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ブラッド・ZERO  作者:
第3章 カルバナ帝国編
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第64話  カルバナ帝国へ3

 オーガの国、カルバナ帝国。

 ディーク達一行は数日かけてやっと辿り着いた。

 スコールは、はじめての異国の地に興味心身だ。


 王宮を中心に円状に広がる広大な街はエルドナと同等の広さがある。

 意外に多種族も多くエルドナと大差はない様だ。建物は土やレンガで作られたものが多く木造の建物はほとんどない。

 そればかりかどの建物も歴史を感じさせるには十分な建物ばかりである。


 そして何より凄いのが武器屋の数だ。

 防具屋やアイテム屋より圧倒的に多い武器屋はそのほとんどがただの販売店ではなく鍛冶屋もかねている。

 鉄を溶かす熱気がカルバナの大地を焦がしている様だ。


 ここでエリオットの刀がつくられたのか――


 スコールは逸る気持ちを抑えディークの指示を待った。

 ディークは辺りを見回し、


「ふむ。中々いい場所じゃないか。むむ!」


 ディークは何かを見つけたような反応を示す。そしてホクロンがゆらりとディークの横に並んだ。


「魔王様、そろそろ我々の任務が……」

「そうだな。ホクロン君、これだけは我々でないと無理だ。危険すぎる」


 2人は今までになく深刻な表情をしている。

 あまりの気迫にスコールもゴクリと唾を飲み込んだ。

 そう言えばホクロンは何か重大な任務を命じられたと言っていた。わざわざこんな遠くまで連れてきたのだ余程のことだろう。

 ホクロンはディークの肩に手を回すと1つの店を指差した。


「さぁ! 突撃でやんす!」

「おう! カルバナのビールの味はどうなんだろうな!」


 そう言うと2人は肩を組みながら嬉しそうにバーに向かって走り出した。


 まさか……

 その重要な使命というのは……

 ただ単に異国のビールを飲みたかっただけなのでは?

 一瞬そんな気持ちが頭によぎった。


 呆気にとられていたスコールにミシェルが命じる。


「後は頼んだわよ。何かあったらすぐに連絡をよこしなさい」


 ミシェルは薬指に付けた指輪を見せる。

 そして、先に行ったディーク達を追いかけながら、


「こらー! ホクロン! ディーク様の横はアタシの席なのよ!」


 まるで、客人を迎える時の母親のように声色を変えながら走り去って行った。

 嵐のように走り去って行った3人を眺めていると、隣にいたルータスが歓喜の声をあげる。


「流石ディーク様だ……何よりもまずは城の為に動くか……深い、深すぎるぜ」


 いや……多分それ違うんじゃないかな?


 うっかり口にしそうになったが、何とか言葉を飲み込んだ。

 この手のことでルータスを怒らせると色々厄介である。

 するとチャンネが場を仕切り直すように手を二回叩き、


「まずは各々の仕事を果たしましょうか」

「はい先生」


 先生の言う通りだ。日が沈む前にやらなければならないことが山ほどある。

 まずは馬車を預けなくてはいけない。

 それと宿の準備に、ゲートの設置だ。

 1つ1つは簡単だが見知らぬ土地でやるとなれば話は別である。


「ここは二手に別れましょう。スコール君とアイ君は馬車を預けに、私とルータス君で宿の準備をしましょうか」


 チャンネの指示に皆はすぐに行動を開始する。スコールはマントを深く体にまとう。

 今、聖剣を見られる訳にはいかない。面倒な問題が多すぎるからだ。

 スコールはアイに馬車の所にいるように指示を出すと街の入り口付近を散策し始める。馬を預ける馬宿は街の入り口付近にあるからだ。

 まずは行き先を見つけないことには動きにくい。


 そんな時丁度、街に入ってきた冒険者パーティを見つけた。

 運がいいことに馬を連れているではないか。

 これはラッキーだ。

 そのまま後に付いていくとすぐに馬宿の大きな看板が目に入り場所を確認するとスコールはすぐに引き返しアイの元へと戻った。


「移動するぞ、ここを真っ直ぐ行った先だ」


 アイは元気一杯に「了解!」とだけ言うと謎の鼻歌を歌いながら歩き出す。

 スコールも馬車を引きながら馬宿に向かった。

 馬宿に着くと愛想の良い店の主人が大きな声で出迎えてくれた。


「あんた達、その歳で珍しいね! どこから来たの?」


 普通ある程度の歳まで冒険者にはならない。いや、なれないと言った方が正しいだろう。

 純血である4種族は各国で学園などの教育があり子供の内から冒険者になることはないからである。

 何より子供の内から大人のやる仕事をしていては自殺行為に等しいだろう。なので、この馬宿の主人の反応は至極当然の反応であると言える。

 現にカルバナ帝国に入ってからというもの街の人々が物珍しそうに見ていた。


「エルドナの方角からだよ」


 そういえば自分たちの情報をどこまで出していいのか聞いておくのを忘れていた。


「へーつ、でもお前さん達、面倒な時に来ちゃったね」

「面倒な時?」

「あぁ、少し前に病気で皇帝が亡くなっちまってね。後を継いだ一人娘の王女様と反対勢力で国中ごった返しているよ。内戦とか起きなければいいけどな」

 

 なるほど――よくある後継の泥沼争いと言うやつか。

 若くして女王になった姫と、それを利用して地位を上げたい者の派閥でもできたのだろう。

 どこの国でも同じようなものだな……


 店の主人は辺りを見回して更に続ける。


「ここだけの話、姫様の命を狙う輩もいるらしいよ」


 姫が消えれば国を支配と考えている者の仕業――あるいわそれによって得をする者が多いいのだろう。

 どちらにせよあまり穏やかな話ではない。覇権争いの真っ只中というわけか――

 

 スコール達は宿屋の主人と雑談を交わしながら馬車の預かりの手続きを終え馬宿を後にする。

 

「アイ、どうやら面倒なことになりそうだな」

「タイミングがわるかったね。でもディーク様がなんとかしてくれるよ」


 そうだといいが……

 エルドナの使者も既にカルバナにいるのだろうか?

 

「周りはオーガが多いな」


 オーガの国なのだから当たり前である。何となく話のネタに言ってみただけだ。


「皆大きいね。明日はゆっくり街を見学しようよ!」


 遠足にでも行くような言い方である。


「おいおい。俺達は遊びに来たんじゃないんだぜ?」

「ぷぅ――コー君は真面目だね。いいじゃんちょっとくらい」


 アイは頬をぷくっと膨らませ不満げな様子だ。


「とりあえず先生と合流して宿の様子を――」 


 次の瞬間アイは急に止まりスコールの言葉を遮り何かを思い出したように叫ぶ。


「あっ!」

「どうしたんだいきなり?」

「ゲートを繋がなくっちゃ!」

「そんなもん明日でいいじゃねぇか」

「ダメだよ! 今日は一度城に帰ってお風呂に入りたいの。コー君も一緒にどう?」


 いきなりのアイの発言にスコールは慌てふためきながら、


「ば、ばか何言ってんだよ!」


 アイは一瞬固まり手をポンと叩くと、口に手を当てジト目で見てきた。


「プププ、コー君。今変なこと考えたでしょ?」


 スコールは思わず頭を抱え込む。

 やってしまった――

 いきなりの言葉に反射的に言ってしまった。しかもアイは完全に悪乗りモードに入っている。  

 

「ちょ、ちょっと聞き間違えただけだ。忘れてくれ」


 アイは悪意に満ちた蔓延の笑みで、


「スケベ」

「うっ……」


 単刀直入に言われると反撃の言葉に困る。


「一緒にお風呂入りたいの?」

「何言ってんだよ! お前みたいなお子様が!」


 自分も十分お子様なのだが……この際はよしとしよう。


「プーン! 酷いな――正直になってもいいのに」


 そう言うとアイはスコールの腕に自分の腕を絡ませてきた。

 

「う、る、さ、い!」


 スコールはアイの腕を振り払い睨みつけると、アイはゲラゲラ笑いながら、


「コー君もお兄ちゃんと同じ反応だね。やっぱ仲良しさんだ」 


 これ以上関わるといつものルータス見たくからかわれるだけだ。

 少し前に魔王城のバーで飲んでいる時にルータスが「昔のアイは寂しがり屋で僕がいないとすぐ泣き出す可愛いやつだった……」と、遠い目をしながら言っていたのを思い出す。

 それが真実なら今では見る影もない凶暴魔法使いになっている。敵が泣き出すの間違いじゃないのだろうか。


 人の成長は恐ろしいものだな……

 

 チラリとアイに視線と飛ばすと、


「あー! コー君今の目、何か凄く失礼なこと考えてたでしょ!」


 心の中が視線に出てしまっていたようである。しかしスコールは無視して、


「ゲートを繋げるにもまずは先生と行流してからのがいい。先に宿屋に行くぞ」

「はーい」


 そうして2人は騒がしい会話を続けながらチャンネの元へと向かった。 


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