十七日目
「わかったわよ。あれに百日間近づかなきゃいいんでしょ。」
「ええ。当たり前です。」
「二度と来ないで。」
「勿論。」
素直に謝ろうと思っていた。なのに何てこと言ってしまったんだろう。
私は三日間寝ないで泣き続けた。汚れた心も洗い流されると考えていた。なのになぜ…。
そんな事を考えていると、突然ある疑問がわいてきた。
翼ちゃんはどうなんだろう。どうしているんだろう。
「待って!!」
「はい?」
香奈ちゃんが立ち止まる。
「翼ちゃんはどうしているの?」
「危篤状態です。あなたのせいで。」
居ても立ってもいられない。私は平津綜合病院に直行した。
しばらくして平津綜合病院に着いた。
「翼ちゃんは?」
「ICUです。」
私はやってしまった。守るどころか傷つけているではないか。
それも、再起不能な程に。
遂に翼ちゃんの所に着いた。
見たときは信じられなかった。しなびた手足、歪んだ顔。
どれ一つとっても翼ちゃんだとはおもわなかった。
だけどネームプレートを見た瞬間、認めるしかないと思った。
私は、何て事をしてしまったんだろう。もう翼ちゃんに合わせる顔もない。
「翼、ちゃん。」
気づけば私は泣いていた。泣く資格なんて私にはない。
「大丈夫ですか?」
「ええ。」
「念のため翼が目を開けるまでここにいてくれませんか。」
「本当にいいの?私は翼ちゃんにこんな傷をつけたんだよ?」
「だからこそです。あなたに償いをさせるためです。最初は拒否反応もあるでしょう。」
「私は、生きてていいの?」
「生きててこそ償いができるのです。里奈さん。あなたはこう言った。『傷つくのは、傷つけられた人だけじゃない。傷つけた人も悲しいの。人って、だから難しいのよ。いくら親しくなっても、相手の気持ちがわからなくて、すれ違ってけんかしてしまうことだってたくさんあるの。それは相手とほんとは仲がよくないからじゃない。よくあることなの。それを乗り越えることで本当の親友になれる。パートナーになれる。それが人間なの。』―――と。私はその言葉が人生で一番心に響きました。あの時の里奈さんにもう一度なってみて下さい。」
「私はあの時に戻れるの?」
「ええ。勿論。ですがそのためには省みることが重要です。そして、それが一番難しいのです。」
私は、もう一度翼ちゃんを守る。そう決意した。
翼ちゃんは私の事を確実に避けるだろう。だけど、それは私自身のせいだ。
私は、拒絶反応で倒れた翼ちゃんの顔が脳裏をよぎった。
その時の目はうつろで、何かを拒否していると言うより、何を見ているのかわからないというような感じだった。
もうあんな気持ちにはさせない。
もちろんそんな決意だけではない。怖い。ああなった翼ちゃんを支える事ができるんだろうか。考えているうちに、吸い込まれるように眠りについた。




