episode1-1
八雲学園------それは日本の10の魔法学園の1つでその広さは5番目であるが、普通の高校の3~4倍ほどの大きさをもつ。またここは他の学園よりも植物が多く植えられており、中でも学園の入り口から10メートほどの道の両脇に植えられた『永久桜』と呼ばれる、1年中作咲き続けるといわれる不思議な花を目の前に逢坂煉は感嘆の息を飲んでいた。
「これが永久桜かー」
と一人ごとをこぼしながら見上げていると、そよ風が吹き、枝を揺らし、花と花の間から日の光が差し込み思わず左手で目を守る。
そうすると左手の人差し指につけてある指輪が光を反射して輝いていた。その時、逢坂はふと3月のあの日のことを思いだした。
----2013年3月,逢坂の家----
「行きます!いや、行かせてください!」
逢坂は自分の前に座るスーツ姿の男、雨宮洋介をじっと見据えて言う。父が残しためったにない機会。行方知らずの父からの贈り物。これを無駄にしたくない。そんな気持ちを抱きながら。
「そうか」
と一言つぶやいていた。彼の表情にはさっきまでの柔和な笑みに加えどこかほっとした様子も見て取れた。
「では、必要なものを渡さないとね」
というと彼は自分のバックから10数枚の紙を取り出し、それを逢坂に渡した。
「これが入学に必要な書類だよ。重要なものだから必ず目を通しておいてくれ。あと、色々お金のかかることがあると思うけど、私がどうにかするから心配ないよ。」
「何から何までありがとうございます!」
至れりつくせりだなーと思いながら感謝の言葉を述べる。
「ああ、いいんだよこんなことは」
と言っていると突然雨宮のポケットから電子音が鳴りだし、失礼と一言伝え電話を始めた。
「もしもし・・・・・・。ああ、分かった。すぐ行く。」
それだけ言うとピッと通話を切り、
「すまないがどうやら私はもう行かなくてはならないようだよ。下の運転手から催促されてしまったよ。」
といい、身支度を済ませ、帰り際に
「そうだ、大事なことを忘れていた。」
と彼はバックから指輪を取り出し、それを逢坂に渡した。
「あのー、これは?」
「これは君の父親の指輪だよ。これを君に渡してくれと頼まれたいたんだ。」
そういうと、玄関の扉を開け最後に
「それでは、また学園で会おう。」
といいパタンッと扉がとじた。
逢坂はしばらくジッと指輪を見ていた・・・・・・。
一人、1カ月前のことを振り返っていると、どこからかチャイムの音が鳴り響いてきた。
その音を聞き、1回深呼吸をすると逢坂は入学式が行われるホールへと歩いて行った。