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最速の女神たち   作者: YASSI
進化する世界
243/398

変身!ストロベリー☆プリキュラ

 シャルロッタの開幕三連勝を許したラニーニだが、スペインGPの結果には納得している。

 スタートからダッシュして逃げきる作戦が失敗し、一時集団後方まで脱落しても、リンダの奮戦で再び追い上げ、シャルロッタが表彰式でぐったりするまで追い込んだことは、ブルーストライプスチームとしても、満足はできなくても実りあるレースだった。

 かと言って、もう少しレースが長ければ勝てたとか、もう一度やったら勝てるなどという甘い希望は、ライダーもアレクセイ監督も抱いていない。


 シャルロッタは、たった一人でも実力の差を見せつけ、ラニーニとナオミから逃げきった。

 これからもシャルロッタの強さは変わらない。今回追い込めたのは、リンダの奮戦をスターシアも愛華も予想していなかったからだ。

 今後は彼女たちも警戒を強め、これまで以上につけ入る隙は少なくなるだろう。他のチームもこのままでは終わらない。

 フレデリカはチームとして動いていた。ハンナなら、彼女の特異な走りも生かせるはずだ。

 途中、バレンティーナがあっさり譲った理由はわからない。勝ちたいという執念みたいな闘志は変わらず感じるのだが、なんとなく雰囲気が変わった気がした。いずれにせよ、バイクの性能的には最も高い強敵だ。

 この二チームは、ブルーストライプスだけでなく、ストロベリーナイツにとっても強力なライバルだ。

 そこにこそ、ラニーニが勝てるチャンスがある。

 ライダーの個性という面では一番平凡なエースだが、それだけ確実なライダーといえるのだ。


 

 

「なんなんですか、その格好は?」

 レース翌日、愛華はさっそく同室のシャルロッタを無理矢理起こし、スターシアも起こそうと彼女の部屋に入って唖然とした。

「あら?動きやすい服装ならなんでもいいって言ったのは、アイカちゃんじゃないですか?」

 確かに、トレーニングウェアを持ってないとか言い訳して朝練をサボろうとするスターシアに、動ける服ならなんでもいいと言ったのは愛華だ。

 愛華もチームから支給されたウインドブレカーを着ている。当然スターシアさんもあるはずだ。そんなのは早起きしたくない言い訳で、スターシアさんをベッドから引き摺り出すのが最大の難関だと思っていた。


 しかし、とっくに着替えて愛華とシャルロッタを待っていたのは、アニメのコスプレをしたスターシアだった。それも、シャルロッタがよく着ているようなゴスロリ衣装に似てなくもないが、もっと鮮やかな真っ赤……


「愛と正義のスイーツ、ストロベリープリキュラ!」


 金色の髪をキラキラとなびかせ回転すると、ビシッとポーズを決めるスターシア。


 そう、愛華も子どもの頃見ていた、日曜の朝の女児向けアニメ、『プリキュラ』のコスチュームだ。


 日本人ではあり得ない長い手脚と本物の金色髪は、アニメも顔負けのリアルファンタジックヒロインだ。

 しかし、ストロベリーナイツはコスプレチームではない!


「かっこいい……」

 愛華に無理矢理起こされ連れて来られたシャルロッタが、いつのまにか眠むそうにしていた目をぱっちり開いてつぶやく。いや、まだ夢の中にいると思っているのかも知れない。

「シャルロッタさん、あなたも伝説のストロベリープリキュラに選ばれたのです。さあ、変身してください」

 スターシアは同じようなコスチュームをシャルロッタに手渡した。

 トレーニングウェアはないなんて言ってたくせに、どうしてプリキュラのコスチュームは何着も持っているの?


「これは苺のスイーツ分子が、愛と正義の心に反応して、プリキュラに変身させるのです。シャルロッタさん、着替える時大きな声で『キュラミルフィーユ!』と言ってください」

「今『着替える時』って言いましたよね!?」

 一筋縄ではいかないと思っていたが、朝からまさかのコスチュームプレイに、愛華はつっ込まずにいられない。

「なんのことですか?」

「まあどうでもいいんですけど、シャルロッタさんがミルフィーユなら、スターシアさんはなんですか?」

 ほんとにどうでもいいけど、一応訊いてみる。

「私はキュラショートケーキ」

「なんかどっちも赤で、ちがいがわからないんですけど?」

 プリキュラならそれぞれのカラーがあるはずだ。ストロベリープリキュラは基本苺だから赤しかないのだろうか?

「心配いりません。アイカちゃんは主人公なので、特別なカラーを用意してあります」

 主人公だから特別、と聞いたシャルロッタに、妬ましそうに睨まれた。

 特別と言われても、ほんとにどうでもいい。

「いえいえ、わたしは普通にウインドブレカーで大丈夫です」

 小さい頃は、よくプリキュラごっこして遊んだけど、愛華はもう子どもじゃない。

「え~ぇ、せっかく可愛いピンク用意したのに~ぃ、ぷーぅ」

 可愛い仕草で誤魔化そうとしてもダメです。でも、拗ねた顔も超絶可愛いから困ってしまう。

「特別って、ピンクなんですね。因みに、わたしはなんのスイーツなんですか?」

 反則の拗ね顔に、つい尋ねてしまった。スターシアは、ぱっと明るく顔を輝かせ、


「アイカちゃんは、『キュラ大福』です!」


「プッ……きゅらだいふく、だって」

 シャルロッタさんにまで笑われた!?

 スターシアさんがショートケーキで、シャルロッタさんがミルフィーユ、それでわたしが『キュラ大福』って……、確かに苺大福は大好きですけど、なんかおしゃれじゃない。なんにしてもそんな恥ずかしい格好しませんけど。友だちに知られたら、智佳なんか絶対大笑いする!


「変なカッコしてないで、早く着替えてください!」

「ストロベリープリキュラ、キュラミルフィーーーっユ!」

「シャルロッタさんは着替えなくていいです!」

 愛華が振り返ると、シャルロッタはすでに着替え、鏡に向かって生き生きとした顔でポーズを決めていた。


「もう……まじめにやってください」

 だいたいシャルロッタさんは中二病なんだから、小さな女の子向けアニメとか、ちがうんじゃないですか?ほんとどうでもいいですけど。

「そう言うな、アイカ。おまえはよくやってくれた」

 朝練前に疲れてつぶやく愛華を、エレーナが励ましてくれる。

「トレーニング嫌いのあの二人が、あんなに楽しそうに取り組もうとしているんだ、格好なんてどうでもいいじゃないか。それにだ、いつもスターシアが観ているアニメ、私も何度か観せられたが、あれを真似するのは結構ハードなトレーニングになるぞ」


 大人の男性は知らない方も多いと思うが、プリキュラは毎回走ったりジャンプしたり、パンチしたりキックしたり、怪物の攻撃受けて壁や地面に叩きつけられたりと、めちゃハードな試練を仲間と力を合わせて乗り越えていく。

 単調な体力トレーニングは嫌いな二人でも、プリキュラになりきれば進んで取り組んでくれるかもしれない。


「わかりました。格好はなんでもいいです。早く行きましょう」

「その前にキュラ大福も、変身してください」

 一緒にいるのも恥ずかしいが、シャルロッタさんとスターシアさんがトレーニングに励んでくれるなら我慢しようと腹を括った愛華に、スターシアとシャルロッタがピンクのコスチュームを持って近づいていた。

「わっ、なにするんですか!?やめてください!エレーナさん助けてください」


 愛華は、スターシアとシャルロッタによって、無理矢理キュラ大福に変身させられた……。




───────


第3戦終了時点でのシリーズランキングと獲得ポイント


1シャルロッタ・デ・フェリーニ(ITA)ストロベリーナイツ スミホーイ 75p


2 ラニーニ・ルッキネリ(ITA)ブルーストライプス ジュリエッタ 52p


3 アイカ・カワイ(JPN)ストロベリーナイツ スミホーイ 46p


4 ナオミ・サントス(ESP)ブルーストライプス ジュリエッタ 35p


5 バレンティーナ・マッキ(ITA)team VALE ヤマダ 34p


6 フレデリカ・スペンスキー(USA) リヒターレーシング LMSヤマダ 29p


7 アナスタシア・オゴロワ(RUS)ストロベリーナイツ スミホーイ 27p


8 コトネ・タナカ(JPN)リヒターレーシング LMSヤマダ 26p


9 ハンナ・リヒター(GAR)リヒターレーシング LMSヤマダ 19p


10 ケリー・ロバート (USA)team VALE ヤマダ 18p


11 リンダ・アンダーソン(USA)ブルーストライプス ジュリエッタ 17p


12 アンジェラ・ニエト(ESP)team VALE ヤマダ 15p


13 マリアローザ・アラゴネス(ITA)team VALE ヤマダ 11p


14 エバァー・ドルフィンガー(GAR)アルテミス LMSジュリエッタ 9p


15 アンナ・マンク(GAR)アルテミス LMSジュリエッタ 4p


16 ジョセフィン・ロレンツォ(ESP)アルテミス LMSジュリエッタ 2p


17 ソフィア・マルチネス (ESP) アフロデーテ ジュリエッタ 1p



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― 新着の感想 ―
[一言] キュラ大福は見てみたい。
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