第九十六話 「冗談」
フェニックスのところへと向かうと、見上げるほど大きかったはずの体がカラス程度にまで縮んでいた。
…なんだか可愛いな。
「…!ソノ身体、ドウシタ?再生シナイノカ?」
そんな状況で、俺を心配してくれるのか。
「ちょっと、生命の神の呪いを貰ってね。
それより、ごめん。守るとか大きいこと言ったくせに全然守れなかった。」
頭を下げる。
が、予想外の答えが帰ってきた。
「イヤ、イイ。1000年待テバ復活スルンダ。気長ニ待ツトスル。我ラハ不死鳥ダカラナ。」
そうか、それが不死鳥と言われる所以か。
「ありがとう。それに、フェニックスがいなかったら村の人もみんな死んでたと思う。本当にありがとう。」
「アァ。ソレヨリ、ヨクモ我を投ゲテクレタナ?」
「あ、あれは仕方なかっただろう!?ああしないと死ぬところだったし、何より──」
「分カッテイル、冗談ダ。」
冗談……
「プッ…アハハッ!」
「な、何ガオカシイ!」
「いや、冗談なんて言うと思ってなかったから、アッハハ!!」
「ムゥ…」
なんだか、久しぶりに笑ったな。
全てが終わって解放されたからか?…まぁ、いい。それよりも言わなきゃならないことがあるな。
「ありがとう。」
「アァ。我カラモ、アリガトウダ。」
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その後、俺は村のみんなを大陸を渡るときに利用した転移する湖へ導いた。
「こ、これが?ただの湖のようにしか見えんが……」
やはり、初めて見る者は疑うようだ。
だがそれも仕方ないだろう。なんせ見た目だけならただの湖と同じだからな。
俺が代表して先行するために、慣れない松葉杖をついて前に出る。
「みんな、私のあとについてきて。」
ポチャン、と片足を突っ込み、スキルのおかげで慣れた独特の感覚に身を任せる。
一瞬視界がブレ、景色だけなら先程の光景から村のみんなだけが居なくなったようなものだ。
だが、ここはすでに北大陸。さっきまで北に見えていた太陽が南に見えるからな。
数分してみんなもこちらへ飛んできた。
1、2、3、4…………よし、みんないるな。
まだ狐につままれたような顔の人もいるが、さっさと進もう。
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ピタリ
先頭を歩いていた俺の足が止まる。
「見覚えがあるぞ……だが、どこだ…?」
ふとあたりの風景に見覚えを感じ、見回す。
「ッ!!」
右手の方向に見つけたのは、地面に細長く走る亀裂。
底からは死臭が漂ってくる。
ここは、俺が生まれた場所だ。
奥を見ればあの祭壇もある。帰ってきたのだ。