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17、ラストチャンス
あの洋館を出る際、水晶の女はこう言った。
「どっちにしろ、次の受験が最後のチャンスよ。これ逃したら、全てが、終わる・・・」
修人自身もそれは感じていた。次が最後だと・・・。
碧海のいない、孤独な闘いが始まる。自分自身との闘い。焦らぬよう、焦らぬよう、一つ一つモノにして行く。焦らぬよう、焦らぬよう・・・。
チクショウ!
頭では、分かっている。焦っちゃダメだ。分かっている。けど、冷や汗が流れる。手が震える。落ち着け、落ち着け。タバコの量が増える。
仕事でもミス連発。
「何やってんだ!修人!」
宮さんの怒号が飛ぶ。
「修人!頭、冷やしてこい!」
二百円渡され、店の外に出た。ジュースを買う。
タバコを持つ手が震えている。
自宅。
アキラの兄貴が言う。
「それでいいんだ。それが普通だ。挑戦者は震えながら向かって行くのが、当たり前なんだよ」
ガタガタ、ガタガタ。
全身の震えが止まらない。
最後の受験まで、後三カ月・・・。




