謎の穴
砲魚と鉄砲魚に囲まれる煉。背中に大砲が装着されている砲魚に対し、器用にヒレで鉄砲を構える鉄砲魚。装備している大砲や鉄砲は玩具のようだが、見た目に反して弾の威力はバカにできない。そのため適切な対処をする必要がある。
「『空歩』」
「「「ギョッ!」」」
これらのモンスターは、探索者を囲んで一斉で仕留めようとする傾向があるため、射撃のタイミングに合わせて回避すると同士撃ちがそこら中で起こる。その分タイミングを間違えれば蜂の巣の危険があるが、発射する弾は、魔力の塊なので発射のタイミングは『魔力感知』で分かる。
「今のところこのダンジョンで一番のお宝魚がこれか…」
上層から中層にいる砲魚、鉄砲魚は玩具のようなモノしか装備していないが、下層や深層で出現する銃器魚シリーズは高位探索者が愛用するレベルの魔砲や魔銃を装備している。その分モンスターの思考も軍人じみてくるので先程のように簡単には倒せなくなるが、それらを売った代金は難易度に見合った額である。
ただ威力、速度が武器依存な点と与えられるダメージに対する消費魔力を考えると、特級探索者レベルで実用的に活用できている者はほぼいない。
「ユラさんの『機械姫』くらいか? あの人も根本は違うけど。ここでいいの採れたら土産に、確かユラさんもカンファレンス来る…ちょっと本気で集めるか」
最近ご無沙汰の知り合いを思い出した煉は、不吉な予感がしたので、強い魔砲、魔銃を求めて更に下に降りていくのだった。
「ギョッ!」
「やっと倒した。まったく…さてここはどこだ?」
大物の砲魚を発見しおいかけっこの末何とか討伐に成功し、満足の行く魔砲が手に入った煉。夢中で追い掛けているうちに、変な場所に迷い込んでしまったようだ。『魔力感知』をしても探索者どころかモンスターも周囲にいなかった。辺り一面水で覆われている『アトラ』では、道が覚えにくくて嫌になる。
「しかたない。『魔力感知』と『魔力掌握』で道を探し――なんだあの穴? いや道か?」
しょうがないので感知系スキルを駆使して帰り道を探ろうとすると、ダンジョンを仕切る筈の水の壁に人1人がギリギリ通れるくらいの穴が空いていることに気が付く。その穴の先はダクトのように先があるように感じた。
「どう考えても帰り道じゃないが…いいか」
煉はその穴の先に進んでみることにした。
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『Fairy-Fairy』のサブマスター、ウェンディーはダンジョンの探索中、突然掛かってきた電話にでた。
[何か用事?]
[解読が完了した]
[ほんと!]
[ああ。海の秘宝へと続く抜け道は下層にあるらしい。場所の詳細も今送付した。お前なら目に見えない抜け道の入口も探せるだろう]
[感謝するわ!]
[くれぐれも他の連中につけられないように気を付けろ]
[了解!]
通話を終えたウェンディーは『Fairy-Fairy』の団員たちに指示を出し、それが済むと最高速度で送られてきた場所へと向かうのだった。
[これで漸く忌々しい『Chaos』の連中を追い出して、マスターの信頼を取り戻すことができます。待っててくださいマスター]




