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【ゴーレムメイカー】  作者: beniten
3/3

3話 ルール




ーーーーーーー


暗い森の中から奇妙な声が聴こえる。


ーーグギャギャキギャグ、ゲギャギギャーー


老人と赤ん坊が笑うような楽しく悲しく奇妙な声、それでも前に突き進む。


もう一歩踏み出そうとした時、身体が傾く。


その時踏み出したはずの足は無く、倒れゆく自身の身体を地面に落ちて転がる頭で見つめていた。








こちらの世界に来て3度目の朝を迎える。


今日は晴れだ、実に気分が悪い。


ふと寝る前に頭の中にあった光の点のことを思い出した。


森の中を進み遠く離れていったゴーレムの光、今ではその光を感じることができなくなっていた。


幾つか理由は考えついた、光の感覚を感じとることができる時間や距離を越えてしまったため、俺が寝ることにより意識を失ったから。


理由をつけようと思えばいくらでもつけれる、でもただなんとくゴーレムは死んだのだと思った。


死んだという表現が適当なのか分からない、生物として生きてるかと言われても分からないし倒されたといった方がいいのか。


でもどちらにしろ森の奥深くには魔物という名の化物がいる、あのゴーレムすら殺せる化物が。



一旦光の点やゴーレムについて考えるのをやめ今日の予定について考える。


今日は村の中を見て回るつもりだ、アルスとしての記憶を探ってみるが村の中に関しての情報が少ない。


元々病弱だった為あまり外出はしなかったのだろう、まぁ身体は若干弱ってはいるが現状、病弱というか身体を動かす機会が少なかったが故の運動不足に思える。


ただ昨日に比べて、今日は少し体が軽い気がする。


病はアルスの精神と一緒に消えていったのかもしれない、こちらとしては好都合だ。


ただ、問題は未だ山積みである。


まず、退けた魔物が再度村を襲う可能性があることだ。

人間を喰らう魔物が村という餌場を見つけたのだ、退けたからはい安心などそんなことはないだろう。


再びやって来るという前提で事にかからなければならない。


では戦うか逃げるか、逃げる事は恥ではない。


考え行動に移さない事が恥だと俺は思う。


行動には責任が付いてくる、村長にもその事は忘れて欲しくないものだ。


とりあえず村の中を見て回るか。




この村は言ってしまえば普通の村である。


人口も70人程、木造建築の家屋が並び農業と、たまに来る商人に拾ってきた森の資源などを買い取ってもらい、商品を商人から買う。


未だ物々交換が主流な小さなコミュニティである。


唯一の特徴と言えば魔の森に比較的近いという事くらいだろうか。


魔の森は文字通り魔物達が棲まう森、村人がおいそれと入れない場所である。


入った所で待つのは死のみ、狼の群れに羊が飛び込むようなものだ。


ではなぜ今回村は襲われ死者をも出してしまったのか、結論から言えば村長の軽率な判断が招いた事だ。


事の発端は森の手前で見つかった、ある薬草だった。


その薬草は貴重な物であり村を訪れた商人に高く売れた。


その高価な薬草は森の手前から奥へと向かうように自生しているのが見えた。


ただ、村には古くからの掟があった。


[決して魔の森の奥へは進んではならない]


この掟を村長は金に目が眩んで破ってしまったのだ。


村の男手を数人連れて森へと入った村長は、森の中で死を見た。


引き連れた男手2人は森でバラバラに切り刻まれ、命からがら逃げ帰った村長はその死の魔物を村へと誘ったのだ。


異変に気付いた村はパニックになり、村で唯一の元冒険者であったアルスの母が先頭に立ち剣と火を用いてなんとか魔物を村から退けた。


ただその母も戦闘で受けた傷が原因で帰らぬ人となってしまった。


もう村には元冒険者も魔物と戦える戦力もない。


遅かれ早かれ待つのは死だ、待てば魔物による殺戮、逃げれば村が死に行き場のない村人は行き倒れる。


俺1人なら別にこの村なんか捨ててもいい、ただ、兄のニーアだけは別だ。


ニーアは俺にいつも優しく接してくれた、それは昔からでアルスの記憶を探ってみても分かった。


俺は受けた恩は必ず返す、それは善悪や血の繋がりなどとは関係のない俺の中でのルールだ。


このルールだけは前の人生でも死ぬまで曲げなかった。


今回も曲げるつもりはない。


村の中を見て回ったが、周りに柵もなく見張り台などもない。


辺鄙過ぎて野党の類も現れないだけまだマシだがこれでは村の防備は期待出来ない。


環境を変えようにも、村の事は村長が決める、次期村長は兄のニーアだろうが現村長はあの無能だ。


ここがネックである。


とりあえず他に見るものもないし帰るかと家路を急ぐ。


(ん?あれは親父ともう1人は知らないやつだな)


道の向こうから2人がコソコソと何か話しながら歩いてくる。


とっさに隠れた俺は物陰で聞き耳を立てる。


「本当にいいんですね、村長さん」


「あぁ、息子は1人いればそれでいい。で、幾らになる?」


「健康な男の子ならば金貨2枚といった所ですかな、細かい査定は現物を見てからと言うことで」


「それで構わん、取引はなるべく早く頼む」


「10日後また来ます、その時に契約書にサインを」


2人の男達が立ち去った後、物陰から姿を現わす。


どうやら親父は俺を人買いに売って今回の損害の穴埋めを図ろうとしているようだ。


あいつは俺を売った、家族ではない。


受けた仇には必ず報いを、頭の中に記憶する。


その日は帰って食事をとり、森の手前でまたゴーレムを作り森の中へと進ませ寝た。


ひんやり冷たい静かな夜だった。

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