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最速の女神たち   作者: YASSI
最強のチーム
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普通の女子高生がレーサーやってみた

『モトライブ』の収録は、Motoミニモに参戦する三メーカー協力で行われる事となった。


 スミホーイからは、シャルロッタ、愛華、スターシアの三人。


 ジュリエッタからは、ラニーニとナオミ。


 ヤマダからは、ワークスライダーの参加は見合わされたが、エンジン供給する事になったLMSからハンナと琴音、それと昨シーズン、シャルロッタに匹敵する才能と話題になったが、現在ワークスのシートが保留中のフレデリカが派遣された。



 収録の初日、愛華たちは朝から鈴鹿に入り、昨年使っていたレースマシン、スミホーイSu-35と一緒に、急遽日本にやって来たセルゲイおじさんとミーシャくんと再会。

 ジュリエッタもワークスのメカニックが二人来ていた。こちらもバイクは昨年のモデルだが、ラニーニのマシンには、チャンピオンゼッケンが貼られている。


 ミーシャくんとの再会の挨拶もそこそこに、朝一番のヤマダの走行枠で、軽く走らさせてもらう。


 久しぶりに乗るレーシングマシンは、低い気温もあって「こんなに乗り難かった?」と戸惑ったが、30分ほど走らせれていると体も温まり、感覚を思い出してくる。やっぱりバイクは気持ちいい。

 あらためて自分がすっかりライダーになっているのを、実感した。




 愛華たちが本コースでウォームアップしている間、白百合の生徒たちは教習センターで本職の指導教官から基本的なバイクの操作方法を教わる。はじめは自転車に乗れる人ならすぐに乗れるスクータータイプ。車両は三メーカーから貸し出されたものだ。


 ヤマダのスクーターは、街でよく見かける可愛いらしいモデル。由加里は最初、愛華と同じスミホーイと決めていたが、可愛いらしさに釣られてつい跨がっていた。


 ジュリエッタは、イタリアンらしくエキゾチックで先鋭的なデザインのスクーター。智佳は真っ先に気に入ったようだ。


 スミホーイのスクーターは、如何にもロシアっぽさが滲み出ていて、無骨でちょっと古くさく見えるが、紗季や由美みたいなお嬢様が乗ると、それが逆にクラシカルでおしゃれに見えるから不思議だ。


 みんなそれぞれお気に入りのスクーターに交代で乗って、漕がなくても進む二輪車に感激する。

 

 




「だからっ!なんて言ったらわかってくれるのよ!曲がりたい方向にスーっていって、ガバッてすればいいのよ」

 鈴鹿サーキット内にある教習コースに、シャルロッタのイラついた声が響く。彼女はスポーツタイプの原付に跨がった紗季に、曲がり方を教えている最中だ。GP史上最高の天才と言われる彼女だが、指導者としてはまったく不向きなようだ。最初からわかっていたが……。


「ああして、こうして、ふわっとしたらスーって寝かして、ぐっときたらガバッて開けるの!」

 初心者には、何を言っているのか解らない。初心者でなくても理解出来ないだろう。感覚的な表現ばかりで具体的な言葉が何もない。



 本コースで体とバイクの慣らしを終えた愛華たちが教習コースにやって来て、まずはシャルロッタがいきなりのデモ走行で、原付スポーツバイクを跳んだり跳ねたり(僅かな段差を利用して本当に跳ぶのだから、愛華も驚いた)、くるくる回して、まるでバイクと一体になった一つの生き物のように踊ってみせると、女子高生の羨望を一身に受けた。

 これこそ、シャルロッタの待ち望んだ瞬間だった。


 それから、スクーターにあきたらない子たちに、ミッションの付いたスポーツタイプのバイクが用意され、いよいよトップライダーによるバイク教室が始まった。まだ、そこまで望まない子たちは、スクーターを少し乗っては友だちとわいわい歓んでいる。


 もともとオートバイの免許を取ろうと思っていた紗季は、不安があったものの思いきってスポーツタイプのバイクにチャレンジ。シャルロッタみたいにはいかなくても、もっと自由に操りたい。


 しかし、最初はシャルロッタの人間離れしたテクニックに魅せられた女子高生たちも、いざ教習に入ったら、みんな解りやすく説明してくれるハンナやスターシア、愛華の方に移っていってしまった。


 智佳と由加里、それとバスケ部二年の璃子が、愛華とラニーニと琴音のところに集まってバイクの乗り方を教わっている。


 由美は、何気に生徒のふりした亜理沙ちゃんと一緒に、スターシアとハンナとナオミから教わっていた。(ヘルメットをかぶって、ライディングウェアに身を包んだ亜理沙ちゃんは、生徒と言われてもまったく違和感がない。むしろ先生と言われても信じてもらえない気がする)


 つまり、紗季はシャルロッタから逃げ遅れて、意味不明な指導に耐えなくてはならなくなっていたのだ。紗季たちと初対面のフレデリカも、シャルロッタが教える様子をじっと眺めている。

 スクーターに乗る子たちも、シャルロッタに近づこうとはしない。


 天才二人に付きっきりで見つめられて、バイク初体験で只でさえ緊張しているのに、もう生きた心地がしない。おまけに一人は、よくわからない言葉を使って、ものすごくハイレベルなことを要求している。


 因みに、音大受験を控えた美穂は、絶対に怪我できないので今回は見学だけだ。


 さすがに絵的に不味いと思ったディレクターの高橋は、進行役の中井と相談して、二つのグループに分ける事にした。


 意図した訳ではないが、ちょうど愛華、ラニーニ、琴音のグループと、スターシア、ハンナ、ナオミのグループに分かれている。

 愛華のグループは若くてがんばり屋タイプ、スターシアのグループはベテランで理論派タイプという感じだろうか。

 愛華のグループにフレデリカ、スターシアのグループにシャルロッタを入れても、実力的にもランキング的にも、ほぼバランスが保てる。この二人は……、まあ、こういう人もいるんだという見本ということで。


 生徒の側も、紗季をスターシアのグループに入れれば、ちょうど三人ずつになって、三メーカーのバイクを均等に振り分けられる。そして面白いのは、体育会系の子ががんばり屋さんから教わり、文化系の子が理論派から教わるという、興味深いグループ分けになる。

 教室の締めくくりに、生徒たちにチーム対抗レースをしてもらうのも面白そうだ。


 対抗レースについて、YRCの海老沢に相談してみると、彼も大いに興味を示し、サーキット側にお願いしてくれた。しかしサーキット側としては、ライセンスのない者に公認コースでレースさせる事は出来ないと許可してくれない。そこで海老沢は、親会社のヤマダ技研代表取締役の伊藤社長に直接談判。


 伊藤氏曰く、公認コースである以上、FIA(国際自動車連盟)やFIM(国際モーターサイクルリズム連盟)の規則に従わなくてはならないが、裏ワザがあるそうだ。彼の方から、サーキットの事務局に掛け合ってくれる事になった。



 シャルロッタは不満そうだったが、二つのグループに分けると中井がみんなに、チーム対抗レースをする事を伝えた。

 それを聞いてシャルロッタも、俄然闘志を燃え上がらせる。愛華たち先生役も、生徒も、やる気が急上昇。スクーターに乗って歓んでいた他の子たちも、自分たちの教習もほどほどに、愛華派対スターシア派、王子様(智佳)派対お蝶夫人(由美)派に分かれて、練習からきゃーぁきゃーぁと盛り上がりだした。テストで鈴鹿に来ていたヤマダワークスのケリーやMotoGPクラスのライダーたちまで覗きにきて、興味深そうに眺めていた。


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