天廻
倒れ伏す探索者たちに向かい銃火器を突き付ける不審者たちを倒し、会場を制圧した煉とユラ。一応ユラが怠惰を撒き散らしていた機械を止めたが、一度怠惰に感染した者たちが直ぐに正常に戻ることは無かった。
「ユラさんこれ」
「銃に刻印されたマークは...『天廻』ですね。反探索者の過激派集団ですか」
「こんな大胆に襲撃してくるくらいですから、これくらいの有名どころは予想してましたが...」
「はい。探索者が倒れているのが原初スキルの影響であるならば、『天廻』のやり方とは異なります。」
反探索者集団の中でも随一の探索者嫌いを誇る『天廻』は探索者の力を借りないことを信条としている。
『天廻』の構成員が銃火器のみで高位探索者に襲い掛かった話は有名である。そんな彼らが今回、原初スキルを撒き散らす機械を使ったのか。
「『天廻』を利用した黒幕がいますよね? それがユラさんが言うアイツですか?」
「乙女の独り言を聞くなんてデリカシーに欠けますね。鈴ちゃんに報告しときます」
「最初に探索者の五感の鋭さについて教えてくれたのは誰ですか?」
「誰でしたでしょうか? まあ聞かれていたならある程度伝えて――」
ユラが話し始めた瞬間、煉とユラの『魔力感知』に反応がある。第一の作戦失敗を悟った『天廻』若しくは彼らを利用する黒幕連中が動き出したのだ。彼らが目指しているのは2ヶ所。
「若手と協会関係者、どちらが良いですか?」
「なら若手でお願いします」
「わかりました。今動いてる方々はそれほど警戒しなくても良いですが、『スロウ』『ロイヤル』及び彼らに主人と呼ばれている者には気をつけてください」
「わかりました」
話を途中で切り上げ2人は襲撃阻止に動くのであった。
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煉はユラと別れ、若手有望株たちが待機している会場に向かっていた。若手と括られてはいても、高位探索者と同等かそれ以上の実力を持つ者たちが集まっているので、簡単にテロられることは無いはずだが、最高峰の探索者連中がほぼほぼノックアウトした現状では同じ作戦で封殺される可能性が高い。
「そう考えると『天廻』が倒れず動けてたのはおかしいな...勘を信じるなら無差別に撒き散らしてた感じだしな」
グラルの『暴食』を弾くモンスターがいるように、原初スキルも圧倒的な強さがあれば抗うことは可能であろう。それこそユラや鈴レベルならば原初スキル持ちと同等レベルとはいかずとも、抗うくらいは出来そうである。しかし非探索者である『天廻』が原初スキルに抗えるほどの力を秘めていたとは到底思えない。
「『色欲』みたいな他者へ干渉するタイプの原初スキルの支配下にあれば...『スロウ』と『ロイヤル』と主人か」
煉自身が原初スキルを2つ持っており、知り合いにも2人いる。そう考えれば原初スキル持ちに原初スキルが集まるのは自然なことと言える。
「警戒すべき相手が3人、こっちは動けるのが2人か...手が足りないな」
現在進行形で襲撃を受けそうなので仕方がないが、録に動ける者たちがいない会場を放って置くと言うのは中々にリスキーな選択だと思う煉であった。




