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十一日目

私は、幸華ちゃんと翼ちゃんの病室にいる。

私は、二人の間に腰掛ける。

幸華ちゃんは病気だけれども、翼ちゃんは完全に私のせいで意識を失ってる。

私の、幸華ちゃんに対する配慮が足りなかったからだ。

私のせいで…。 私は、幸華ちゃんの布団に突っ伏して泣いた。

そのときだった。                  

幸華ちゃんの呼吸が薄くなっていく。それと同時に、鼓動が遅くなっていく。

そんなとき、看護師呼び出しの音が鳴り響く。

私の判断が揺らぐ。この呼び出しは、上司のものだ。しかし、幸華ちゃんの容態は非常に悪い。

このままだと、幸華ちゃんは死んでしまう。

こうして悩んでいる間にも、幸華ちゃんの状態が危険になってゆく。こんな時の判断は一つ。幸華ちゃんの命を取る。

そして、手術。私は、どきどきしながら見守る。行き場のないこの気持ちを抑えることしかできない。ついに、手術が終わった。

無事のようだ。

ほっとして、一息つき、上司の部屋に。

「ミードゥハーソーナー、酒井君。」

こいつは、沖縄出身で、今もその言葉で話している副院長の二川だ。

「またそのことばですか。やめてもらえませんか、副院長。」

「君はやっぱりさすがさー。就職して2週間で私の腹にエルボーを入れただけのことはあるさー。」

「あれは、急患が搬送されてきているのに、副院長がのんきに寝てたからじゃないですか。」「あ、あれは疲れたから寝てただけさー」

「そうだずー酒井君。副院長ほど院長と医者にジレンマされた役員はいないべ。」

院長まで便乗だ。しかも二人ともキャラがすごく濃い。

「それはそうと、君を呼んだ理由はね。この病院に良い商談が舞い込んできているんだべ。看護婦兼商談委員の君を読んだ理由としてはすごく妥当だずー。」

「そうさー。給料も段違いさー。」

いきなりすごいところをつく人たちだ。

「いったいこの病院をどうするつもりなんですか!?」

今一番聞きたいことだった。病院は経営不振に陥っている。そんな金はとても出せない。

「君も知っているように、病院は経営不振に陥っている。だから、病院を廃止して、コンビニにしようと思っている。」

「当然、今入院している患者は全員手当完了してからですよね。」

せめて、それだけが最後の一縷の望みだった。なのに、あの男たちは、ことごとく、期待を裏切った。

「症状の軽い患者は転院してもらい、症状の重い患者は、服を脱がせ、、当院所有のミカン畑に埋める。」

私は、嘘だと思った。あまり突飛な話で、何も言えない。それに、どこかで信じていた。あの男たちは馬鹿ではあるが、余命半年しかない幸華ちゃんを殺すとは思えなかったからだ。

「藤井幸華さんは、どっちに入るんですか?」

「はぁ?………ここは幼稚園なんかじゃないべ。どっちに入るかなんて、幼稚園児にもわかるずー。」

「つまり、殺す方に入ると言うことですか。」

「決まってるずー。」

悲しみより先に怒りがわいてきた。

仮にここが経営不振なんかで、患者を犠牲にするところだとすると、私はここにいる意味があるのだろうか。私の意思は一つだ。

私は、大きく息を吸った。

 


 


 


 


 



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