02話「幽霊」
―――ショットガンのような強烈な弾丸が、とてつもない勢いでピエロに放たれた。
ピエロは動かない。
バルドレンジの弾丸が、ピエロに着弾する―――
だが予想通り、弾丸はピエロの身体をすり抜けた。
そして後ろの警備員に当たった。
その警備員は死んだ。
「アァ―、分かってたくせに残念?うん、残念!」
「バルド、戦闘態勢のまま待機だ」
「あーい」
ピエロと俺との距離は、ざっと20mだ。
弾丸の射程に入ってはいるが、今のピエロに実弾は効かない。
なんとかして、『ゴーストストーン』の能力を解除させる必要がある。
「バルド、あいつが能力を解除したら、一斉に射撃しろ」
そう言って、俺は銃を左手に持ちつつ、ポケットから剣のグリップのようなものを取り出し、右手に持つ。
そして、そこからレーザーを発現させた。
ブイーン、という音を伴って、白い光剣が真っすぐに伸びる。
これはストーン由来の道具ではないが、おそらく実体のないピエロにも通用するだろう。
「いいねェー!コソコソしてんジャン」
ピエロは舐めた口調で言う。
ゴーストの能力はあの程度で収まるものではないだろう。
俺は警戒心をマックスにしたまま、右手の光剣を構える。
そして、地面をぐっと踏んで、ピエロに斬りかかる―――
「がァあああああ!!」
上からの一撃をお見舞いする。
それをピエロは右腕で受け止めようとするが、剣はそのまま右腕を切断した。
「アハッ、ちっ―――」
ピエロは右腕を切断されたことに憤る。
やはり、あの光剣はゴーストの能力にも通用するのだ。
すると、ピエロは次の挙動に入った。
残った左腕で、俺の腹に強烈なパンチをくらわせる。
俺は軽く吹っ飛ばされた。
俺はすぐに前方に駆ける。
今度は水平に斬りかかるも、ピエロは後ろにステップして、ギリギリの所で避けた。
だが、俺は攻撃の手を緩めない。
追い打ちをかけるようにして、ピエロとの距離を詰める。
そして、返すようにして左から右へと斬る。
ピエロの警備員らしい服が切れて、鮮血がほんの少しだけ空気中に散った。
「クソッ―――いいねェッ!!!!」
ピエロはそう言うと、姿勢を低くして俺の右手側に移動した。
そのまま、俺の顔を殴りつけた。
クリーンヒットだったために、俺の右側の視界は一瞬白くぼやけた。
一度距離を置いて、俺とピエロは呼吸を整える。
「盗賊、ボクを踊らせるとは中々の使い手だねェ」
「踊らせる―――?」
「そうさ、ボクの血を踊らせたじゃないか。おかげでボクの中にいる幽霊が、血を求めて出てくルんだ!!」
すると突然、ピエロが黒や紫、灰色の混じったオーラをまとい始めた。
そして、ガァーッと叫んだかと思うと、ピエロが二重に見えた。
否。
ピエロがまとっているオーラを圧縮したのである。
おそらく、攻撃力や防御力が向上している。
「アァあああああァッ!!見せておくれェ!!」
すると、ピエロが俺に向かって突撃してきた。
かなりのスピードだ。
俺は咄嗟の反応で、身体の右側をガードした。
だが、ピエロはそれを見極めたかのように、フェイントで俺の左側に移動し、強烈な蹴りを入れた。
「―――ッ!!」
俺は吹き飛ばされ、壁に激突した。
頭を怪我したのか、額を血が流れていく感覚がする。
すぐに立ち上がるも、ピエロは追撃を入れてきた。
今度は初撃をガードすることに成功した。
しかし、二撃目をくらった。
お辞儀のような体勢になった俺の顔めがけて、ピエロがアッパーカットを入れる。
俺は上に吹き飛び、蹴りを入れられて遠くに飛んで行った。
「ぐァッ―――!!」
「あれェ、『トレジャーハンター・ゼロ』も案外弱いィ??」
「言っとけよ」
俺はなんとか立ち上がる。
近くに落ちてしまっていた光剣を手に取り、もう一度構えを取る。
そして、さっきのように斬りかかる。
ピエロはさっきのようにギリギリで避けようとする。
―――そこに、拳銃を三発撃つ!!
すると、ピエロが左手で顔を覆うような素振りを見せた。
オーラが消える。
「かかったッ―――!」
その隙を見逃さず、俺はピエロに斬りかかる。
バルドレンジも、満を持して射撃する。
またもピエロの鮮血が舞った。
「お前、二度も踊ラせやがッて―――!」
ピエロが苛立つ。
俺はピエロに殴られたとき、ある推測をしていた。
それは、殴ったり蹴ったりと、現実世界のものに干渉する時には、能力を解除するのではないか、という推測。
そして、急な攻撃に関しては、反射的に能力を解除して防御する構えを取るのではないか、という推測。
先程の一幕から考えて、それは当たっていた。
オーラが消えていた―――すなわち、ピエロは無意識にストーンの能力を解除していた。
「いいねェ!!」
ピエロが殴りかかってくる。
俺は銃の早撃ちをするも、ピエロは臆せず距離を詰めてくる。
さすがに、二度も同じ手は通用しない。
俺の斬撃を避ける。
ピエロが殴ってくるのをガードする。
剣と拳の応酬が、何度も続く。
だが―――
「お前ら、一斉射撃ダっ!!」
ピエロは警備員たちに命令した。
彼らは構えていた銃を一斉に俺に向け、その弾丸を射出した。
俺の身体は、3発の弾丸に貫かれた―――




