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自由研究

 8月に入り、国際カンファレンスの開催が間近に迫ってきた。国際カンファレンスを終えたら、許可証を使い各国直轄のダンジョンを探索する予定の煉、彼の前に高校生誰しもが避けて通れない夏休み最大の障害が立ちはだかっていた。


「氷華、ここが分からん」

「ここは、さっき教えたところなのだけど...この公式を使って、こうすれば」

「ああ、ありがと」


 宿題、さらに言えば長期休みの宿題は毎回、煉のダンジョン探索の時間を削ってくる怨敵である。


「そういえば煉、あなたの学校は自由研究があったわよ――」

「終わってる」

「...流石ね。他の宿題もそのくらいやる気を出して欲しいものね。それで今回のテーマは?」

「『成長型ダンジョンにおける成長の推移について』」

「相模ダンジョンをテーマにしたのね...今年も大作ね」


 ただ自由研究だけは煉も得意としていた。常日頃からフィールドワークしているようなものの煉にとって、探索中に気がついた事が発見したことが、ダンジョン研究的に凄まじい発見であることもままある。またダンジョン関係のことであれば、レポートを書く手も驚くほど早い、夏休み開始早々に氷華が驚くほどの大作を仕上げているのは、煉あるあるであった。


 記憶力と集中力だけは良い煉に、優等生の氷華の手伝いが加わった結果、今日1日で宿題のおおよそを片付けることに成功した。そのため話題は国際カンファレンスの話に移っていく。

 

「そう言えばユラさんからあなた宛へのメッセージを頼まれてたわ」

「ユラさんから?」

「ええ。『私だけが参加する予定だったカンファレンスですが、急遽、鈴ちゃんも参加することなりました』」


 いきなりブッ込まれた情報に思考が停止する煉。


「はっ!? あの戦闘狂が参加?」

「『今、煉くんはあの戦闘狂が戦場(ダンジョン)を離れるなどあり得ないと喚いていることでしょう。安心してください冗談です。鈴ちゃんを戦場から連れ出すなど、私のような凡人にはできませんので』」

「...あの性悪が。あの人こそ鈴さんを操るスペシャリストだろうが」


 最近会っていなかったため、ユラが冗談魔であることをすっかり忘れていた。そしてユラが関係の無い冗談を言わないことも。


「『ただ、今年のカンファレンスは不吉な予感がしているので、鈴ちゃんを連れ出そうとしたことは事実です。そのため新しい戦場を用意することにしました。私が見せた煉くんの動画を偉く気に入った鈴ちゃんが、煉くんと戦いたいと一緒にカンファレンス会場まで来てくれる運びとなりました』」

「は?」

「『つきましては、煉くんには鈴ちゃんと剣を交えて頂きたく存じます。これは強制ではありません。やれるもんなら断ってください』...だそうよ」

「ふざけんな! 特に最後、やれるもんなら断ってくださいって、日本語おかしいだろ!」

「そうね。流石だわ」


 煉は同じ狂でもダンジョン狂である。戦闘は好きだが別に探索者同士で戦いたいとまでは思わない。しかも相手は幼少期にボコボコにされ若干トラウマがある相手である。反射で動揺してしまう。

 そんなあの2人関係ではよく見る光景を氷華は、羨ましそうに見つめるのだった。



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