31、月物語
その瞬間、時空が止まった。
「え?」
「へ?」
…え?…
天の声。
「あら!あらら!あらららららら!」
「へ?も、望月教授?」
「オットー、修人君、海生君、碧海ちゃん、元気?」
「あの・・・死にかけてるんですけど、」
「みたいねー。ウフフ!」
「どっから喋ってんすか?声しか聞こえないすけど?」
「オットー、幽体離脱、遠距離バージョン、成功!私の論文が実証されたわ!」
「どういう事すか?」
「今私の身体は海岸にあるの。意識だけがここにぶっ飛んで来たってわけ」
「へ?」
「私の理論によると、意識の移植は可能だって事」
「へ?」
「臓器は移植できるでしょ?だから意識だって移植出来るのよ!」
「は?」
「最期の実験に入るわ!」
「へ?」
「成功したら私の理論に間違いはないって事よ!」
「は?」
「碧海ちゃんの意識を私の身体に移植するわ!」
「え、え?」
「碧海ちゃんは、私の身体を使って、生き返るのよ!」
「えー!そんな事って・・・」
「私は消えるから、後は碧海ちゃん、頼むわよ!」
…え、あ・・・…
「大丈夫よ。碧海ちゃん、頑張るのよ、」
…は、はい…
「最期に一言。修人君、三十万ね。」
「え?」
「私の身体代、五万で碧海ちゃんに、譲るから・・・。特別価格よ。代金は碧海ちゃんに払ってね・・・」
「え、え?、」
「碧海ちゃん、準備はいい?」
…は、はい…
「それじゃ、チャオ!」
…・・・…
時空が動き出す。水面上に出た。
「修人ーーー!」
美香が叫ぶ!
「大丈夫!海生ーーー!」
「あぁ!大丈夫だ!」
清美のジェットスキーが到着した。
海岸に着くと、待っていたのは・・・。
「望月・・・、いや、碧海・・・」
「海生君・・・」
十一年ぶりの、抱擁であった。
『水晶の館 月』
水晶球が・・・砕け散った。




