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第十一話「少女盗聴」

 住んでいるマンションの近くのハンバーガーファーストフード店は夕方の時刻でも客は少ない。

 ドライブスルーの方は判らないが店内はいつも客は疎らだ。

 店の前で立ち止まる私服の真愛。

 間違えても聖シルフェリーナの制服などでファーストフード店には入れないので今日は一旦マンションに帰ってからやって来たのだ。


「いるね」


 店内の隅に高校生らしい男子三人組を見つけると真愛は店内に向かう。

 コーヒーとチーズバーガーを頼むと彼等のテーブル席と仕切りを挟んだ背中合わせの席に腰を下ろした。

 座る時にさりげなく視線を向けた彼等の席に置かれたセットのハンバーガーはどれもまだ残っている、相手も店に来てそう時間は経っていなそうだ。

 胸ポケットからスマートフォンを取り出してどうでもいいニュースページを開き適当に送りながら、意識は男子三人組に向ける。


「……ーナが可愛くてさ」

「レベルが上がんないよな」

「知世ちゃんのポスターが可愛かった」

「うわ~ロリー」

「言うな!」


 アイドルやアニメキャラらしき真愛には訳の判らない話題が続く。

 三人組の話題はいつもその手の物。

 何度か聞いている会話の中で互いに呼んでいるかもしれないが一人として名前も知らない。

 話は続くが聞きたい話題が出てこない。

 焦れる資格がないのは十分にわかっているのに焦れてきた頃、


「そう言えばゲームオーバーがまたやったらしいぜ、虎狼速撃隊を解散させたらしい」


 一人の切り出した話題に真愛のスマートフォンを弄る手が止まる。

 虎狼速撃隊。

 前にゲームオーバーにした男がそんな事を言っていたのを思い出す。


「虎狼潰れたのかよ、人数集めて結構意気がってたからな、いい気味だぜ」

「まぁな……でもゲームオーバーの仕事を邪魔すると確実に殺られるぜ」

「殺り返してやるよ」

「出来るわけないだろっ?」


 盛り上がる三人組。

 真愛は黙って聞き続けた。

 目的はこれだった。

 三人組は結構な確率でこの店舗の同じ位置で色々と話している。 

 三人ともがイシュタルオンラインのプレイヤーで話を聞いている感じではやり込んでおり、特に集めた様々な情報を話している。

 もちろん話している内容の九割八分が無益な話であるが真愛のアバターであるミス・ゲームオーバーに三人はかなり強い興味があるらしく、自分でもわからないゲームオーバーの関係する情報を稀に得る事があるのだ。


「でもさぁ~」

「なんだよ?」

「ミス・ゲームオーバーは強いけど、神聖騎士隊のリオン・ルージュとどっちが強いかな?」

「リオン・ルージュかぁ」

「う~ん」


 悩み出す三人。

 リオン・ルージュ。

 神聖騎士隊というグループを率いる金髪の美少女騎士という事は知っているが詳しくは知らない、活動しているエリアが遠い為だ。


「リオン・ルージュが勝つよ、それには明白な理由がある」


 一人の少年の結論に背中合わせのテーブル席の真愛はもちろん反応しない。

 スマートフォンに夢中な少女を演じるが彼の話の続きに耳を傾ける。


「噂ではゲームオーバーはシークレットレアの恩恵を受けた銃を持っているらしいけど、リオン・ルージュはイシュタルオンライン上でただ一振りと言われている魔法の宝剣を持っている、威力が段違いらしいし扱うリオン・ルージュも凄腕で魔法まで使うらしいからね、対してゲームオーバーは今までの目撃例で魔法を使う所は一切確認されてない、キャラクターとしての総合力が違うんじゃないかな?」


 得意気に話す少年だったが、


「待てよ、リオン・ルージュは確かに強いかもしれないけどゲームオーバーだって強さは際立ってるさ、魔法の宝剣だって銃より射程距離がある訳はないしゲームオーバーだって今までターゲット自身や護衛についた一流の戦士や騎士を問題にしていない、リオン・ルージュだって……」


 他の少年の反論が始まり、三人が三人で議論を始めてしまう。

 彼らの話をこのまま聞いているのも一興だと思ったが、どんな答えが出ても所詮は仮に過ぎないし、リオン・ルージュと戦うなんて事態はおそらく起きないだろう。


「今日はもう情報は聞けそうにないな」


 元々、何か情報の切っ掛けでダメ元で行っている行動だ、大した落胆もせず真愛は三人に聞こえないように呟き、食べ終わったチーズバーガーの包み紙の乗ったトレイを持って立ち上がった。



 外に出る。

 駅前の街灯は明るく少女一人の帰宅でも大袈裟な心配は要らない。

 夕方かと思っていたが少年達の話を聞いているうちに結構な時間が経ったらしく空には幾つもの星が煌めき始めていた。

 そんな空を見上げながら、


「神聖騎士リオン・ルージュか、暗殺者の私とは大違いだな、どんなプレイヤーでどんな性格なんだろう? 女の子だよね?」


 真愛は興味の沸き始めた自分以上か、匹敵する有名キャラクターに勝手な想像を働かせはじめるのだった。



                    続く


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