関係
「あの…私と友達に…なってください…!」
「え…私でいいの?」
「田崎さんが良いんです!」
入学して間もない頃
お互い緊張して上手く喋れなかった
でも私にとってそれが新鮮で楽しかった
だから純にならあの事だって話そうと思った
純が居なかったら生徒会長だってきっとやって
いなかったと思う…それほどに大事な存在
純…本当にごめんなさい…
なんだか最近結衣の様子がおかしい…
何があったか教えてくれない…
こんなに近くに居るのに…私が知らない彼女が
居るんだと思うと複雑な気持ちになる…
結衣の力になりたいのに
どうしたら良いか分からない自分が情けない…
「結衣…」
「っ…ごめんなさい純…一人にしてもらえる?」
「えぇ、分かったわ…」
「あれ?君って確か結衣ちゃんと
いつも一緒に居る…なにちゃんだっけ?」
「どうして男子がここに居るんですか?
それと名前が知りたければ自分からと
習わなかったのですか?」
「あはは、ごめんね?俺は白河 陽太
因みに男子校の生徒会長やってるんだ~!
よろしくね」
「私は副生徒会長の純です で結依に何の用ですか?」
「うん!純ちゃん生徒会室まで案内してくれない?」
「別に良いですけど…結衣悩んでいる様子なので
手短にお願いします」
「うん!分かったよ
それにしても純ちゃんもなかなかだね!」
「はい?何がですか」
「分からないならそれはそれでいいね
ただ結衣ちゃんが羨ましいなって
思っただけだから」
本当に分からないと言う訳じゃない
変に話を広げない為に知らない振りをした
白河さんがにこにこしたままこちらに
近づいてくるのをとっさに避ければ表情が一瞬崩れる
そしてまたにこにこしてお礼を言ってきた
「ありがとう純ちゃん!」
彼が生徒会室に入ってほどなくして
聞き覚えのある音、吐息混じれの声が
聞こえてくる
信じたくなくて扉を開けた
そこには服ははだけて泣きじゃくる
結衣とにこにこと楽しそうな白河さん
「っ!白河さん!貴方は今何をしているんですか」
「ん?なに純ちゃんも一緒にする?」
イカれてる…何でこの人は笑っているんだろう
何でこの人は楽しそうにしているんだろう
「ふざけないで下さい
今すぐ結依から離れてください」
「純ちゃんそんなに怒んないでよ
いつも可愛い結依ちゃん独り占めしてるんだから
今日くらい俺に譲ってくれてもいいんじゃない?」
結依は私達が話してる間も震えていて、
この人のクレイジー差加減が分かった
「嫌です 貴方に結依を譲るつもりなんてありません
失礼します」
結依を生徒会室から離れた所へ連れ出して
気持ちを落ち着かせて安心させなきゃ話すらできない…
なにも出来なかった…なんて無力なんだろう
あの様子だとあれが初めてとは思えない
何回か同じような事を…
そう考えた時には気が狂いそうなほど殺意が沸いた
「……結依気づけなくてごめん」
「…っ……純…私」
「無理に喋ろうとしないでいいよ
大体察しはついたから」
「……ごめん…なさい…」
いつも凛々しくて仕事をそつなくこなす結依の事しか
知らなくて…他にも辛いこと抱え込んでいるのかな…
私は頼りないのかな…
一番近くに居た筈なのに…結依
私と陽太は小学校からの付き合いで周りと
上手く馴染めなかった私に「大丈夫!俺が居るから」
彼の周りは常に人だかりが出来るほどで
最初は戸惑っていたけれど少しづつ友達が出来て
学校に行くのが楽しくなった
でも男子からは妙な視線を感じるようになって
その事を陽太に相談してすると
目の前には陽太の顔と天井があった
「結依ちゃん、それ本当に分からないで言ってるの?
結依ちゃんが可愛いからこうやって自分の物にしたい
めちゃくちゃにしたいって思っての行動だよ
まぁ、俺がそんなこと出来ないよう
これからは側に居るね結依ちゃん」
それからは陽太が私のすぐ近くに居るお陰で男子からの
目線は気にならなくなった
でも…
「結依ちゃんあいつらとなに話してたの?
仲良くするのは悪くないけど
仲良くし過ぎるのは駄目だからね」
抱き寄せられ頭は彼の肩に収まる
「…っ!!」
首筋に激痛が走る
その姿を見るなりにやける彼に私はなにも出来ずに居る…
ここでやめてと言ったら私はまた
一人に…なっちゃうのかな…
「えっ!結依ちゃん?そんなに痛かった?ごめんね…
もう大丈夫だよ」
さっきの態度とは違い優しく頭を撫でる
彼の事が心底嫌い
だけどそれよりも嫌いだったのは
従うことしか出来ない自分…
「陽太…側に居てくれてありがとう」
「なにどうしたの?急に
結依ちゃんとずっと一緒に居れたらいいなー…
なんてね」
「…何か悩んでるなら私話し聞くから」
「悩み?ん~、どうしたら結依ちゃんは俺の事
好きなってくれるか…悩んでるかな?」
「…私の事以外でだったら話し聞くから」
「…今は特にないかな…あったら言うねありがとう」
「…そうそろそろ帰ったら?心配してるんじゃない?」
「そうだね、じゃあ俺帰るね」
扉がしまったとたん全身が震えだす
嫌なのに…嫌と言ったら…そう考えてしまうと
なにも出来なくなってしまう
耐え続ける事しか出来ない自分が心底情けなくて
でもどうにかしたくて
未来の私に向けた日記を書いて現実逃避をする
未来の私は幸せですか?
未来の私は女子高で上手くやれていますか?
未来の私は__
日記に記して置けば何かあった時に役に立つ
これは被害届…被害証拠品?になるはず
そしてこれは過去の自分への戒めであり
励みになるはず…
そう信じて耐え抜いた
なのに
「どうして居るの…?」
「ん?そりゃ隣の男子校に通うからだけど?
ちょくちょく会うと思うから
また三年間よろしくね結依ちゃん」
背筋がゾッとしたのと同時にこの人からは
逃げられないのかもしれないという不安に駆られた
それから幾度となく連絡があったり待ち伏せされたり…
「ねぇ結衣、陽太くんが話したい事あるみたいだから
連絡入れるように言ってくれませんかって
言ってたんだけどなんかあったの?」
「…なんでもないよ」
ついには母にまで伝わってしまった
仕方なく連絡をすれば彼の家へと招かれ
「ねぇ結衣ちゃん
なんで無視するの?
それに高校だって女子高にしちゃうしさー…どうして?」
一歩下がれば一歩近づいて壁に追い込まれる
私また逃げるの…?中学の頃の恐れはもう無いのに
ここで反論しなきゃずっと私はこのまま…
「…そ、それは…陽太には感謝してるよ…
でも、もう私に関わらないでほしくて…避けてた
私…女子高で頑張りたいの…!だから陽太、私に
付きまとわないで…!」
怖くて陽太の顔を見れない
「…ふーん、変わったね結依ちゃん
でも結依ちゃんのお願いは聞けないかな…
交換条件なんてどうかな?
俺は今まで以上に連絡の回数を減らす代わりに
結依ちゃんは俺と月二回…週二回会う…
なんてどうかな?」
「…陽太は…どうしてそんなに私に執着するの…?
私は変わってなんかないよ…あの時から
陽太の事怖いって…逆らわないように言うこと
聞いてただけだもの…だからその交換条件はのめない」
「怖い…か結依ちゃんにそう思われてたんだ…
今までごめんね極力会わないようにするから」
一先ずこの話はこんな形で終わった
「純ごめんなさい…黙ってて」
「ううん…辛かったよね苦しかったよね
話してくれてありがとう私がそばにいます
立てますか?」
「えぇ、純ありがとう私のそばにいてくれて
生徒会室に戻るわよ!」