シャルのまほう
土曜日、予選はランキング10位、つまりラスト10人でスタートしたスターシアが、二日間の練習走行を通じてベストタイムの暫定トップに立つと、そのあとのハンナ、ケリーは届かず、果敢に攻めたアンジェラの最終コーナー手前の13コーナー立ち上がりでハイサイド転倒のアクシデントにより、予選は一時中断された。
慣れないコースマーシャルのせいもあるが、自力で動けないアンジェラの収容とコース上に撒き散らされたマシンとその破片の撤去とガソリンやオイル、砂などの処理に予想以上の時間が掛かり、すでにコース上に出ていたナオミは一旦ピットに戻り、もう一度準備をしなおさなければならなかった。
トップクラスのライダーならこれくらいで集中力を乱すことはないはずだが、今季のMotoミニモ予選は100分の1秒差でグリッドが変わってしまうほど各ライダーの実力は伯仲している。おまけに只でさえ繊細なMotoミニモのマシンに、さらに予選用のシビアなセッティングが施されているのだから、メカニックたちは念入りに調整したマシンのウォームアップをもう一度やり直し、いつ再開されてもいいように気を使わなければならなかった。
そのせいかは不明だが、優勝候補のバレンティーナとラニーニのタイムも今一つ奮わず、愛華がタイムアタックに入る時点で暫定グリッドは、スターシアがトップのまま。2番手はフレデリカ、3番手リンダ、4番手のマリアローザまで前回10位以下、つまり中断される前にタイムトライアルに挑んだライダーがフロントローに並んでいる状況になっていた。この時点でプライベートチーム扱いのフレデリカを除いて、ワークスのエースライダーは5番手のバレンティーナが最高だ。
そして愛華もまた、6番手以降のケリー、ハンナ、ラニーニ、ナオミに次ぐ10番手タイムに終わった。自分ではまずまずの走りをしたつもりだったが、思ったほどタイムが縮まなかったことに、少し落ち込む。
ここまで中断前と中断後の明暗がはっきりと分かれ、しかもスタート順が遅いほどタイムが伸び悩んでいる状況から、コースコンディションが大きく変わっているのでは?最初からやり直すのが公平では?との声があがり始めた中、シャルロッタがそれらの言い訳を黙らせるトップタイムを叩き出した。
スターシアのタイムをコンマ5秒上回る驚愕のコースレコードだ。これには愛華だけでなく、バレンティーナまでもが目を丸くして驚いた。
去年のインディアナポリスGPから11戦連続ポールポジションとしたシャルロッタは、群がる報道陣を前に、「これであたしの魔力が、ラニーニやアイカたちとは桁ちがいなのがわかったでしょ?」とタンクに描かれた魔方陣を指し示して鼻高々だ。確かにラニーニもアイカも、魔力などないので勝負にならない。
シャルロッタとスターシアの一番二番という予選結果に、今回もストロベリーナイツ優位という見方のある一方、愛華のスタートグリッドとスタートにハンディのあるスターシアでは、前回のようにスタートダッシュから独走での逃げ切りは難しいと見る意見もある。
ライバルチームにすれば、ここで連勝を許せばますますシャルロッタが調子づくのが目に見えているだけに、なんとしてもここで一勝をあげておきたいところだ。
意外にもストロベリーナイツのファンの中にも、シャルロッタの独走を望んでいない人たちも少なくない。やはり独走より競り合いの方が、レースとしては面白いに決まっている。
アルゼンチンGP予選結果
PP シャルロッタ・デ・フェリーニ(ITA)ストロベリーナイツ スミホーイ
1:42.632
2 アナスタシア・オゴロワ(RUS)ストロベリーナイツ スミホーイ
1:43.129
3 フレデリカ・スペンスキー(USA) リヒターレーシング LMSヤマダ
1:43.133
4 リンダ・アンダーソン(USA)ブルーストライプス ジュリエッタ
1:43.301
5 マリアローザ・アラゴネス(ITA)team VALE ヤマダ
1:43.356
6 バレンティーナ・マッキ(ITA)team VALE ヤマダ
1:43.411
7 ケリー・ロバート (USA)team VALE ヤマダ
1:43.467
8 ハンナ・リヒター(GAR)リヒターレーシング LMSヤマダ
1:43.489
9 ラニーニ・ルッキネリ(ITA)ブルーストライプス ジュリエッタ
1:43.500
10 アイカ・カワイ(JPN)ストロベリーナイツ スミホーイ
1:43.523
11 ナオミ・サントス(ESP)ブルーストライプス ジュリエッタ
1:43.575
12 コトネ・タナカ(JPN)リヒターレーシング LMSヤマダ
1:43.623
13 ジョセフィン・ロレンツォ(ESP)アルテミス LMSジュリエッタ
1:44.653
14 アンナ・マンク(GAR)アルテミス LMSジュリエッタ
1:44.815
15 エバァー・ドルフィンガー(GAR)アルテミス LMSジュリエッタ
1:44.905
16 ソフィア・マルチネス(ESP) アフロデーテ ジュリエッタ
1:45:346
17 オリビア・ジャック(FRA) プリンセスキャット ジュリエッタ
1:45.487
18 クリスチーヌ・サロン(FRA) プリンセスキャット ジュリエッタ
1:45.678
19 カルロサ・ラバード (VEN) アフロデーテ ジュリエッタ
1:45.865
20 ドミニカ・サロン(FRA) プリンセスキャット ジュリエッタ
1:46.332
以下略




