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一四日目

私は、何かを感じて起き上がった。

そう、私は気がつかないうちに寝てしまったのだ。

どうやら手術が終わったらしい。

「手術は無事に終了しました。」

医者は、そう告げた。

私は、肩の荷が下りた気持ちになった。軽々とした足取りで、幸華の病室に向かう。

その後、医者に呼ばれた。

「藤井さんは、進行の早いスキルス胃ガンで、肺にも転移しています。」

そのことばは、ちょっと信じがたかった。

「にわかには信じられないかもしれませんが、精神的にも藤井さんはやつれています。救えるのは、横沢さん、あなただけです。」名指しされて少しびくついた。

「さらに。少しいいにくいのですが…」

「何ですか?」

里奈さんが反射で言い返す。

「藤井さんは、もうどんなにがんばっても半年しか生きられません。すみませんが、藤井さんが最初に入院されたのはいつでしょうか。」

「六月一日です。」

「ならば、十二月の初め頃、藤井さんはお亡くなりになります。その事実は覆りません。」

その言葉は、私の胸に刺さった。それと同時に、この医者に対する怒りがわいてきた。

「なぜ決めつけるんですか!そんなの、その日にならなければ分からないじゃないですか!!」

私は、つい怒鳴ってしまった。そして、私はその部屋から離れた。ベンチに俯せになって泣いた。

その後に里奈さんがそっと抱きしめてくれる。

そして、私たちは再び部屋に戻った。

しかし、医者の話はどれもこれも冷静に聞き流すことができないものばかりだった。

時々、里奈さんが言い合っていたが何とか終わった。途中、足音が聞こえた。

その後は、幸華の病室に行った。病室に入ると、もぬけの殻だった。

私は、幸華を探しに行く。位置確認をすると、すでにとんでもないところにいた。それが表していたのは京都だった。こうしてはいられない。すぐさま画面を変えて時刻表を取り出す。この時間に出てるのはこだまだった。

わたしは、広島駅に向かい、そこから新幹線に乗った。

以前、里奈さんからもらったものだ。あのことを思い出すたび、いやな思いが再燃焼するのだ。

これで、行き先は名古屋だと思い、広島〜名古屋間の切符を買う。

そして、のぞみが来た。

私はそれに乗る。

全く、あいつは…。と思った。

こだまは姫路で通過待ちをしていた。

そして、京都でのぞみを降りてこだまに移る。

幸華は3号車に居た。

私は座っていた幸華の胸ぐらをつかむ。

「何でこんなことするの!?みんなが心配することぐらいわからないの!?ふざけんなよ!!」

と、怒鳴ってしまった

「あたしだって、心配してたんだもん…。あたしだって……。」

と、幸華はどこかに消えてしまった。

自分のいったことを振り返る。

よく考えてみればあの部屋は幸華の病室に隣接していたのだ。それでは、幸華が心配になるのも当然である。

私は、あの医者のいっていたことを思い出す。

「藤井さんは精神的にもやつれています。」

なのに私は、そのやつれた心を更に傷つけてしまった。

とりあえず、謝らないと。という思いが生まれた。

私は、急いで幸華を追いかける。

幸華は、京都駅の周りを歩いていた。

私は、幸華に声をかける。

「ごめん。」

「えっ、なんでつーちゃんが謝るの?悪いのあたしだよ?」

「ううん、違うの。あたしが泣いてたベンチは幸華の病室の向かい側にあったし、幸華が心配になるのも当たり前だよね。なのにあたし、そんなことも考えられずに一方的に幸華を責めてしまって…。本当にごめんなさい。」

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

「さあ、いこうか。」

「うん!」

幸華の声には全く陰りが無かった。

私たちは、一緒の新幹線で仲良く帰った。

帰ってきて、里奈さんに報告すると、里奈さんは。

「全くあんたたちは、いろんなことを…。」

といって笑い出した。その目の下には涙の跡がある。おそらく心配してくれていたのだろう。

「「ごめんなさい。心配させてしまって。」」

「いいのよ。いいのよ…。」

といって里奈さんが泣き笑いする。

「さあ、ご飯にしましょ。」

と、いった里奈さんが立ち上がる。

私たちは、里奈さんが泣くほど心配させてしまったのだ。

「「私たちも手伝います!!」」

二人で、声を合わせる。

「二人とも、元気がいいこと、ありがとう。」

と里奈さんは、笑ってくれた。

みんなで作った晩ご飯はおいしかった。

幸華の顔に、元気が満ちていた。

日常を取り戻せてよかったと私は思った。

私たちは、布団に入り。こそこそ話をしている。

「あのさ、私たち、里奈さんに迷惑かけっぱなしじゃん。だからさ…。」

「いいね。いいね。」

私たちは、楽しい気持ちのまま寝た。

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