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【あと少しで完結します】狐の嫁入り  作者: タラバ虫
第六章 戦争孤児と捨て子
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第八十八話 「奇妙な関係」

 大結界が張られてからしばらくが経ち、私─ユルム─はシエラちゃんとヴィルロよりも内部のヴェグノに引っ越した。

 というのも、ヴァイルやヴィルロは最近あまり治安が良くなく、しかも近くに食料がとれるところが無いために食料不足だったからだ。

 それに…この街には学校があるから将来ミアちゃんが帰ってきた時にシエラちゃんを学校に入学させるという選択肢が増える。

 決して悪いことでは無いだろう。

 ただ、こちらを見つけてもらわないと話にならないから大結界が解けるころには一度ヴァイルに出向こうと思ってる。


 まぁそれはさておき、最近困ったことがあって………


 「何か手伝うことはありますか?」


 あぁ、悩みの元凶が来ました…って、口調が移っちゃったよ。

 悩みというのは、最近シエラちゃんが誰に対しても敬語を使うようになっちゃったこと。

 最初は遊びの一環だと思ってたけど、一向に直らないんだよね。

 こんな小さな子供が大人に敬語なんて使ってるところを見るとなんだか悲しいような気持ちになっちゃって…。

 やっぱり、カウンセリングとかに連れてったほうがいいかな?

 ま、それも要検討ということで懐にしまっておきますかね。


 「いや、特に無いかな。」


 「そうですか。」


 スタスタとどこかへ去っていった。

 うーん、いっつも何やってるんだろう?

 今度聞いてみるかな。 




━━━━━




 ヴェグノ付近の丘の上で寝転び、見慣れない薄赤色の空を見上げる。

 私─シエラ─の知っている青い空は大結界のせいで暫く見ることは出来なくなってしまいました。

 そして…私のお母さんもこの大結界のせいで帰ってくることができないんです。

 ………こうやってずっと空を見ていると、なんだかこの空がもう元には戻らなくなってしまうかのように錯覚してしまいます。

 ちょっと嫌な気分です。


 あぁ、そういえば最近お友達が出来ました。

 シアという戦闘技術養成学校に通っている方なのですが、ときどき会って魔法を教えてもらっています。

 魔法は楽しいです。頑張れば頑張るだけ出来ることが増えるし、なんだか魔法があればなんだってできるような気分にさせてくれます。

 …もちろん、そんなことはならないのだけど。


 何気なく、手を天に伸ばして指先に火をともす。

 見つめている内にその火は風に煽られて揺れ、次第に小さくなってふっと消えた。


 ───ヒュウゥゥゥゥン……


 風が強く吹いた。

 なんだかちょっと強い気配がします。

 これはちょうど…お母さんがナニカと戦っていたときのような…。


 体を起こすと、目の前にとてもじゃないが言葉で言い表せないような姿形をした、風の集合体のようなものが浮かんでいた。

 ソレは歪な球形で、常に身体を形成している風がひしめいていた。


 「あなた、誰?」


 なんとなくだが意思があるように感じて問いかける。


 「…ピュ……レ、…ア………」


 ピュレア。甲高く耳障りな音で確かに風はそう言った。

 やはり意思があるようだ。


 「ピュレアは、魔獣なの?」


 再度問いかけるが、それ以上ピュレアが喋ることはなかった。

 だが、喋る代わりに風はふよふよと上昇してシエラの肩の上で静止した。

 シエラもまるで最初からそうあるべきであったかのような安心感を覚え、それを咎めることはなかった。

 ここから、一人と一つとの奇妙な共同生活が始まった。




 流石に初めは気味悪がられたり野に追い返されそうになったが、慣れてきてピュレアが安全だとわかると周りも何もいわなくなった。

 シエラは数日に一度ピュレアに魔力を分け与え、そのお返しとしてピュレアはシエラに魔法を教える。

 教えると言っても発動してみせるだけのものだが、シエラにはそれで十分だった。

 それで、満足だった。

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