第12話
油断していた……
《ユダンタイテキダナ》
全くその通りだな……チッいてぇ
「良くもやりやがったなテメェ‼︎」
《アイツソウトウアタマニキテルナ》
流石に味方を潰されればそうなるか…其れにしても如何するか…右肩はブロードソードが突き刺さり、動けない。
其れにしても冷静さを失っていると思ったが…そうでも無かったか…
《キキテガツブサレタノハイタイナ》
あぁ…其れにしてもこの勇者何で態々急所を外す様な事をした?
メリットはない筈
ズッと肩に刺さっていたブロードソードが引き抜かれる。
「グッ……」
ブロードソードが引き抜かれた事により激痛が又襲う、実際刺すよりも抜く方が痛みなどが大きく、刃物などを抜いた場合、傷の拡大や出血の増加などが起きてしまうのだ。
「この……!」
《ハモノハ、ササッタラヌクナッテスクールデ、ナラワナカッタノカ!コノガキ‼︎》
ゴロンと勇者の手でうつ伏せになっていた、俺の身体を仰向けにする……あぁ…この発情期め!
大体コイツの魂胆が分かり、キッと発情期の猿を睨み付ける。
「この特殊性癖の変態め!傷付いた女を犯して楽しいか‼︎」
「ウルセェ‼︎」
勇者の癖に女の子の腹を殴って来やがった…
「ッ…!ッッ〜‼︎」
勇者と云われているだけあり、そのパンチは相当な威力を持っていた様で声にならない声を上げながらジタバタと悶え苦しむ。
「ヘッ…!漸く大人しくなったな」
騎士団長 クレア・アリエナールにとって今日という日は一生の中で五本の指に入るであろう最悪の日となった。
彼女は自分が使えている国、凡ゆる種族が暮らしている国『万国』その国王、エルフの王であり凡ゆる知識を持つ通称『叡智のアルリウス』の命に従い、隣国に行く王の娘『慈愛のリーリス』の護衛に着いていた。
行きは何事も無かった、強いて言うならばゴブリンの襲撃が数回あった程度で大して脅威になる筈もなく、無事に隣国『オルリンダ』に辿り着く事に成功した。
が……問題は帰りに起こった。
まるで自分達の進路を把握していたかの様に、小規模の部隊が展開されていた、彼等の装備から見て先程行ったオルリンダの部隊だが……万国に敵対する国の偽装部隊だろう、比較的オルリンダとは友好的な立場を気付いているのに、この様な事はする筈が無い。
そうして起こった偶然を装って起きた必然の戦い、部隊の量では此方の劣勢だが、質と言う点で置いては此方が遥かに優位であった。
先ず万国最優を欲しいままにしている、『万能の姫騎士』クレア・アリエナール、『魔術の申し子』魔術に造詣が深いエルフの娘イリス・サキリス、そして騎士団の優秀な騎士達を選んでいるのだ、幾ら偽装部隊も精鋭で有ろうとも苦戦は必須、いや…トラブルが無ければ偽装部隊は敗走していたであろう。
そう『トラブル』だ。
そもそも、偽装部隊はエルフの王女達の進路を把握していたのだ、王女達の部隊員達の事も把握してはいるであろう、そして対策もしてはいるだろう。
突然其れは起こった
一瞬、一瞬で前衛にいた歩兵部隊が全滅したのだ。
茫然と立つ事しか出来なかった万国の部隊に又しても不可思議な何かが襲い掛かり、騎士の一人が犠牲になる。
そして、漸く多大な犠牲を払い漸く理不尽な不可思議の姿が露わになる。
国宝級であろう防具、武器を持つ少年だった。
途端、少年の出現により優勢だった戦況が一転して劣勢になっていた、正に一騎当千の如く蹂躙して行く。
蹂躙され尽くされ護衛対象の自身の国の王女を守る事が出来ずにましてや、敵の慰み者になり掛けた時に其れは起きた。
背後にいた少年の部隊が全滅したのだ、最初は気にも止めなかった少年だが、次々と聞こえる悲鳴に遂に無視出来なくなった少年は部隊の所に戻って行った。
「一体何が…」
言わなくても分かる、誰かが私達を助けに来てくれたのだ。
周りを見る、騎士やイリスは何とか無事…姫様も無事、ならやる事は分かりきっている。
「すまないが…姫様を頼む」
「ちょっとクレア⁉︎」
「団長何方に!」
「私達を助けてくれた恩人を助けに行く」
そう言うや自分に身体強化の魔法と雷の魔法の『混合魔法』を掛け、駆ける。