プロローグ
それはいつなのかは分からないが、最低限分かることは、今から少し先のことだ。
それはどこなのかは分からないが、最低限分かることは、平行世界の話だ。
まだ3000年にはなっていないが、もう少し経てば3000年になるある日のこと。
その世界で「ヒノクニ」と呼ばれている国が、危機的状況に陥っていた。
死者が動き始めた……
いや、死者というのは正しくはない。なぜなら死んでない人間までもが同じ姿になったからだ。
その数は瞬く間に増え、生き延びた人間は大きく分けて4か所に追いやられた。
北ノクニ、東ノクニ、西ノクニ、南西ノクニ。
なぜか外国からは何の反応もなく、ヒノクニは孤立した。
そしてその「何か」は「屍」と名付けられ、それぞれの地域にこれを迎え撃つ「支部」を作った。
4つの支部はお互いに連絡を取り合いながらも、それぞれがまったく別の進化を遂げ、
それから100年が過ぎた。
これはその100年後の話。
西ノクニは偶然にも「シガ」と呼ばれる地域を中心とした話。
最後まで希望を捨てずに、戦い続ける人間の話。
あるものは地を走る鋸を手に、
あるものは美しき撃鎚を手に、
あるものは血肉食む牙を手に、
己のために戦い続けた。
この物語を、ある一人がつけていた日記から「メビウスリング戦記」と名付ける。
だれが、その輪のねじれを治すのか。
それはまだ分からない……。