第1話 プロローグ
そこは真っ白な世界だった。
それ以外には何もない。時間の概念すらもない。
「もうここにきてどれくらい経ったのだろうか?」
男は頭の中でのみ言葉をはしらせる。
「もう千年は経過しているのか? もしかしたら一万年? いや、一億年かもしれない」
無限とも思えるこの場所では時間の概念など無意味だ。あるのは白い空間だけだった。
自分以外の周り全てが何もない。
何度も狂った。おかしくなった ストレスが限界にきて頭は思考を停止し、まるで毛糸をぐちゃぐちゃにした様になってもここならその無限とも思える時の中でまたほどかれていく。
そんなことを繰り返し、もう考えることすら無意味だと悟ったが、唯一耐えられないこともあった。
それは孤独だ。
「もう嫌だー人は嫌だ嫌だ嫌だ」
有り余る時間で魔法の研究はしたが物はできても生命は創造できなかった。
命を創造するとはまさに神にのみ許された奇跡と言えるだろう。しかしそれから膨大な時間とともに今何かが生まれようとしていた。
男は唯一持っていた、“何か”に魔力を吹き込んでいく。血を肉を心臓を細胞一つ一つにまでに及ぶ魔力の鼓動はその中心で混ざりながら円となっていった。
その円は眩い光となって“何か”のなかにゆっくりと落ちていく。この光こそが生命の命、生命の光なのかもしれない。
そして眩しく輝き本当の生命へとかわっていく、輝きが一人の女性へと変わっていった。黒い髪で腰くらいまであり非常に整った顔をしている。
男は呆然と立ち尽くしていたが目からは涙があふれ出していた。
「OOO様なぜそのような涙をながされているのですか?」
目の前の女性は心配そうに言った。
男はしばしの沈黙の後、
「俺を一人にしないでくれ……ずっとそばにいてくれ」
はるか昔に忘れかけていた言葉を男は放った。