episode2-1
謎の壁のような物が出た次の日、逢坂はあれが何だったのかを知るためにこの八雲学園の学園長であり、彼に指輪をくれた雨宮洋介がいる学園長室前に立っていた。
コンコンッとノックをすると、
「どうぞ」
と、返事が返ってきた。
「失礼します」
と言い扉を開けると、高級そうな机や棚などが置かれた部屋に雨宮はこれまた高そうな椅子に座っていた。雨宮は初めて会った時と同じように、柔和な笑みを浮かべていた。
「ん?逢坂くんか、どうしたんだい?」
と言いつつ、ソファーに座ることを促され、逢坂がソファーに座ると雨宮も向かいのソファーに座る。
「それで、今日はどうしたんだい?」
「実は、昨日ちょっと事故にあいそうだったんですけど、左手からなんか壁みたいなのが出てきて助かったんですけど、その時指輪が少し光っていたような気がしたんです。何か心あたりはありませんか?」
「ちょっと、見せてくれないかな?」
と言われ、左手の指輪を外し、雨宮に渡す。しばらく指輪をじーっと見つめ、ありがとうといって指輪を返した。
「その指輪は、もしかしたら精霊機なのかもしれないね」
「あのー、精霊機ってなんですか?」
「逢坂くんは、魔法を生み出すメカニズムを知っているかい?」
「い、いいえ・・・・・・」
「じゃあ、そこから説明するよ。本来、魔法とは使用者の体内の中にある魔力をイメージにより変質させ、それを具現化することで魔法として初めて成立するんだ」
へえーーと思いながら逢坂は雨宮の話に集中する。
「しかし、たまに魔法ではできないとされる現象、力を使う者がいるんだよ」
雨宮はお茶を一口飲み、
「その者達は精霊使いと言われている。」
「精霊使い、ですか」
「そう。精霊使いはこの世界に存在する精霊に選ばれた者がなることができ、精霊使いは精霊が司る力を使うことができるんだ」
「じゃあ、俺も精霊使いなんですか?」
と聞くと、雨宮は首を横に振った。
「すまないが、詳しいことはわからないんだ」
「そう、ですか・・・・・・」
少しの沈黙の後、雨宮が話始めた。
「続きを説明するよ。精霊使いは魔法使いと違い、魔力を精霊に通すことで精霊の力が使えるわけだが、精霊は精霊使いから魔力をもらうことで生きていくことができるんだ」
雨宮は続けて言う。
「そして、精霊使いが死んだ場合は精霊は自分の好みの魔力を持つ者のもとに行くんだが、たまに人に宿らず、物に宿ることがあるんだ。その精霊が宿ったものを精霊機と呼んでいるんだ。まあ、精霊機を使うのにも多少の適正はいるようだけどね」
雨宮は逢坂の指輪に一度視線を落とし、また逢坂の目を見る。
「その指輪に宿っているのは『壁』を司る精霊かな?なんにせよ、適正があってよかったね」
逢坂は左手の指輪をみる。
「(俺に、適正がある・・・・・・!!)」
何か自分に特別な力ができたみたいでつい内心ちょっとしたお祭り騒ぎになっていると学園長室のスピーカーからHRの始まる5分前を表すチャイムが響いた。
「やばっ、すいません。HRが始まるので行きます!」
「ああ、行ってきなさい。」
「色々ありがとうございました!失礼します!」
と言い、逢坂は学園長室を後にし、1-cへと走って行った。