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【あと少しで完結します】狐の嫁入り  作者: タラバ虫
第三章 子育て そして戦争
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第十九話 「兵長」


 再び男が懐に突っ込んでくる。

 同じ手は食らうまい。

 その思いで6本の触手を使って刺さる前に槍と掴んでいる手をホールド。

 残りの触手で男を思いっきり殴りつけた。


 しかし、肉を切らせて骨を断つと言うやつだろうか。

 槍がものすごい勢いで発火し6本の触手が消し飛ばされた。


 いよいよ本格的にまずい。

 そう思い、左斜め後方へと転移。

 男が来るまでの僅かな時間を使って、死体を食べて回復。

 そして、さっきまでいた方向を睨みつけて男が来るのを待った。


 が、男は予想外の方向から来た。

 上だ。上空から、降ってきたのだ。

 俺と同じように。

 完全に不意を突かれ、うなじから喉へかけて槍が貫通した。


 首の骨を砕かれたのか、首から下が動かなくなり、倒れた。

 そして喉が潰されたので、呼吸が出来なくなる。

 男は(雷咆)の斜線上にいないので抵抗できる手段が無くなった。

 負けだ。俺は、死ぬ。

 男が槍をこちらへ構えながら、まだ警戒をしているのかジリジリと詰め寄ってきた。


 俺の命も、あと少しだろう。

 獣人たちも俺が倒れたのを見て撤退を始めた。

 まぁ、それが正解だ。

 俺のせいで向こうの士気は上がり、逆にこちらは下がったんだからな。

 すまない。勝たせて、やれなかった。

 街に預けたシエラの顔が浮かび、涙が頬を伝っていった。

 街の人たちや戦士たちは殺されてしまうだろうが、子供ならば、まだチャンスはあるかもしれない。

 元気に、生きてほしい。

 そう願い、槍が突き出されたのを見て目を瞑った。












 痛みは無かった。









 否。

 刺されていなかった。


 「立て!!!ミア!!」


 目を開けると、狼隊長が大剣を振り回していた。

 男は不意を突かれたのか、隊長に押されていた。

 しかし、それも長くは続かないだろう。


 「隊長!」


 その声とともに俺は立ち上がった。

 砕かれた首の骨と喉は再生していた。


 「俺は隊長じゃねぇ、兵長だ!」


 返事が来たが無視し、落ちている死体を食べて再生効果を延長させてもう一度男と隊長の戦闘を見る。

 すると、この数瞬の間に攻守が逆転していた。

 隊長の大剣はひび割れ、左腕は無かった。


 「隊長、もういい、下がってくれ!」


 「……兵長だと、言っただろうが…。…………頼んだぞ。貴方に、カイル王の加護があらんことを。」


 そう言い、隊長は街の方へと下がって行った。

 男に向かい、威嚇するように触手を広げる。

 男は何かブツブツと呟き、魔法を使ってきた。

 余裕がなくなってきたのだろうか。いい流れだ。


 男が魔法で形成したのは蒼の炎でできた槍だった。

 それを俺のやや右へと飛ばしてきた。

 魔法の扱いがあまり上手ではないのだろう。

 そう予想し、魔法を放った直後にできるすきを狙って突っ込んだ。

 が、後方から隊長の悲鳴が聞こえてきた。

 反射的に振り向いた。振り向いてしまった。

 そこには、先程の槍で体を貫かれ、燃やされている隊長がいた。


 隊長が死んだ。

 隊長とは短い付き合いだったが、仲は悪くなかったつもりだ。

 この数日間でも隊長とのことが走馬灯のように走り、心の中の黒いモノが大きくなった気がした。


 『スキル(身体狂化)を獲得しました。』


 振り向いたせいで男にすきを見せてしまい、再び首に槍が刺されたが、不思議と痛みは無く力が漲っていた。


 できるだけ大きくなるように(雷咆)を放ち、男がそれを避けている隙に男の頭上へと転移して、上から再び(雷咆)を放つ。

 男の槍の届く範囲まで落ちる前に男の後ろへと転移し、触手で総攻撃。


 なんだか、いつもより早く動けている。よく聞こえていなかったが、さっき獲得したスキルのおかげだろうか。

 そう考えながらも、男へと攻撃を繰り返す。

 男はチッと舌打ちし、体へと赤のオーラを纏った。

 そして、男の攻撃が重くなった。


 が、なぜだか痛みを感じないので少しくらいの傷は無視していく。

 炭化している触手もあるのだが、これもスキルの影響か噛み千切らずとも再生を始めていた。


 そしてついに、勝負の決着がつくときが来た。

 男が触手の一本に槍を刺したと同時にその触手をねじって地面へと叩きつけ、男の体制を崩した。

 そしてすぐさま男のすぐ真上へと転移し、その頭を蹴り飛ばしてやった。


 男は頭からダラダラと血を流しながら、ふらふらと立ち上がった。

 蹴り飛ばしたときに落としたはずの槍はやはり男の手元へと戻っていた。

 が、ここまで来ればもう関係はない。

 地面を蹴って勢いをつけ、触手で殴っていく。


 はじめは男も槍で触手をさばいていたが段々と精度が落ちていき、ついに触手が当たった。

 それを皮切りにして、男にさばかれる触手は無くなった。

 一分も殴り続けただろうか。

 もうとっくに男は動かなくなっていた。

 最後に、そのボロボロの体を掴んで口元へと運ぶ。

 男はまだ、息をしていた。


 「や…やめ、やめて…くれ…」


 なにか言っているが無視し、口の中でぐちゃぐちゃに噛み砕いて殺した。


 ブックマークしてくれた方、ありがとうございます。

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