三日目
香奈が、申し訳なさそうにうつむいている。ホントは守り切れなかった私が悪いのに。
「あたし、戸籍上は二十歳なの。うちの母、いわゆるヤリマンってやつで、四回妊娠してんの。でも、生まれたのはあたしと夏美姉さんの二人だけ。四年前に流産した子と同じ年にしてる。でも市には実年齢で出してある。でも戸籍優先だから刑務所に入れられる。もう、サヨナラだね。当然死刑だよ。ごめんね。」
香奈が唐突にそう言った。
こんな残酷な運命があっていいわけがない。私は耐えられなかった。
「大丈夫だよ。変えてみせるわ。」
「ありがとう。翼。ありがとう。」
香奈が泣いている。この残酷な運命を変えようと心に決めた。
警察がやってきて、香奈に手錠をかけて連れて行く。
永遠の別れになってはいけない。絶対に。まず、署名活動から始めようと思った。
ネット上で呼びかける。馬鹿でも思いつきそうだが、やらないわけにはいかない。
二時間待った。すると、たくさんのコメントが届いていた。
すべて香奈を肯定するコメントだった。ニュースでも報じられているのか、
「ニュース見ました。香奈さん可哀想。」
など、ニュースを見ても肯定してくれている人もいた。
感謝の気持ちでいっぱいだった。目の前が一瞬モノトーンになった。そして再び元に戻り、トイカメラ状態になり、やがてぼやけてきた。おそらく疲れているのだろう。
私はそのまま眠りに落ちた。
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その頃、二川と二階堂がすんでいた上毛電気鉄道の丸山下の町内会でも、香奈が逮捕されたというニュースが広まった。
二川夫人もそこにいた。彼女は二川からDVを受けていた。そこには二階堂夫人の姿もあった。彼女もまた二階堂からDVを受けていた。
その時、香奈が逮捕されたことを知った。彼女たちはネットで署名を調べ上げて、ようやく翼が集めている署名にありつけた。
すぐさまそのサイトをお気に入り登録して、同じ町会の人と登録しているLINEでウェブアドレスを教えた。
だが、釈放には十万人の署名が必要だった。
どうすればそんな数の署名を集められるのだろう。町中では効率が悪い。………そうだ。小説サイトにばらまけばいいじゃないかと彼女たちは考えた。
確かに感性が良くて純粋である。
二人で仕事を分けることにした彼女たちは、いそいそとサイトアドレスをばらまいていた。
しかし、二川夫人は小説サイトを抜けて、沙吉田病院の元職員や患者さん達にサイトアドレスに一斉送信をかけた。
翼が集めた署名はいつの間にか四万人に上っていた。
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私は、ゆっくりと目を覚ました。もうすでに午後一時ぐらいだった。
署名を見た。思わず驚いてしまった。
そう。気付かぬうちに四万人集めていたのだ。
その時、幸華がふらふらとこっちにやってきた。そして、地面に倒れてけいれんし、やがて動かなくなった。
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その頃、それでは足りないと思った彼女たちは、上毛鉄道から赤城、太田、東小泉、館林、羽生、久喜を経由して渋谷まで行った。
着いたのは午後五時だった。彼女たちは必死にサイトでの署名を呼びかけた。そして再び戻ったのは午後十一時ぐらいだった。
彼女たちは、署名の数が増えているに違いないわ。といそいそと確認した。
だが、ほとんど増えてなかった。
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その頃、裁判所には、翼と里奈が証人になり、香奈が被告人、そして検察がその相手だった。
私は、一番最初に口を開いた。
「香奈は、ずっとあいつらに恨みを持っていました。彼女は彼氏をあいつらに殺されたのです。彼女は正当防衛が認められるべきです。」
「被告人の友人だそうですね。理論が支離滅裂です。」
「あなたは理解力がないのですね。これで裁判官の黒服着て…。司法試験で裏口合格でもしたのですか?」
このままだと喧嘩になりそうだが、私は、ただ香奈を救ってあげたいだけである。




