表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇めくトレジャーハンター・ゼロ ~異能の原石で誰もが能力者になれる8つの世界が交差するとき、架け橋を【盗む】冒険の旅が始まる~  作者: ちーかま
第2章 電脳編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

15話「heavenly nymph」

 ―――ゴードン・フィン・フィルは、生半可な言葉じゃ言い表せんほどの下衆じゃ。



 ゴードン?オピカス?

 俺の頭は混乱していた。

 ノーマンで調べた知識によれば、今のピュータはオピカス社に支配されている。

 だが、オピカス社すらも乗っ取られて支配されているとは知らなかった。


 そして、このゲームのようなものは何なのだろうか。


 「おじいちゃん!今なにが起きてるんですか!」


 「焦るな少年」


 「焦りますよ!周りがみんなやってるんだから」


 「そもそも、わしもお前もイベントには参加できん」


 「え、そうなんですか!?」


 俺はびっくりした様子で老人に尋ねる。

 そもそも参加不可だったのか。


 「身分証がないからな」


 言われてみればそうだ。

 俺は今、身分証なんて持っていない。

 ゲームのアカウントがないような状況下にあるのだ。

 そしてこの老人も同様の状況下にあるのだろう。


 「じゃから、さっさとこの場を離れた方がいい」


 「え、でもこれってただのゲームでしょ?どうして離れる必要が―――」




 ―――その時だ。


 俺の声を遮るようにして、頭上から声がした。

 イベントを知らせる機械音声とは違う、人間の声だ。



 「ねぇ、そこのキミ。どうしてボーっとしてるのかなっ」



 とっさに見上げると、人がまるで天女のように空に立っていた。

 

 全身を鎧のような強化スーツに包まれた、可憐な少女。

 そして、彼女はそのスーツの能力で空中に浮遊しているようだ。

 ―――この時の俺は知らなかったが、彼女はリーナ・フィン・フィルという名だ。

 


 「え、いや―――」


 「少年、避けろッ!!」



 首筋に剣先―――ッ!


 圧倒的な速さで近づかれた。

 まったく動きを捉えられなかった。


 人間の速さではない。

 俺にはそう思えた。

 おそらく、あのスーツはとんでもない敏捷性をリーナに与えている。


 そして、彼女は現在俺に剣を向けている。

 銀色の刃が軽く首にかすって、血がにじんだ。


 「キミ、解毒イベント知らないの?知らないわけないよねっ」


 「いや、本当に知らない」


 「えーそっか。めんどいから殺すねっ」


 リーナが剣を振り切ろうとする。



 俺はとっさに「加速」して、なんとか彼女と距離をとった。



 「はっ?キミもストーンユーザー?」


 「え、いや俺は―――」


 すると、またもリーナが超速で距離を詰めようとしてくる。

 俺もまた「加速」して、バックステップ。


 リーナと俺との距離は一定のままだ。

 その距離、ざっと5m。

 老人もまた、リーナから逃げている。

 こちらは、ざっと10m。


 「―――ッ!!」


 リーナは諦めず、何度も近づいて剣を振ってくる。

 対する俺は後退したり、間一髪で避けたりして、なんとか耐えている。


 ちなみに、彼女の剣は、まるで泡立て機のような見た目をしている。

 縦に通る線で作られた、円錐の骨組みといった感じだ。

 おそらく、その一本一本がかなりの鋭さを備えている。


 「ちっ―――わたしより早い」


 そこで、俺はリーナの目が金色に輝いているのに気付いた。

 マルカのライアーストーンの発光色に似ている。


 リーナは「()()()」と言った。

 ゆえに、リーナ自身はおそらくストーンを使うのである。

 つまり―――目の中にストーンが?

 だが、そんなことを考えている余裕はない。


 リーナは空から何度も攻撃してくる。

 地形に囚われている俺と違って、段差や障害物を考慮する必要がないのだ。

 俺は必死に避ける。


 「攻撃をやめてください!一体どうして!!」


 すると、後ろから声がした。


 「こっちに来るんじゃ!」


 「はい!!」


 路地裏への入り口にたって、老人が俺を手招きしていた。

 俺は走る。

 必死に逃げる。

 路地裏に駆け込む。


 リーナは追ってこないらしい、

 「また今度でいいかっ」といった感じで、どこかへ飛び立ってしまった。

 だが、俺はリーナの金色の目の奥に、今にも泣き出しそうな青い光を見た気がした。




 俺は老人についていき、安全な場所まで移動した。

 久しぶりの猛ダッシュだった。

 息切れがひどい。


 「はぁ、はぁ―――助かりました」


 「助けてやりましたぁ」


 「あ、はい。ありがとうございました。ところで、あなたの名は―――?」


 「うーん、じゃあ、ラピカスとでも呼んでくれ」


 ―――ラピカス。

 明らかにオピカスに似せた名前。

 非常に怪しい。


 「わかり、ました。さっきの解毒イベントってのは、一体何なんです?」


 「あれはな―――」


 ラピカスは、解毒イベントについて、現在のオピカス社の状況に絡めて語り始めた。




 オピカス社では以前、ジル・オピカスという人物が会長を務めていたそうだ。

 名前からして、創業者その人もしくはその家系の人物だろう。


 だが最近、経営陣によるクーデターが起きた。

 ジル氏はオピカス社を追われ、そして殺された。

 そして、ゴードン・フィン・フィルという男が会長に就任した。


 ゴードンは、なかなかにひどい奴らしい。

 オピカス社の繁栄を邪魔する人間を選別するといって、『解毒イベント』をスタートさせた。

 それは、制限時間内に一定の動作でデバイスの警告画面を消す、ただそれだけのもの。


 しかし、それができなかった者、しなかった者は犯罪者として扱われる。

 オピカス社の息のかかった警察や裁判所によって、逮捕され、重い罪を科せられる。

 死刑が最も多い刑罰らしい。


 また、イベントには身分証がないと参加できない。

 つまり、貧困層や裏社会の人間を効率良く消せるというわけだ。

 ひどいやり方だ。


 イベントから逃げた者は、問答無用で殺されることもあるらしい。

 そのために、オピカス社の精鋭部隊が動員されている。

 おそらく、さっきの女性もその一人だ。


 解毒イベントは、ゲームでもなんでもなかった。

 ただのむごい行為じゃないか。


 だが、オピカス社の人々はみな、本心でこんなことをしているのだろうか。

 イベントは、邪魔者の選別どころか、無差別の殺戮になっているのではないだろうか。

 俺はそう疑問に思った。




 「そしてお前は、イベントから逃げた指名手配犯として扱われるじゃろう。ピュータで表立って行動することはもうできん」


 「不条理な―――」


 「あぁ、だがそれが今のオピカス社のやり口じゃ。あまりに最近の出来事だから、お前も知らんかったはずじゃ」


 俺はうなずいた。

 そして、たった数日前に始まった、ピュータの混乱。

 『架け橋』が通行停止になるほどの混乱。

 俺は最悪のタイミングでピュータに来てしまったのだと気づいた。


 「俺はこれからどうすればいいんですか」


 「うむ。まずは安全確保と、情報収集じゃな」


 「それなら、導騎士団の支部に行きましょうよ」


 俺ならマルカとの繋がりがあるから、なにかしらの手助けは得られるはずだ。

 だが、ラピカスは首を横に振った。


 「あそこに行けば安全ではあるが、包囲を敷かれて支部から出られなくなるはずじゃ。そもそも入れるかさえ分からん」


 俺は納得した。

 現実世界のニュースで、国境線を見張る兵士の映像を目にしたことがある。

 導騎士団の支部は、言ってしまえば他国の大使館のようなもの。

 おそらく、ピュータ側から監視されているだろう。


 「路地のコミュニティを頼るんじゃ」


 ラピカスはそう告げた。

 路地のコミュニティとは、裏社会のようなものだろうか。

 もしくは、レジスタンスのようなものなのだろうか。


 「ラピカスさんも、手伝ってくれるんですよね?」


 「あぁ。わしも犯罪者扱いのはずだからのう。共犯じゃ」


 そう言って、老人はニカーッと笑った。

 そして次の瞬間、表情をガラリと変えた。

 顔にシワが浮かぶ。


 「ところでお前、さっきはストーンを使っていたのか?」


 「え、いや俺はストーンなんて持ってないですよ」


 「そうか。いや、やはりか―――」


 ラピカスは思い詰めたような表情で、俺を見ている。

 独り言を、ぶつぶつと言う。

 顔のシワが、より深くなっていく。


 「どうかしましたか?」


 俺の呼びかけにも答えず、ずっと考え事をしている。

 すると、ついにその口が開かれた。


 「―――ついて来い」




 「お前にウォッチを作ってやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ