12話「決意と決断」
レイは眠った。
ストーンの中で、回復の時を待ちながら眠っているのだ。
彼の傷ついた体は、もはや自然治癒では治らない。
だけど、俺はレイを治したい。
俺がなぜそこまでレイに肩入れするのか、それは俺自身にもうまく分かっていない。
だが、俺はレイを治したくてたまらないのだ。
それは自己の根源から湧き上がるような感情である。
レイがストーンの中に入ってから5分後。
「マルカッ!!」
マルカは闘技場の柵に身体を拘束され、まともに動けない。
だが、まだ息はある。
さっきの衝撃で気絶からも回復したようだ。
「マルカさん!Cは消滅しました!!俺たちは勝ったんです」
俺はようやく目を開いたマルカに言う。
なんとか柵から身体を外すと、マルカがザザッと倒れる。
俺はその身体を支え、近くの椅子へ座らせる。
マルカは辺りを見回してCの姿を探したが、なにもいなかった。
そこから、彼はCに勝ったのだと察したらしい。
Cの身体については、もはや跡形もなく消滅している。
ゆえに、身体の成分を調べたり、奴そのものに尋問をしたりといったことも不可能になった。
「あ、あぁ、本当に良かった、です。カイさんはご無事で?」
「はい―――けど、俺はなにも出来なかった」
「いえ、あなたがサイキックボーイを呼んでくれたから勝てたんです」
そういうと、マルカは辺りを見渡して言う。
Cの姿だけでなく、レイの姿も見当たらないことに気づいたようだ。
「彼は―――?」
「ここに」
俺は手に持った青色の石をマルカに見せる。
かつてサイキックストーンだったもの。
そして、レイという存在が内在しているものだ。
「つまり―――無事ではなかったのですね」
マルカが噛み締めるように言う。
申し訳ないことに、俺はマルカを少し見くびっていたのだが、彼もまた戦闘に活用できる能力のストーンを所持していた。
そして、かなり強かった。
だが、レイとの二人掛かりで挑んでも、Cを倒しきることはできなかった。
勝てたとはいえ、レイは現在のような状況に陥った。
それゆえ、マルカは責任や情けなさを感じているのだろう。
「俺が、レイを治します」
マルカは驚きの表情を見せた。
そして、諫めるように言う。
「きっと厳しい道のりになりますよ」
「けど、行かなくちゃならないんだ。なぜだか分かんないけど、俺はそうするべきなんだ」
俺は強い口調で意思を示した。
そうですか、とマルカはうなづいた。
そしてゆっくりと立ち上がり、言う。
「一度、医務室に行きましょう。最悪なことに、次の仕事に響く怪我を負ってしまいました」
そう言って、俺と共に闘技場のフィールドを後にした。
仕事に生きる男。
マルカのクマが、なんだか格好よく思えた。
医務室に入ると、オーナーが不便そうに一人で包帯を巻いていた。
「オーナー、消毒液はありますか?」
マルカが言う。
オーナーは少しビビったような様子を見せるも、消毒液を探し始めた。
「副団長殿に、カイ殿。この度は、誠に申し訳ないことをしたと思っている」
「本当にそうですよ医療費のお支払いをお願いします」
マルカが即答した。
「いえ、俺は大丈夫ですけど」
マルカは、オーナーから消毒液を受け取り、背中に塗り始めた。
一人ではうまく出来なさそうなので、俺は塗るのを手伝う。
少し塗っただけでとてつもない激痛が走っているのだろうが、マルカは声には出さない。
すると、オーナーが話し始める。
「私はこの闘技場を畳もうと思う。観客の安全を脅して、信用を全て失ってしまったからねぇ。そして、多くの戦士が今回の騒動で死んだのもある」
俺はマルカが戦い始める前に、戦士たちがCに突撃していたのを思い出した。
テレビ番組に対しての出演者のように、やはり戦士たちがいないと闘技場の経営もうまくはいかなくなるのだろう。
ちなみに、残っていたモンスター達は檻の中から動かなかったそうだ。
もし檻を抜け出して暴れていれば、とんでもない大騒動になっていたであろう。
そして、オーナーならどこへいっても持ち前の金銭感覚を生かしてやっていけそうだ。
「カイ殿。お金が無くなったら、文字を書く仕事をまたやるとよい」
オーナーはそう言うと、俺に例の自動翻訳ペンを手渡した。
すると、マルカが言う。
「ところで、これからの方針は決まっているのですか?」
「いえ―――」
「もし決まっていないのであれば、サバナに行かれるのはいかがですか?」
サバナ。
野生の世界。
自然や農耕、動物の世界。
「ですが、なぜ?」
「サバナには万病を治せる治癒能力を持った人物がいる、という噂を聞いたことがあります。もしかしたら、レイさんを治せるかもしれません」
「―――行って、みようかと思います」
「そうですか!出発日が決まったら、またお教えください。ぜひ、お見送りに伺いたい」
「私も、ポケットティッシュくらいなら渡しますぞ」
「あ、いえマルカさんだけで大丈夫です」
はぁ―――という顔をしたオーナーは、軽い挨拶をするととぼとぼと自室に戻っていった。
ポケットティッシュって、ほぼタダじゃん。
だが、彼は俺に対する責任を取る意味で、出発日まで俺を泊めてくれるそうだ。
本当に憎めない人だ。
野生『サバナ』への旅。
なんだか、ワクワクが止まらない。
だが、俺の目的は一貫している。
レイを必ず助ける。
そのために―――
さぁ、次の世界へ行こう!!
(第1章 完)
第1章、これにて完結となります。
拙い文章をここまで読んで頂き、ありがとうございました。
第2章からは、更に面白くなる予定です。
これからも読んで頂ければとても嬉しいです^^
ところで、カイがレイを治したい理由がかなり漠然としていますが、そこも回収予定ですのでご了承ください...
【章の完結記念として、この作品に評価をよろしくお願いします!!!】
ぜひ!!!^^




