十日目
あたしは朝早く、医者に呼び出された。
「あなたはご自分が横沢翼さんに何をしたかお分かりですか?」
「すいません。私は翼さんに暴行を加えました。」
「泣いて済む問題か!」
「っ!!」
「あなたは翼さんに与えた傷がどれくらいの物だとお考えですか?」
「ちょっとした内臓破裂ぐらい―――」
「―――そんなものじゃない。彼女は肋骨の粉砕骨折と内臓破裂という傷を負っているわ。」
「あたしは一体何をすれば?」
「翼さんに謝ることね。そしてあなたはこう言うの。『あたしがあなたを守る。―――と』」
「それだけで?本当にそれだけでいい?」
「えぇ。人を守るのは大変なことよ。」
私は病室に移動し、翼ちゃんのベッドの前にひざまづいていた。懺悔するために。あと、裕也さんにも、幸華ちゃんにも。
あたしがしてしまったことは許されざる事である。だが、翼ちゃんのために動けば何とかなるだろう。
あの時の恋心はもう既に恋い焦がれて見た夢として消えていった。
もうあれは夢なのだ。
泣きたくなる気持ちを我慢し、翼ちゃんの起床を待った。
そこに夏美が来た。私達は言葉は交わさなかった。けれども、気持ちは伝わっていた。
しばらくして翼ちゃんが起きてきた。
そこで、夏美が初めて言葉を発した。
「ねぇ、春菜―――」
と一度区切り、
「―――覚えてる?あの日のこと。」
私はジト目で夏美を睨んだ。すると夏美が舌をだした。
「あれは四年前のことだったわ。春菜の母親が春菜の父親に黙ってAV出演してたの。それが真実伝播っていう週刊誌にリークされて春菜は本名で揶揄されたの。それをネタにしてクラスメートからイジメを受けてたの。しかもリークしたのはワイフムービー―――つまりそのAV会社ね。それを父親が訴えて勝訴したんだけどクラスメートはその父親をモンスターペアレント扱いして更にイジメが激化したわ。彼女はアパートで首吊り自殺しようとしたの。それを見た裕也くんが止めたの。それから彼女は裕也くんに恋したの。」
それを聞いた翼ちゃんは私に向かって頭を下げた。
「大丈夫だ。俺と田茅さんの間には何もない。」
「へぇ。んで裕也、誤解は解いたの?」
「それはー。えー。その。」
「ダメじゃん。」
「まぁな。」
「翼ちゃん。本当にごめんなさい!!」
私は翼ちゃんの前に土下座した。
「別に大丈夫です。それより私こそごめんなさい。事情も知らないで裕也さんと恋しちゃって。」
「大丈夫。私は身を引くわ。」
これが私の決意だ。あともう一つ決意をしなくてはならない。私は息を大きく吸った。
「あたしがあなたを守る。」
外は真っ暗だった。




