30、夜の海
海岸で沈む夕陽を眺めていた修人と美香、既に日も暮れて、夜の帳が下りた頃、少し離れた場所にはアキラと清美が・・・。
「あの二人、いい感じね、」
「あぁ」
波の音が聞こえてくる。
水面に映るは昇り始めた、月の光。満月だ。
「水晶の女、望月教授、大学を去ったよ」
「・・・・・」
「随分と世話になった・・・」
「・・・そう、」
「金払ってねーけどな。あはは!」
「・・・・・」
「ねぇ、」
「ん?」
「水着、買ったのよ。気づいてた?」
「あぁ」
「・・・・・なんか、言ってよ、」
「綺麗だ、」
「・・・・・」
「本当だよ」
「じゃあ、もっと、なんかあるでしょう?、良く見てよ」
「見れねーよ」
「何でよ!」
「照れるから・・・」
「・・・・・ねぇ、」
「ん?」
「水晶の女の事、好きなの?」
「・・・・・」
「いや、俺は・・・、」
美香は立ち上がり、言った。
「へへ、捕まえてみなよ!」
美香は波打ち際に走る。
「オイ!待て、待てったら!」
月光の下、アッカンベーをする美香。膝まで海水に浸かってる。
「オイ!危ないから辞めろ!」
美香の腕を掴んだ。
勢い余って倒れ込む二人。二人は笑い、座ったまま見つめ合う。
「修人!私のこと、ちゃんと見てよ!」
「・・・・・」
それが涙だったのか?水飛沫だったのか?そんな事はどうでもいい。ただ、美香の想いが伝わっただけ。修人は美香を抱きしめた。
近づいて来たのは大きめの波であった。
「海生さん!アレ!」
「クソ!あいつら!浅瀬とはいえ!行くぞ!」
修人と美香、口づけをしようとした、その瞬間、波に、飲まれる。波の引き際に、一気に沖に、流される。
「マズイぞ!ジェットスキーも準備しろ!」
清美が走る!
「オイオイ、アイツら・・・」
アキラが呟く。
沖合。
「大丈夫。力抜け。浮かんでりゃ、助けがくる」
修人は美香を浮かせ、必死に泳ぐ。
「急げ!持たんぞ!」
海生が叫ぶ!
遠くにジェットスキーの音が、、、。
「間に合わない!」
海生、必死に泳ぐ。もう少しだ!
「修人ーーー!頑張れーーー!」
海生、たどり着く。ボードに美香を乗せる。沈み行く修人。
「修人ーーー!」
潜る、海生。
修人を掴み、水面へ。
満月が揺らめく。
…お願い!死なないで!…
その時、時空が止まった。




