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大スクープ

 煉から受け取った『アトラ』での映像の中でカットした部分、すなわちウィンディーネとの会話シーンを見返す優弥。煉からの許可は貰っていたが、反響が凄まじいことになり炎上待ったなしであることが分かりきっていたため、投稿できなかった部分である。


「はぁー。大スクープなんだけどなー」

「なら、投稿すれば? 本人の許可は貰ってあるぞ?」

「こういうとき、煉のような性格が羨ましい」


 煉曰く伝説の存在『樹妖精ドライアド』に似た種族であり、ダンジョン内で役割を与えられている存在である。さらにそんな存在に認められダンジョンの君主となった煉。前代未聞とかのレベルではない。


「そもそも『アトラ』は海底ダンジョンっていう珍しいダンジョンだよ。煉の話を総合すると、煉と一緒ならモンスターに襲われないんだよね」

「多分な。俺一人のときは襲われなかった」


 煉にとってモンスターが避けていくダンジョンは全く面白いと感じなかったため、大した検証もせずに帰ってきてしまったので分からない部分である。


「もし一緒の人も襲われないなら、一般人、ダンジョン研究者とかがこぞって煉を求めることになるよ」

「ほう?」

「結論から言えばアレを投稿したら、煉のダンジョン探索の邪魔が増すよ。これは断言できるね」

「なら投稿しない方がいいな」

「だから投稿してないよ。してないんだけどさ。絶対バズる動画があるのにお蔵入りしなければならないジレンマがぁ…」


 映像を見た瞬間出さないことを決めた優弥だが、それでも投稿した際の凄まじい反響を考えてしまうのは、クリエイターとしての性であった。


 そんな1人百面相している優弥の隣で煉も渋い顔をしていた。


「結局、よく分からない情報だな」


 解析を依頼していた来栖からメールが届いたのだが、その結果は残念なものだった。


「ああ、あの海底神殿で集めてた資料? 何が書いてあったの?」

「まあ色々と書いてたが、海神蛇がいるダンジョンにはまだ行けないらしい」

「そうなの?」

「何か『始まりの使者が数えられぬほど顕現せしとき、神への道が開かれる』って」

「ポエムかなんかなの?」

「知らん。ただ始まりの使者ってのが原初スキル所有者で神は海神蛇だろ。前に原初スキル所有者が多くなればなるほど変革が進むらしい。だから変革によってダンジョンの入口が出現するってことだろ」


 ということは現状、海神蛇への道が開かれていないということであるため、原初スキル所有者が規定人数に到達していないのだろう。


「他には海神蛇の情報とかも書いてあったらしいけど、挑戦できないのに情報だけあってもな」

「まあまあ」

「今現在、所有者が分かってるのは、『暴食』『色欲』『慈愛』『忍耐』くらいか? そもそも全部で何個あるんだ?」


 先が長いのかどうかも分からない。残念ながら神殿で集めた資料は煉の戦闘欲を刺激するだけの結果となるのだった。






 

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