十八日目
「里奈さん起きて下さい!」
「え?」
「大変なんです。翼が。このままだと…!!」
「わかった。すぐ行くわ。」
香奈ちゃんの前では気丈に振る舞って見せたものの、本当は怖い。翼ちゃんが死んでしまうのが。
しかもそれが自分のせいだというのだから救いがない。
集中治療室に着いた。翼ちゃんが寝転んでいた。
だけどその顔には全く生気がなかった。青ざめていてまるで死者のような顔だった。
喩えだけなのに私の心は死というワードに過剰に反応した。
翼が…このままだと…!! 香奈ちゃんが言ってたことが反響する。
私は硬直して何もできなかった。何て無力なんだろう。守るって言ったのに。
医者が到着した。私はへたり込んだ。情けない。私が元々医者だったなんて誰が信じるだろうか。
「どいてください。」
ついに邪魔になってしまった。
医者達の応急措置と手術の末、翼ちゃんは一命を取り留めた。
私は沙吉田時代の資料を熟読していた。そこに田茅春菜がやってきた。翼ちゃんはこいつに苦しめられた。だが、私も同じように翼ちゃんを苦しめた。
「里奈さん。私は、翼ちゃんを傷つけました。」
「気に病む事じゃないわ。私も同じように翼ちゃんを傷つけた。」
「そんなのとんでもないです。」
「いや、二人とも一蓮托生よ。あと、敬語やめなさい。」
「ええ。」
「あと、翼ちゃんも一緒に守っていこう。なぜなら一蓮托生なんだし。」
「ええ。そうね。」
あの時はやな奴だと思っていたけどこんないい人だった。絆は求めれば簡単に手に入る。だけど強い絆は簡単には引きちぎれない。
無理矢理引きちぎろうとすると余計相手に嫌がられ、その人との絆が脆くなる。
それに反抗しようともがく、さらに悲しみのどん底に落ちる。
しかし、そのスパイラルを脱しようと必死にもがく。人とはそういうものだ。
すると、余計きついスパイラルが待っており、さらに脱せなくなる。私と翼ちゃんと裕也くんのように。
絆ってそういうものだ。やっとわかった。それに、翼ちゃんは幸せになるべきだ。
彼女は法には背いたかもしれないが、人道には決して背いていない。
前にも思ったが、やはり法とは人道には無力だ。つまらない法ごときであんな優しい人を拘束してはいけない。彼女には何不自由なく未来を歩んで行って欲しい。
そこに三人の人が現れた。
「竹沢沙耶です。翼の親友です」
「慈身河内数美だ。沙耶の友達だ。」
「あの…二川由似です。沙耶の友達です。」
「あれ?広美は?」
「ヒッキーングなうかな?」
「泣いてたわ。」
「何故かね。私達の行動に原因があるのではなかろうか。」
「さぁ。あの子の思考はエベレストより高く、マリアナ海峡よりも深いから。」
「どんだけ…。」
「その話は置いといて翼はどうですか?」
「一命は取り留めたわ。でも、まだ危険な状態よ。」
「そうですか。では、私達も手伝わせていただけないでしょうか。」
「勿論。」
新たに沙耶ちゃん含む三人が手伝ってくれることになった。
私達はその場で寝てしまった。




