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海王

 海王の攻撃は主に3つ。1つ目はダンジョン内部に満たされている水を手足のように操作するスキル『海流操作』このスキルによって煉の動きを阻害する。2つ目は海水を無尽蔵に飲み続ける『吸込』。海水と一緒に煉を呑み込もうと口を大きく開けて迫ってくる。3つ目は単純な質量攻撃。海王の巨体で煉に向かってタックルしてくるのだ。直撃すればただでは済まないだろう。

 

「小細工無しのぶつかり合いもたまには悪くない」

「ブオオォォォー!!」

「グラル。最高出力で行く『暴食』」


 タックルしてくる海王に対して煉は、真っ向から対抗する選択を取った。回避行動は『海流操作』に阻まれるだろうし、海王の巨体に対して遠距離からチマチマと削っていくと時間が掛かる。

 ならば危険であっても最短で倒せる方法選ぶのが煉であった。


「最大出力でもこんなもんか」

「ブオォォォー!!!!」

「ダメージが入っている感じもなし。傷もすぐに再生。さてどうするか」


 『暴食』の最大出力でも喰い切るに至らない巨体。しかも再生能力まで備わっておりこのまま『暴食』を使い続けた場合、先に煉の魔力が尽きてしまうだろう。


 とはいえさすがに無尽蔵の再生能力ではないと推測した煉は海王へ攻撃を続けることにした。

 何度目かの再生の際、煉はあることに気が付く。


「また『吸込』か。『吸込』の回数が極端に増えた…まさか『魔力掌握』」


 煉は『魔力掌握』で周囲の海水が保有する外部魔力を確認する。すると先ほどまでよりも若干だが魔力濃度が薄くなっていることが分かる。

 外部魔力が再生の何に使われているのか、それとも何にも使われておらず、別の要因で魔力濃度が薄まったのか判然としないが、はっきりと見えた変化を逃す手はない。


「再生と外部魔力が関係してるのかわからんが、やってみるか!」


 煉は海王の猛攻をくぐり抜けつつ、『魔力掌握』でフィールド内の外部魔力を集め始める。そうして集めた魔力の塊は『魔力掌握』を解除すればまた拡散してしまうだろう。そこでグラルを魔力塊に突き刺しいう。


「集めた魔力は、喰えグラル」


 食事として外部魔力を喰うのを嫌がったグラルも今回は素直に従う。そのためどんどん魔力濃度が低下した水になっていく。それを海王も感じたのか、止めさせようと攻撃の苛烈さが増す。


「『空絶』」

「ブォ!!」


 しかし動揺し単調となった海王の動きは、煉にとってカウンターの良い的であった。


「反応を見るに間違ってなさそうだな?」


 それから何度か攻撃を繰り返したところ、明らかに再生が鈍くなっていった所で煉は自身の気付きが正解であることを知るのだった。


―――――――――――――――


 沈没船にたどり着いたウェンディーは船内をくまなく捜索していた。しかし見つかるのは金銀財宝のみ。ウェンディーが欲していた海の秘宝は見つからない。


[誰かが昔に持っていった? いやそれなら今頃他のクランがここの覇者になってる筈。それなら解読が間違っていたか、この船に私がまだ見つけられていない隠し要素があるかね]


 ウェンディーは自身のスキルをフル活用し捜索を続けた。その結果幾つもの隠し要素を発見し幾つもの宝物を手に入れた。しかし目当ての秘宝はついぞ発見されなかった。

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