十九日目
朝起きると、目の前には気にくわないあいつがいた。
「何のつもり?」
と聞くと
「あなたが思っているより、私は弱くありません。」
はい?意味プーなんですけど?
そこに平手が右から迫ってきた。私はすぐによけた。
「何のまね?あなたもなかなかやるじゃない。でもね。勝てない相手にけんか売るのはやめようか。」
といって、私はあいつの手を右にねじ曲げ、床に投げつけてやった。
あいつは、布団にさっさと潜り込んでいった。
そのときだった。幸華がもぞもぞと動き出していた。
おはようと声をかけたのに、幸華に無視された。
相当すねてると思い、強行手段に出た。
「おい。おはようってば。」
といって、右手を思い切りつかんだ。
「うるせぇ。」
幸華とは思えないほどの低い声でそう言われた。
何の不運だか知らないが、今だけだろう。
私はまっすぐ前を見た。
「ざまが無いですね。」
といって、あいつはほほえんでいた。
「この期に及んで….貴様、ざけんじゃねぇぞ!!」
「もしかして、お怒りですか?それは逆恨みというものでございます。」
「何だと!ぶっ飛ばされてえのかテメェ!!」
「喧嘩ですか?受けて立ちましょう。」
目の前のそいつはほほえんでいた。
その状態で、投げの体勢になり、私を投げ飛ばす…訳も無く、ウェイトもパワーも無いあいつは私の重さに耐えきれず投げることができなかった。
私はかまわずヘッドロックを食らわした。
「なかなかのものですね。」
そう言ってあいつはほほえんでいた。
やってしまえと思ったとき、突如幸華があいつをぶっ飛ばした。
その後、幸華はどこかに消えていった。あいつは、布団の上でもだえている。
そして、その後に裕也が来た。
「気晴らしに散歩でもしないか?」
裕也がそう言った。
私たちは少しの距離を置いて歩いた。そのうち、ベンチが見えたので、私たちはそこに座る。
「さて、俺の家安芸阿賀だけど、来る?」
「いく!」
そう言って顔を合わせて二人で笑い合った。
ここ−−七軒茶屋から電車で一時間二十分ほどのところである。
14:18ぐらいに出たから、帰るのは18:00頃になりそうだ。
可部線では、幸華の歌詞にもある黄色い電車が低いうなりを上げて走っていた。
そして、少ない所要時間で呉線に乗り換えた。
そうして、安芸阿賀についた。
裕也の家は、歩いて7分ほどの距離にあった。
私たちはカップルにしか見えない。
しかも、実際そうなのである。
そこに、整った顔立ちの−−あいつがいた。
と思ったが、あいつでは無い、あいつより、もっと器がでかい、そんな気がした。
「初めまして、京野香奈の姉の京野夏美です。病院まで連れて行ってくれませんか?」
敬語ばかり使うのは姉妹共通だが。
しかし、私は安芸阿賀で待つように言った。
そして、裕也の家に着いた。
二人で喋った後、私は一大決心をした。カバンから皿を取り出した。
「良かったら使って。」
やばい。実はこれ、病院で使うのかと思って買ってきた物だった。だが、使わなかったので、行く当てもなかった。今回のお礼としてはふさわしいだろうと思った。
その後、お互いに写真を取り合った。
少し後、七軒茶屋に帰った。
そして、七軒茶屋に到着した後、里奈さんが迎えに来た。
いつものように食事をした後、夏美さんがあいつを屋上に連れ出した。
私はこっそり見る。
「あんた…。打ち解けてないようね。」
「えぇ。人に交ざって、人の気持ちがわかったようなことをする人の器が嫌いですから。」
そういうあいつを夏美さんは屋上の床に思い切りたたきつけた。
「あんたって、傲慢ね。人のことを丁寧な言葉であざ笑って、あの人は野蛮です!?
そう言うあんたが一番野蛮じゃねえか!!違うのか!」
「…………。」
「黙りこくってねえで答えろよ!!!そう言ってあんたはひねくれた根性なんだ!!」
ああまずいと思った。静寂が重く続き、夜中になった。
次回もこの姉妹喧嘩です。