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Truth


「何してんのよ姉さん!!」


激昂している姉さんに怒鳴ってしまうのはいくらなんでもまずかったのではないか、と思った。


だが、もう遅かった。激昂した姉さんは更に機嫌を悪くしたらしく、私を突き飛ばしてきた。


何だか悲しくなってきた。優しかったいつもの姉さんがいなくなったようで。


「香奈まで何よ。大きなお世話なのよ。私は一人で考えたい。それが何よ寄生虫みたいにベタベタくっついてきて!!『悩み事があるなら相談に乗ります』!?偽善者ぶってんじゃないわよ!!馬鹿にしないで!!」


おそらく、翼が気を遣ってくれたのだろう。それをこの女は踏みにじった。


「何様のつもりか知りませんが私の友達を馬鹿にしないでもらえませんか?翼は優しいんです。あなた一体翼になにをしたんですか?」


「なぜ他人行儀なのよ。」


「私の知っている姉さんはもういないんだと思ったからです。」


「あなた、確かに言っていたでしょう。『私の器を奪わないで下さい。』と。まさしくあなたは私の器を奪おうとしている。」


「人の揚げ足を取るのが趣味なのですか。全くもって下劣な趣味でございます。私は知ってもいないのに勝手に決めつけてくれるな。という意味で使ったのです。残念ながら、私と姉さんの場合には当てはまりませんね。もしあなたが打ち明けないのなら、何も解決はしません。」


「嘘ね。あなたはその言葉を私に向けて言ったはず。」


かかった。


「大正解です。私は確かにあなたに向けて言いました。つまり、あなたは少なからず私をわかっている。ですから私もまた理解を深めたいんです。」


正しくはこれだけではない。翼を傷つけてそのまま済むとでも思ったら大間違だ。今でこそ、反撃だ。


「私は恐かったの。このままだと春菜が私の中の誰かになる。器の中身がすり替わる。そうなることが恐くて気づいたら走り出していたわ。

そんなとき、翼ちゃんが私を慰めてくれた。

だけど、私はその優しさが春菜と結びついて、気がついたら殴っていたわ。なにかと結びついてできた自分の想像上の春菜を遠くに追いやるつもりで。今から思えばただの八つ当たりだったわね。」


そう言うと、姉さんは震える翼の前にしゃがんで、頭を下げた。俗に言う土下座という奴だ。


すると翼が姉さんにしがみついた。


ただ、掴んでいるのは片手だけだ。もう片方は力を失い、垂れていた。


姉さんが殴ったから?違う。拳などで骨折するはずがない。


例え、どんなに強く叩きつけられたとしても。


つまり、もともとひびが入っていたのだ。


いや、外傷だけじゃない。心にも傷を負ったに違いない。姉さんのせいで。でも、その傷つけた姉さんを頼れる翼は凄いんだと思った。


私は、この半月ちょっとを翼と共に歩めることを嬉しく思った。


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