表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/75

一生の友達

「あなたのお母さんに会う事ができるわ。」


里奈さんが沈んだ空気の中で不意にそんな言葉を発した。


しかし、とてつもなく妙な言い回しだ。『会うことができる。』まるで会うも会わぬもあなた次第だと言っているみたいではないか。


いや、そうなのだろう。すると、もう一つ疑問が湧いてくる。


里奈さんは一体どこで彼女のお母さんだと思われる人を見つけたのだろう。


そんな疑問を抱いている間に、里奈さんが誰かを招き入れた。


白野さんいらっしゃい、と。


名前は見たことがある。あの日、里奈さんを呼びに来た人だ。


「あなたが……広美?久し振りね?」


その人はにこりと笑ってそう言った。でも私の目には鹿を見つけたジャッカルのようなひもじそうな笑みにしか見えなかった。


それに広美も再開を喜ぶどころか、悲しみ恐れているように見えた。


そもそもあんなに傷つけておいて久し振りとは何事だ。怒りが増大した。


「ふざけるな!!」


気が付いたら白野につかみかかっていた。考えるより先に行動してしまう私の悪い癖である。


「何よあんた!!せっかくの感動の再会を邪魔しないで!!」


「あんたなんかに会うんじゃなかった。私に何をしたか覚えていないのか?」


「出来損ないの役立たずの癖にナマ言ってんじゃねぇよ!!」


白野はそう言い放つと金属バットを構えた。それには赤黒い血がこびりついていた。それを見た瞬間、広美が泣きそうな表情になった。


私はとっさに広美をそれから遠ざけようと考えた。


思惑通り遠ざける事に成功した。しかし、金属バットは私の首に直撃した。すると何故かそれ以上の痛みを感じた。おそらくケガをした部分に直撃したのだろう。まるで金縛りにあったみたいに動けなくなった。


白野は私に追撃を与えようとしていた。振りかぶったバットは―――――――――――――


刹那、鋭い金属音が響き、何者かが白野を殴り倒していた。裕也だ。


その後に香奈や沙耶をはじめとする皆が白野を必死に追い出した。


里奈さんが暗い雰囲気を纏っているように見えた。


私のせいだ。私があんなことをしなければぶち壊しにならなかったはずなのだ。


その後皆で私をベッドに運んでくれた。こんな私を。


********************

白野を許せない。当然のような行動を取った翼ちゃんをあんな目にあわせるなんて。


私は白野にだんだん殺意を抱いた。


********************

やはり彼女は優しい。ここまできたら恩人で良いのではないかと思う。


○●◎◇◆□■△▲△■□◆◇◎●○▽▼●

私は朝、彼女が起きるのを見計らって彼女の病室に入った。突飛かも知れない。だが、仕方ないと思う。何故なら私は友だちの作り方というものを知らないのだから。


彼女は私が現れても別段驚きもしなかった。


「昨日は怖かったよね?ごめんね。」


なぜ彼女が謝らねばならぬのだろう。悪いのはあの女だ。


「私と―――」


「―――待って。言いたいことはわかる。そんな言葉、必要ないわ。」


「だよね、私なんて―――」


「―――違う。そういう意味じゃない。私達はもう友達、一生の友達。」


私は嬉しくて飛び上がらんばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ