイムはないが、1段では、地に足をつけ、安定していなければ転移をすることができない。


 スキル(魔力回復速度上昇)

 魔力の回復速度が上昇する。

 パッシブスキル。


 スキル(鑑定)

 通常の鑑定ならば、他人を見ることも可能だが、この場合は、自身のみしか見ることができない。

 自身の簡易的なステータスが知れる。


 スキル(殺人)

 人間との戦闘時のみ、全ステータスが2倍となる。複数人いたり、召喚魔獣などがいてもかわらない。

 パッシブスキル。


 称号(竜族)

 竜族が生まれ持ってくる称号。特に意味はない。


 称号(食人者)

 食人をした者に与えられる称号。人間を食べるときのみ、傷の治りが一定時間早くなる。


 どうやら、成功したようだ。

 おぉ、強いな。特に、食人系統がいい。しかし、まだ一度目の進化だ。油断はできない。

ここで、鑑定を終えた。周りの景色が目に入ってくる。どうやら、一直線に伸びるせまい峡谷のようなところのそこにいるようだ。

 なぜ、こんなところに自分はいるのだろうか。

 そして、なぜ、こんなところに人間の赤ちゃんが落ちてきたのか。そこは気になるが、とりあえずの目標は上に上がることだな。

 まず、1つ目。翼はついているが、ぷるぷるとしか動かない。まだ未発達なのだろう。これから、動かす訓練をしていくことにする。

 2つ目、爪を使って登るのはどうかと思ったが、爪もだめだ。まだ伸びていないし、尖ってすらいない。極めつけは、柔らかい。

 こんなので登れるはずがない。まぁ、今後に期待だ。

 3つ目、上に通じている道を探す。これが有力そうだが、見たところ、そんなところはない。

 一応、今いるところが片方の端のようだが、もう片方に行ったら何かあるのだろうか。

 4つ目、転移で上に登る。これも有力そうだが、見たところ、峡谷の深さは100mは軽く越していると思う。どこかで止まれる場所を見つけなければならない。


 …と、考えているうちに、暗くなってしまった。おそらく、上はまだ明るいだろう。

 しかし、ここは峡谷。日が入ってこれる時間は短い。

 一旦寝てから、上に通じている道か、転移の途中で止まることのできそうな足場を探そう。

 さいわい、あまり敵は見当たらないし、また明るくなってから行こう。

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