臥竜鳳雛ーガリョウホウスウー
突然ですが、皆様は自然の摂理というものを考えたことはありますでしょうか?
私はよく考えます。
『大地は母
土の栄養を貰って
木々が育ち、木々の栄養を貰って、草食動物が育つ
草食動物の命を貰い、肉食動物が生き
そして全ての生物が死んだとき、土に還る』
これだけなら、まるで平等
だけど、私や周りの人達、そして存在している事柄というものは
どうして こんなにも 不平等なんでしょうか。
私はよく考えてしまうのです。
こうも考えてしまう切っ掛けが常に目に留まるからかもしれません。
私の目の前にいる彼は
それはそれは立派な玉座というものに腰掛け
この世のものと思えない程の美貌を持ち
新しい命に喜び
純粋に穢れなく笑い
枯れた土を見ては悲痛な表情を浮かべ
己以外の周りを誇り
誰よりも強い彼は、まさに臥竜鳳雛
そんな彼を皆はこう呼ぶのです
『魔王』と――――
そんな魔王様の自己紹介から参りましょう
「…というわけですので、自己紹介をお願いいたします、魔王様」
長い脚を組んで偉そうに座っているこの馬鹿…ごほん!大変失礼しました。
玉座に綺麗に座ってらっしゃる魔王様にズズイッとまるでマイクでも近づけるように、インタビューを開始いたしましょうか!
「突撃!!隣の魔王様といったところです」
全く持って理解出来ていないのか、堂々とした態度はそのままに固まってしまわれました。
「…何、どういうことですか?」
「お名前から行きましょう。魔王様のお名前は?」
「えっ…何!?何するの!?恥ずかしいことする!?」
立派な玉座から慌てたように立ち上がった魔王様は、先ほどまでの堂々たる態度から一変。
身に纏った黒いマントで顔を隠す始末
「はぁ…駄目じゃないですか。これじゃ魔王アピール台無しですよ」
「ま…魔王アピールって…」
そうです、そうですよ
私は嘘なんてついておりません。
この方は確かに魔王なんです。
そう呼ばれていますし、現にこの方を恐れる方は数多くいらっしゃるのです。
ですが、肝心の魔王様といえば、こんなお人…
いずれ配下の魔物に素性がばれれば…大変なことになりかねません
いいえ、お強い魔王様のことですから、何かお考えもあるのでしょう…
ですが、やはり心配は拭いきれず…!!
まるで子供から目の離せない親気分でございます。
「3歳児でちゅかねぇ」
「え?」
しまった…!!!!
魔王様に対して何と失礼な事を…!!!
私としたことが…いくら本心が出たからと言って…!
「はっ!!?」
「っ!!?」
私の声にビックリして身体をびくつかせる魔王様はともかくとしまして
私の紹介を忘れておりました。
私は魔王様の身の回りの世話をしている者でございます。
勿論人間ではございません。
ヴァンパイアでございます。
名はシュトラと申します。
小さな蝙蝠にもなれますよ。
敵の追跡や、魔王様の愛玩動物、何でもござれ!!
「おーい、シュトラ君…?」
「身長は155cm、体重は50kg、これでも一応男なんです!!」
「え?何?誰に言ってるの、シュトラ君?」
「彼女とかはいませんが、そのうち出来たらいいなーとか思ってます!結構頼りがいはあると思いますよ!料理も掃除もやります!」
「ちょ、ちょっと・・・?」
ポンポンと魔王様が肩を叩いてきますが、ちょっと邪魔なので手を振り払っておきましょう。
「そ、そんな人を汚いものみたいに振り払わなくてもいいだろうに!?」
「…うるさいな。何で魔王様ここにいるんだっけ……あ、忘れてた」
最早泣きそうな魔王様の代わりに簡単に、このシュトラが魔王様の自己紹介をしちゃいまーす!
「えーと、魔王ことべリアル様!!年齢不明、住所は魔王城、職業は魔王、寛大な心を持っておられるお方です。頭脳明晰と言いたいですが、少し馬鹿です。身長は170cmぐらいありますかね。髪の色、目の色は魔族に相応しい黒でございます。得意な魔法は何でしたっけ、魔王様」
「えっ、魔法?ん…ああ、えっとね人気があるのはコインをパッて隠してどこにあるでしょーみたいなやつかなぁ」
「…得意な魔法はよく分からないそうです。ちなみにこの情けない性格は他の市民や配下の魔物・魔族には秘密☆にしておりますー!!」
「さりげなく自己紹介に馬鹿って入れてるよね、シュトラ君」
「ばれたか」
ああ、そうそう
魔王様が溺愛している人間がいました。
何年か前から魔王城に住む人間の少女です。
人間の分際で、魔王様をたぶらかす魔性の女…私の天敵ともいえる彼女の自己紹介は次のページに参りましょう