二十七日目
私は、幸華の手紙に手を伸ばそうとした。でも、何かが私のその気持ちを遮り、あのいやな思いがあふれる。私は、やはりそれを拒絶反応だと思う。
幸華は、こんな私でも受け入れてくれるのだろうか。たぶん、幸華は優しいから、
『どんなつーちゃんでも、あたしは、いつだって受け入れてあげるよ。』
とかいって、ほほえんでくれそうだ。
しかし、それは私にとっては、そこまで、ありがたいことではない。なぜなら、そうされて、私は幸華に頼りきりにならない自信がないからだ。そして、やはり私は、そんな自分が嫌いだと思う。
あのとき、幸華を、いや、正確には幸華だった体を抱きしめて、その胸元で泣いてた自分も、幸華に冷たい反応をしてた自分も嫌いだ。
私は、もう誰からも必要とされていないのかもしれない。ならば、私も死んでしまえばいい。そして、ナイフを手に持ち、自分の腹に刺そうとする。だけれども刺さらない。
自分が死んだら、誰が悲しむかを考えてみた。まず、里奈さん、さらには、幸華も悲しむだろう。
幸華が死んだあの日に、里奈さんからもらった手紙を私は読む。
『翼ちゃんへ
幸華ちゃんが死んで、寂しいでしょう。私もすごく寂しいです。この文章を書くに当たってものすごく悲しかったです。あなたたちが急に表に出たり、私を喜ばせてくれたりした。そんな思い出が一気にあふれ出てきて、それと同時に涙もあふれ出てきました。私には、両親も恋人も兄弟従姉妹もいません。でも、あなたには裕也君がいます。彼なら、あなたが大人になったら、よき理解者になります。あと、自殺なんか絶対にしないでください。そんなことでは、幸華ちゃんが浮かばれないし、彼女と裕也君はきっと自分を責めるでしょう。』
はっとなった。私が死んでも悲しんでくれる人がたくさんいることに気がついて、涙があふれた。この手紙には書いてはいなかったが、おそらく、私が死んだら里奈さんも悲しいのだろう。
私は、裕也に電話をかけた。
『もしもし、遠野です。』
「あ、あたし、翼だけど。」
『ああ、おまえか。悲しいこと聞くけど、幸華は?』
「だめだった。でも、最期まで、一生懸命幸華はがんばってた。でも、あたしは、何もしなかった。」
『そんなことはない。おまえは幸華を一生懸命看病してたじゃないか。』
「だってそれは、当たり前のことだから…。」
『それを当たり前といえるのがおまえの好きなところさ。』
その言葉に、感謝した。
「ありがとう。」
『ああ、切るぞ。』
その後、私は気を失ったように寝た。




