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最速の女神たち   作者: YASSI
進化する世界
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HOT LINE

「ああ~疲れたわ」


 愛華がトレーラーに入ると、先に戻っていたシャルロッタが、面倒くさそうに皮つなぎを脱ぎすて、慌ただしくスマートフォンを取り出していた。


 愛華もつなぎを脱いで、ハンガーに吊るすと、自分のスマートフォンを手にした。


 画面はメッセージが届いていることを知らせている。


「紗季ちゃん……」


 思わず口にして、慌ててシャルロッタの様子を窺う。どうやらシャルロッタも自分のスマフォ画面に夢中で、気づいていないようだ。ほっとする。


 でも、なんだか顔から刺々しさが消えているみたい。なにを見てるんだろう?


 プライバシーを探るのは良くない。特に今の状況は、話しかけるのも(はばか)れる。

 愛華も自分のスマフォ画面に目をおとした。



  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

     【今日】


紗季:

すごいね愛華!インターネットで公式練習の記録見たよ。

よく頑張ったゾ(≧∇≦)b



 きっとずっとパソコンの前で見ててくれたのだろう。愛華はすぐに返信を打つ。


愛華:

ありがとう。でもシャルロッタさんはホントにすごいよ。スターシアさんも全力で走ってたみたいだけど、ちょっと別次元って感じ(泣)

 

 

 紗季からの返信は、少し時間がかかった。

 

 

 


紗季:

本当にすごいね、シャルロッタさん。でも愛華も行けるよ!予選、頑張れ!


愛華:

やっぱりシャルロッタさんにはかなわないよ……っていうか、こんなふうで本当にいいのかな?わたし、シャルロッタさんと仲良く走りたいのに……



紗季:

気持ちはすごくわかるよ。シャルロッタさんも、本当は愛華と走りたいと思ってるんじゃないかな。でも彼女は、あういう人だから、愛華のこと認めているからこそ、本気で向かって来てくれないと納得できないんだと思うの。


愛華:

それはわかっているけど、今、そんなことにこだわっている状況じゃないんだけど……本当にいいのかな?。だってわたしよりシャルロッタさんの方が速いなんてわかりきっているんだよ


紗季:

よくわからないけど、シャルロッタさんはそう思っていないんじゃないかな?愛華はもっともっと速くなる、エレーナさんも認めている、だから本当に自分の方がエースに相応しいのか、自分自身にはっきりさせたいって思ってると思うの。めんどうだけど、そういう人だから。


愛華:

そうだね、あの人、自分が一番!って言ってても、意外と他人の目気にしてるところあるから。他人の目って言うか、本当は自分に厳しいんだなって、近頃思うようになった。


紗季:

大きなこと言って自分を追い込むタイプかな?でもみんなが思ってるより、ずっと純粋なんだと思う。理解してあげて。


愛華:

うん、わかってる。ありがとう。こんな相談してごめんね。エレーナさんもスターシアさんも、今回全然頼りならないし、ラニーニちゃんに相談するわけにもいかないから、すごく不安だったけど、紗季がいてくれてよかった。本当にありがとう


紗季:

いつでもお安いご用。私でも役に立てたなら、すごくうれしい。


愛華:

でも紗季もすごいね。レースしたことないのに、シャルロッタさんの気持ち、わたしよりわかってるみたい



 

 

 なぜか今日はいつもより返信が遅いと感じていたが、ここでまた、返信までしばらく間があった。ちょっとしてから着信を知らせる音がした。



紗季:

それはいつも勉強してるから。



 日本はもう結構遅い時間だ。資格取ろうと勉強してる紗季にあまり甘えてられない。愛華はおやすみスタンプを送って会話を終えた。




  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

     【今日】


シャルロッタ:

どう?あたしの走り、見てくれた?


サキ:

シャルロッタさん、すごい!明日は復帰いきなりのポールポジション、確実だね。


シャルロッタ:

当然よ!でもアイカにはもう少しがんばって欲しかったわね。あいつの魔力はあんなものじゃないはずよ!


 

 …………

 

 

シャルロッタ:

ちょっとサキ、どうしたの!?スルーしないで


サキ:

ごめんね、ちょっとお花摘みに。

でもアイカも一生懸命頑張ってると思うけど。シャルロッタさんの役に立ちたいって思ってるはずよ。シャルロッタさんも本当はわかっているでしょ?


シャルロッタ:

わかってるわよ!でも、アイカはもっともっと速くなるわ。


サキ:

シャルロッタさんが認めるんだから本物だね


シャルロッタ:

あたしじゃなくて認めてるのはエレーナ様!


サキ:

もしかしてヤキモチ?


シャルロッタ:

バカなこと言わないで!下僕にヤキモチなんて妬くわけないでしょ!


サキ:

じゃあどうして一緒に走らなかったの?なんかケンカしてるみたい。


シャルロッタ:

べつにケンカなんてしてないわよ。ただ、あいつの本気の本気が見てみたいの。誰かのアシストとしての実力じゃなくて、あたしがいない間に、どれくらいエースとしての魔力を身につけたか、肌で感じたいだけよ。


サキ:

それなら練習とかでもわかるんじゃない?


シャルロッタ:

練習じゃあわからないわ。あいつ、猫かぶってなかなか魔力を解放しないから。


サキ:

そういうの私にはよくわからないけど、今はチームワークを優先する方が大切なんじゃないかな?間違ってたら、ごめんね。素人のくせに生意気言って。


シャルロッタ:

いいの。サキの言ってることは正しいわ。あたしもわかってる。わかってるけど、でも、あたしが納得できないの!どっちがストロベリーナイツのエースとして本当に相応しいか、実際に競走して確かめるしかできないの!


サキ:

そっか。私なんかじゃよくわからないけど、きっと仕方ないことなんだね。


シャルロッタ:

あんたの友だちなのに、こんなことなって、ごめん。あたし、アイカに嫌われてるかな?サキも嫌いになったよね?


サキ:

大丈夫、二人ともずっと友だちよ。アイカもシャルロッタさんを大好きだし、すごく尊敬してるから。だからあなたも正直に言って。シャルロッタさんはアイカが好き?彼女を認めてる?


シャルロッタ:

はっきり言って、アイカはまだあたしのレベルには達していないわね。でも、あいつは絶対に、将来あたしの最強のライバルになるわ。強いやつは大好きよ!あたしを本気にさせるやつなんて、そんなにいないんだから。


シャルロッタ:

わかってると思うけど、このことは絶対にアイカに言わないでよ!


 

 

 紗季には、シャルロッタから最後に送られてきたアニメキャラのスタンプの意味はよくわからなかったが、適当なスタンプを送ってため息をついた。



 なんですぐ傍にいるのに、わざわざ日本にいる私が伝えなきゃいけないの?



 それにしても、同時に二人と会話するのはとっても疲れる。しかもその相手が、今、世界中が注目している二人とあっては……。


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― 新着の感想 ―
[一言] 側から見ると凄い事! 世界でも指折りの選手のメンタルを支えてる、しかも2人も!!!!!
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